昨年The Mirrazが1年に5枚もアルバムをリリースする超高稼働ぶりが良くも悪くも話題となったが、こちらも1年に3枚アルバムリリースとphatmans after schoolもミイラズに並ぶリリースラッシュ
しかも全て傑作というクオリティーの高さを見せている

そんなpasがインストアライブツアーを経て、過去最大の全国ツアーを開催
そのファイナルはLIQUIDROOM
「セカイノコトハ」のリリースツアー以来、3年ぶりの帰還である

3年前にこの会場でワンマンを行った際は、ステージに幕が張られており、pasくんが映し出されていたのだが、今回は幕はなく最初からステージが丸見え
レーザーによる特殊演出なども行われそうな気配はほぼない

定刻をほんの少し過ぎたところで、pasの曲をリミックスしたいつものSEと共に、サポートドラムのタイヘイと共にヤマザキ(Ba.)、ユタニ(Gt.)が登場し、最後にタクミが現れるとタクミは客席に向けてご挨拶

アルバムのリリースツアーという事で「世界線YOUTH」から始めると思いきや、序盤は「メディアリテラシー」、「東京少年」と定番曲
この始まり方から「これはレコ発ツアーだよな?」という疑念が思わず生じてしまったが、前回見たときと比べてヤマザキのベースが更にゴリゴリになっている印象
昨年の「過去現在未来進行形」からはバンドの音作りが変わりつつあるが、特に変わったのはヤマザキ
この1年間で凄まじく成長している

リクエストライブでも上位にランクインした「440Hz」から徐々に「キミノバアイハ」モードに移行すると、バンドで1番目立つギタリスト、ユタニが突然イケメン風にMCを展開
どうやらここまでの9公演で様々なMCを試した結果、このキャラがしっくり来るとの結論に達したようだが、ツアーの振り返りをいきなり始めるこのアンコールのような雰囲気(笑)

そんなユタニが煽りまくった直後に泣きのギターリフを鳴らす「幻影少女」、アルバムのオープニングにしてかつてなく陽性な「世界線YOUTH」といよいよ「キミノバアイハ」モード
そのなかでもひときわ目立つのが「レイジーシンドローム」
元々は水樹奈々に楽曲提供したもので、タクミ自身も先日彼女の武道館にゲストとして参加し、コラボをしたのだが、セルフカバーもオリジナルに全く劣っていない
勿論水樹奈々は登場していないが、いつかpasのステージに水樹奈々がゲスト参加する夢の光景が実現する日は来るのだろうか

直後リズム隊がセッションを始めるが、なにやらユタニが歌い始め、何を歌っているのか耳を済ませると、それはモーニング娘。の「恋愛レボリューション21」という今の若者にはまったく分からない選曲(笑)
唐突に始めたためか、タクミとヤマザキは思わず「何あれ?」という表情をしていた

そんな混沌とした状態からもはや定番曲となりつつある「正常性バイアス」でタクミがコミカルに歌い上げれば、昨年のリクエストツアーで上位にランクインしたのを契機に演奏頻度が上昇したとも推測できる「リコーダー」では美しいメロディーをプレゼント
「アンクロニクル」はコンセプトアルバムである故に、他の作品と比べるとpasらしくない部分が多い
それはツアーをもって脱退したドラマーに送るアルバムだったのもあるが、この2曲だけは飛び抜けていた
これらがなかったら…となるとゾッとする

「世界で1番クレイジーな曲をやるぜ‼」

とユタニが煽り、ヤマザキのスラップとユタニのギターソロが激突する「Mr.Crazy」からクレイジーなパートに突入すると、聞いたことのないようなイントロ
しかしイントロが進んでいくとそれは「無重力少年」だとわかったから驚き
これを皮切りにユタニが歌ったりマイカーと称した段ボールの共にステージに突入した「FR/DAY NIGHT」、サビで大合唱となった「あいまいみー」と続くが、ユタニのギターが非常にノイジー
あまりの音のでかさに同期が全く聞こえなくなるほど

これら3曲はワンマンではほぼ毎回演奏しているが、この方向に進化するとは想像もしてなかった
このような部分を見るとpasはまだまだポテンシャルを秘めている
そう確信できるのは嬉しいこと

ここまでユタニが序盤に「タクミが自分をハゲキャラにしようとしている」と嘆いた通り、「Mr.Crazy」の曲中に、

「やっぱりハゲてますね」

とユタニを弄ったタクミがここでようやく口を開くと、今日のセットリストを作成したのはユタニであること、そのユタニが次々に曲を始めるため水分補給が全く出来なかったことを吐き出しつつ、

「このツアーは千葉LOOKから始まっているんだけど、初日にエネルギーも貰っているわけです。最後まで楽しんでください。」

と述べ、ツアータイトルにもなっている「kakemeguru」から歌ものを続けていく

タクミが「好きな曲」と述べた夏の切ない物語こと「棗」、「kakemeguru」の対であり自分らしさをテーマにした「アノニマス」、同期を挟んで「アンクロニクル」に収録された「メメントモリ」以上に死生観が強い「Sleep in good bye」、雨音を間に挟み雨はやがて虹に変わると歌う「雨天結虹」と歌ものを一気に5曲
ここまで歌ものを続けることは非常に勇気ある指針である

