自分はフェスに参加する際、かなりの率で初見を重視する
それは新規開拓目的もあるが、同時に新参者が続けて同じフェスに出演することが困難であり、出演が1度きりになってしまうことがほとんどであるから
故に初見を中心にタイムテーブルを組んでフェスに参加するのだが、今から2年前のCDJ15/16、あるアーティストの新曲を聞いたとき、「これは来る‼」と確信を持った
そしてそれは現実となり後に大きく羽ばたくことになる

そのアーティストがこれからお伝えするSuchmosなのだが、今年のSuchmosの活動を整理すると、2月に配信限定シングル「808」をリリース
春からは初のホールツアーを実施しているのだが、普通なら東名阪になるところを横名阪にしているのが彼ららしいところ
これまでツアーのチケットは全て落選していただけに念願の初参加だが、Suchmosの地元で自身の地元でもあるパシフィコ横浜で見られるのがなんと素晴らしいことか
この日はセミファイナルのパシフィコ横浜初日

定刻を少し過ぎた辺りでいきなり暗転すると、「THE BAY」に収録されたインストナンバー「S.G.S」がSEとしてまずは楽器隊が登場
続いてYONCEがステージに現れるが、何故かマイクスタンドを無視して下手まで早歩きで移動
一見クールだが、ユニークなところも

するとYONCEがギターを背負っており、初めて見たお客さんが「?」となるなか、いきなり新曲
てっきり他のミュージシャンの曲のカバーかと思ったが、そうではなく正真正銘Suchmosのもの

「1 2 3 4 5 6 7」

とカウントダウンする箇所もあったが、歌詞は全編英語
背後のスクリーンに投影された水上に浮かぶ都市がなんとも美しいが、HSUの黒いグルーヴが身体に刻まれる
初見にはあまりにもインパクトが大きすぎる新曲

YONCEがギターを下ろしてからはTAIHEIの鍵盤が先導する「PINK VIBES」、

「戦争は儲かるか?平和はゴミか?」

というフレーズが今日の世界情勢にグサリとささる「ALRIGHT」で徐々に暖めていくが、

「「ALRIGHT」と歌ったなら「ALRIGHT」って歌えよ‼」

とYONCEが叫ぶ熱さも
クールなバンドに見えるかもしれないが、内心はこのように熱い

「横浜、出しきっていけー‼」

とYONCEが冒頭のMCで煽り、ライブオリジナルのイントロで始まった「WIPER」ではサビの辺りでいきなりテンポが上がり始め、「リズムキープ出来ているのか?」と一抹の不安が頭によぎるが、これは仕様であり、テンポを下げたかと思いきや、カバー曲(詳細は不明)を始めたり、元のテンポから倍則させたりと自由自在

直後に早くも「STAY TUNE」を突入するワンマンだからこそ出来る選曲も行うが、初めてこの曲を聞いたときに身体中に走った衝撃は今でも忘れられない
思わず友人に、

「この曲が合わなければこのバンドとは一切合わない」

と断言してしまうほど出会ったが、自分の予想通りこの曲は徐々にシーンへ浸透
気が付けばこのバンドをメインストリームへ押し上げてしまった
それは曲中の歌詞がバズったというのもあるだろうが、最後の爆音セッションを含め、この曲には欠点がない
全てにおいて完璧だ

そのまま音を切らさずにDJのKCEEがトラックを流し、バンドの最新曲「808」ではセルアウトしていくバンドに痛烈な皮肉を浴びせるが、前半と後半で姿を変える二面性
それはレールが切り替わったかのよう
2月に突如この曲は配信されたが、2018年最初のどよめきを与えたのは紛れもなくこの曲
曲調が変化するこそありふれているが、こんなにも興奮する曲はあっただろうか

「地元でやるのは本当に久々な気がする」

と素朴な感想をポロっと漏らすと、

「いつもの曲をいつもと違った感じで」

とフェスではオープニングにやる印象がある「Pacific」は電子音抑え目
代わりにオルガンが強くなり、自然体が強いアレンジに
1日がゆっくり過ぎていく映像も流れていたが、やはり演奏時間は倍になっている(計測したところは10分はやっていた)

更に「Fallin'」も続くがこちらも必要最低限な部分だけを残したアレンジ
恋に落ちる瞬間をイメージしたような映像も流れるが、ここまでアレンジを行うバンドも珍しい
肉で例えるのであれば脂肪は一切残さず、主要な箇所だけを残すといった具合
締めるところは最小限で締めている

