2018年元日、幕張メッセでのワンマン、更には3月に「春が来てぼくら」のリリースが控えているなか、いきなり7枚目のフルアルバム「MODE MOOD MODE」のリリースを発表し、しかも収録曲をダウンロード配信が解禁になるまで一切公開しない大胆なマーケティング戦略を取ったユニゾン
そのため1月にツアーを終えたばかりとはいえ、わずか3ヶ月のインターバルで早くも次のツアーがスタート

今回のツアーでは最大キャパとなる横浜アリーナ公演(自分も参加予定)が6月に控えているが、その前に序盤のNHKホール公演に参加
かつてここは、「DUGOUT ACCIDENT」のレコ発ツアーのファイナル2daysが行われた会場だが、それを3・4公演目に持ってきており、ユニゾンを取り巻く環境も多いに変化している

「Dr.lzzy」のレコ発ツアーのような大がかりなセットはないものの、天井から無数の線が降りているのが今回のツアーのセットの特徴
ユニゾンのホール公演ではお馴染みの定刻18:30という早さから10分前後経過したところで、ゆっくり暗転し、「絵の具」をSEにTKO、田淵、斎藤の3人がいつも通り、いつもの順番で登場すると、グランジのリズムを取り入れた「Own Civilization (nano-mile met)」からアルバムと同じオープニングで始まるが、この時メンバーははっきり見えない仕様
サビでは一応見えると言えば見えるが、完全ではなく

「ほら僕と君とで遊んでやろう」
「We're OK.」

と不敵に歌うと、そのまま「フルカラープログラム」へ突入
CDJ16/17で田淵が見せた豪快なフル回転こそないが、

「変幻自在のキャッチーボールを」

受け取ったNHKホールのステージは間奏で虹色の輝きを
ユニゾンにとってモノクロの光景が命を吹き込まれたのである
そんな演出に観客からは早くも「おお‼」と感銘

命を施されたNHKホールを活発にさせる特効薬、「シュガーソングとビターステップ」を序盤からぶっ放すまさかの展開に度肝を抜かれると、ピンクの照明が怪しげに輝く「fake town baby」では田淵が暗闇のなかを疾走
ここまでの飛ばし具合
序盤にも関わらず早くもクライマックスではないかというほどの密度の高さ

「UNISON SQUARE GARDENです。よろしく。」

と簡単に斎藤が挨拶を済ませると前作「Dr.lzzy」のリード曲である「mix juiceのいうとおり」は打ち込みのコーラスが聞こえなくなるほどTKOが叩きまくった、よこすか芸術劇場の時とは異なりオリジナルに近い形で演奏されているが、自分はこの曲に大きく救われたため、

「何気ない毎日でもまた生まれ変わる」

のフレーズは何度聞いてもグッとなってしまう

そのまま音を切らさず流れ込んだ「デイライ交響楽団」の「タッタッタタッタタッタララ」のビートが会場に浸透していくと、TKOと田淵のセッションからアルバム最大の問題作、「フィクションフリーククライシス」を躊躇することなく早めのセクションで

新作「MODE MOOD MODE」の最後のピースとなったのはご存じの通り、この曲だが意味深すぎる歌詞に「A→B→A´」と目まぐるしく変化するこの曲が出来るまでに要したのはわずか1日
最大の功労者ということもあってか、ユニゾンにしてはやけに派手な演出でもてなされるが、1曲でアルバムのバランスを整えてしまうこの曲のポテンシャルは化物級だ

が、そんな余韻を一瞬でぶち壊すのはかつてアンコールの定番であった「ガリレオのショーケース」
初めてユニゾンがNHKホールで単独ワンマンを行った際、この曲が最後に演奏され、田淵がステージを一周する衝撃のパフォーマンスを見せつけたのだが、この日は豪快にリアクションをしまくって演奏に集中できない事態(笑)
ここまで田淵がそこまでダイナミックな動きを見せてなかったからか、笑いをこらえきれなかった

新しい朝を迎えるための夜の激しい宴こと「MIDNIGHT JUNGLE」で派手な照明とともにお祭り騒ぎをすると、長い暗転が起こりMCをするのかと思いきや、斎藤がエフェクターをカチカチと操作しているためそんな気配は微塵もなし

いざ暗転を終えるとなぜか某クリスマスソングの一節を鳴らし、ざわつく場内
その予感は確信に変わり、この時期に「サンタクロースは渋滞中」という「それを今やるか!?」と突っ込みを入れざるを得ないカップリング曲をここでやってしまう
ちなみに自分が業務中、USENのリクエストコーナーでいきなりこの曲が流れ始めるハプニングがあったのだが、USENの選曲担当にユニゾンの大ファンがいたのだろうか

更に雰囲気的には秋がこの上なく似合う「静謐甘美秋暮抒情」、曲名的には夏が脳裏に浮上する「クローバー」と季節を反時計回りするように遡っていくと、オーケストラが会場に来ているかに錯覚するほどの凄まじい同期
この壮大な同期からこれまた夏の歌である「オーケストラを観にいこう」
この曲と「君の瞳に恋しない」がアルバムの肝であったが、ストリングスを前面に出す曲はバンド好きのリスナーからは肯定的に受け入れられにくい(コバタケのプロデュースによって、ストリングスがどんどん強くなっていたレミオロメンは「風のクロマ」期になると、賛否両論なんてレベルでは済まなくなっていた)
この曲もサビではストリングスを前面に出すのだが、田淵の天才的なアルバム構築力によって浮くことは全くなし
しかもライブでもサビのギターが聞き取りにくい状況になっているにも関わらず
ロックバンドとストリングスの共存はなかなかうまくいかないが、この曲はロックバンドとストリングスが共存する方程式のサンプルとなりそうだ