だがpasは昨年、コンセプトにそってライブを行った際、一番反響が良かったのは歌をメインにしたライブ
ダンスロックやアッパーを主軸とするメインストリームではなく歌をファンが望んでいたのである
だから「キミノバアイハ」は歌ものが非常に多くなった
同時にメンバーが歌ものが1番の武器であると自覚
となると、シーンから外れていくがこれだけ歌ものを連発してもしっかりファンはついてくる
実際、手が多く挙がっていたのは序盤のアッパーな曲よりも歌もの
歌を強みに出来るのは本当に大きい

「僕たちは高校の頃にバンドを組んだんだけど、その頃は君たちの前で歌うなんて思いもしなくて。「僕はこう思うけど、君たちはどう?」ってスタンスで曲を書いていたんだけど、たくさんの人達が聞いてくれているとわかって、「自分達に出来ることは何か」「何を伝えられるか」という風に曲を作るようになっていきました。一方でやめる仲間も出て来て。昔は悲しいことだったけど、最近はそうは思わなくて。それは他にやりたいことが出来たとか、彼らの夢の答え合わせを自分達がするってなってきたから。僕たちも明日どうなっているか分からない。残り少ないですが、全力で歌います。」

と最近の作風の変化へ辞めていった仲間達への思いをタクミなりに口にすると、10年前から歌われている「ナンバーコール」から終盤

バンド最大のヒット曲であり、幾度となくハイライトを描いてきた「ツキヨミ」でグッと、雰囲気を締めると、

「次で最後の曲です。これまでなら一期一会を大切にしてきましたが、これからはまた会えることを願って歌うことにします。」

と歌う意義を改めて最後はまさにここに集まってくれた1人1人のために歌った「イトシキミヘ」で終了

アンコールで先にユタニとタクミが登場すると、2人でアカペラ対決を開始
先行のユタニも非常に上手かったが、タクミはそれ以上
しかも秦基博の「鱗」を半音上げて歌いきるとんでもない歌唱力の高さ
昨年、ストレイテナーが同曲をカバーしていたがホリエよりも上手かった

ヤマザキとタイヘイが合流すると、今回の裏テーマが「さすらう」ことであることを明かし、「DAY BYE DAY」を演奏
pasは他のバンドと比較すると定番曲がかなり多い
なのでこの曲をここでやってくれるのはありがたいこと

そしてバッキバキの演奏と共に駆け抜けることを改めて誓う「過去現在未来進行形」で終了と思いきや、客電が付かずW Encoreへ突入

「明日はきっと良い日だよ」

というどこまでも前向きなフレーズが印象的な「シリアル」を久々にやって終わりと思いきや、最後の方にタクミがユタニの元カレ話を暴露し、

「僕は札幌に引っ越しするから遠距離恋愛なんて無理って理由で綺麗に別れたけど、ユタニは彼女と別れたあと、軽音楽部にいなくてどうしたのかなと思ったら、向かいの物置の1番下で体育座りしていました(笑)」

と話したところで最後のフレーズに突入し、終了
締まらない終わり方な気もするが

ツアータイトルのカケメグルのように、今回のツアーではpasのあらゆる側面を見せつけた
ロックにエレクトロ、そして歌もの
かつてほど歌詞に独自性は見えなくなってきたが、やはり彼らのポテンシャルは高い

だからこそ今日のリキッドルーム、がらがらではなかったものの、後方にミニテーブルが置けるほどポッかり置けるスペースが出来てしまったのが本当に悔しかった
3年前にここでpasを見たときは、満員御礼でスタンディングゾーンは余裕がなかったし、「凄いのが出てきた‼」と期待も大きかった
だが3年も立てば環境は変わる
同年同じ会場でワンマンを行っていたBRADIOは今やZEPPクラスに、ヒトリエも4桁の箱でライブをするのが当たり前になった
それだけにpasは置いていかれた感じもある

けどpasはまだ終わってないし、むしろここから
今回のライブを見て、pasはまだまだ行けるし武道館でライブをする
そんな感動的な瞬間を目撃したい
だからやっぱりpasの夢ト生キタイ‼

セトリ
メディアリテラシー
東京少年
440Hz
幻影少女
世界線YOUTH
レイジーシンドローム
正常性バイアス
リコーダー
Mr.Crazy
無重力少年
FR/DAY NIGHT
あいまいみー
kakemeguru
アノニマス
sleep in good bye
雨天結虹
ナンバーコール
ツキヨミ
イトシキミヘ
(Encore)
DAY BYE DAY
過去現在未来進行形
(W Encore)
シリアル

Next Live is ... Suchmos @パシフィコ横浜(2018.4.27.)