それだけに対照的だったのが「MINT」
アレンジらしいアレンジは垣間見えなかったが、終盤ステージに密かに設置されていたミラーボールが回転し、緑の夜空が舞う空間へ
美しいのは言うまでもないが、直前の2曲が抑えていただけにより映えた

「パシフィコ〜横浜〜。地元のみんなも来ているぜ〜。好きだぜ~。減らしたくても減らせない~。だってタバコ好きなんだもん~。」

とゆるくYONCEが歌いながら「TOBACCO」を歌うと、再びYONCEがギターを背負ってスタンバイ
来月から行うツーマンツアーの告知を行い、ここでまたも新曲を披露
タイトルは「You've Got The World」とツアータイトルと同名
だが広大な会場で演奏されるのが容易に想像できるスタジアムサウンド
ホールツアーは今回が初だが、売上的に見ればもはやアリーナでワンマンをしてもおかしくない
それだけにアリーナクラスでも劣らない新曲が今後は増えるのだろうか

「横浜、まだまだ踊れるか!?」

とYONCEが煽って、初期の代表曲「YMM」をグルーヴィに聞かせ、アウトロでHSUがよりディープな低音を届かせれば、OKのドラムソロを挟んで「Burn」、「SNOOZE」とハードな曲を連発
そしてYONCE

「横浜、出しきったぜ‼最後はこの曲‼」

からラストは「GAGA」
興奮を抑えきれなくなったTAIKINGが前に出てガンガンギターを鳴らすという熱い一面も見せ、尺が倍以上に膨らんでいくなかで終了

アンコールで戻ってくると、YONCE3階構造のパシフィコのお客さんの声を順に響かせる
その上で、

「最近迷っているんだよね。こういったところを中心にやるか、こんなもんじゃないぜ‼ともっと大きい会場でもやっていくか。気持ち半々。でもステージがあるから音楽が鳴って、音楽があるから聞きに来てくれるお客さんがいる。だから小さな会場でも大きい会場でもやります。最後に2曲やって終わります。ありがとうございました。」

と悩みを口にしながらも大きい会場でも小さな会場でもライブをやる決心を固め、更なる新曲「one day in avenue」を披露
歌詞の傾向からすると、「808」や「DUMBO」に似た俯瞰した冷ややかな歌詞が特徴
ただここまで新曲が生まれているということは次のアルバム、もしくは次なる作品の発表が近いのかもしれない

メンバー紹介の際、「富山から来た凄い男」と紹介されたTAIHEIが情緒溢れる美しい旋律を鳴らし、凄い男と言われた実力を発揮したところでラストナンバーは「Life Easy」

「君は一人じゃないさ」

とオリジナルにはない歌詞を追加して、明日へのエールとしてこの曲を送り届けてライブは終わった

初めてワンマンを見て分かったのは、絞り出せるところはラーメンのスープを作成するときのように極限まで抽出
逆に締めるところは最小限で締める
それがSuchmosのライブの特徴

要はとにかくライブでアレンジをしまくるタイプなので、フェスとの相性はすこぶる悪い
アレンジ過剰のため、曲の演奏時間は伸びる
そのためどんなに初見を意識しても、長すぎてほとんど曲を演奏できないのだ
その相性の悪さは我が道を突き進むくるりと肩を並べるほど

だがフェスだけでSuchmosを評価する方には「なにも言わずにワンマンに来い」と叫びたい
Suchmosのライブはワンマンで本領を発揮するタイプ
これほどまでに熟練された曲の数々
1度見れば「なんて素晴らしいバンドなんだ‼」
そう思うはず
それほどワンマンに特化したバンドなのだは近年珍しい

Suchmosはシティポップの象徴的存在である
がこれはもはやシティポップの域を越している
UVERworldのように、アリーナ会場もライブハウスもホールも平然とこなすようになったとき、彼らはシティポップどころかJ-POPを凌駕した存在になる

セトリ
新曲
PINK VIBES
ALRIGHT
WIPER
STAY TUNE
808
Pacific
Fallin'
MINT
TOBACCO
You've Got The World※新曲
YMM
BURN
SNOOZE
GAGA
(Encore)
One day in avenue※新曲
Life Easy

Next Live is ... SUPER BEAVER @日本武道館(2018.4.30.)