雰囲気を変えるようなセッションから、3階にまで届くような演出から「Own Civilization (nano-mile met)」へのリスナー側からのアンサーを届けるこれぞユニゾン!(鹿野氏談)な「Dizzy Trickster」、間奏で大きな手拍子が起こり、

「今 目の前の君が」

に合わせてTKOがスティックを客席に向けたのが最高にいかす「桜のあと(all quartets lead to the?)」を行うと、ワンマン恒例のTKOのドラムソロ

普段なら最後に行うフードを纏いながらドラムを叩くTKOの得意技は今回ここ
相変わらずとんでもない手数だが、田淵と斎藤はステージにとどまったまま
と思いきや、打楽器を手に持ち2人もドラムセットに混じり、徐々にサンバにリズムチェンジ
最後の方になるとTKOはセットから身を乗り出すようになり、終いには大きくシャウト
会場の視線を鷲掴みに

尚もドラムソロを続け、斎藤にスポットライトが映ると「Invisible Sensation」の歌い出しを始め、TKOの合図で始まる「場違いハミングバード」で田淵は爆走
この時点でアルバムから演奏してない曲がまだいくつかあるので、後3曲くらいかなと思いきや、

「東京ありがとうございました。ラスト‼」

と斎藤が叫び、「オーケストラを観に行こう」と共にアルバムの軸であり、斎藤のギターソロに田淵がすり寄っていく賑やかさも見せた「君の瞳に恋しない」で終了

暗転しないまま、アンコールまでの尺をSEを流して稼ぐユニゾン流を経てメンバーが再登場すると、TKOがヘッドフォンを装着し、最新シングルである「春が来てぼくら」へ
ある音楽媒体のインタビューで田淵は、

「この曲に相応しい場所を用意した」

と重要な配置で演奏することを明言していたがそれはアンコール直後を指していた

以前、フジファブリックは「LIFE」をライブという非日常から現実へ帰還させる橋渡しとして終盤に必ずと言っていいほど演奏していた
それとほぼ同じでこの曲は明るい未来を願う歌
来る旅立ちに向けてユニゾンが送るエールなのである
田淵がインタビューで、「やらなければならない曲になる」と話していたため、これが今後「シュガーソングとビターステップ」に変わる固定曲になりそうな予感を匂わせているが、こんな最高のバラードを何度も聞けるなら

ここで斎藤がようやく話し出すが、その内容は、

「ツアーが始まりました。しゃべる数が少なくなりました。昨日に至っては「豚カツ定食下さい。」と「キャベツお代わりください。」の二言しか話してません(笑)。今日はその倍以上話したかな。僕たちはライブをするためにこのバンドを組んだんだけど、ライブが始まる前に田淵くんが「コンタクトレンズがない‼」って騒ぎだして、スタッフの借りているんだけど、もしかしたら今日、全然客席見れてないかも。(田淵が声をかける)いつもより度が高いみたいです(笑)。良かったね。ライブが当たり前に出来ることに感謝しながら、これからも良い曲作っていきます。またお会いしましょう。」

とやはり笑いのポイントを抑えつつも、伝えたいことをしっかり伝える職人ぶり
ここまでMCが少ないと、そのうち一切MCを行わなくなるかもしれない
これだけ面白いから聞けなくならないで欲しいが

そして「10% roll, 10% romance」で最高潮に到達させ、「おまけ」と評した「Cheap Cheap Endroll」では田淵がステージを1周し、上手にマイクスタンドを持っていって歌う暴れぶり
アルバムの曲を全曲演奏してないため、

「君がもっと嫌いになっていく」

とリンクする部分もあるが、こんなライブを見たら嫌いになるわけがない
むしろ逆でもっと好きになる
そう思いつつ、最後は田淵も「ありがとう‼」と叫んでステージを去った

アルバムのレコ発はどうしても縛りが多い
そのためシングルのレコ発と違い制約が多く、自由の幅は狭まってしまう

しかしながらやりたい曲を徹底的にやり、ひなすら聞かせるスタイル
これはユニゾンがどんな状況に置かれても変わることはないことを証明している
まだツアー3公演目だが、既に花マル級の出来
横アリ公演が凄いことになるのはこれで決定的になっただけに、今から6月が待ち遠しい

Own Civilization (nano-mile met)
フルカラープログラム
シュガーソングとビターステップ
fake town baby
mix juiceのいうとおり
デイライ交響楽団
フィクションフリーククライシス
ガリレオのショーケース
MIDNIGHT JUNGLE
サンタクロースは渋滞中
静謐甘美秋暮抒情
クローバー
オーケストラを観にいこう
Dizzy Trickstar
桜のあと (all quartet lead to the?)
Invisible Sensation
場違いハミングバード
君の瞳に恋してない
(encore)
春が来てぼくら
10% roll, 10% romance
Cheap Cheap Endroll

Next Live is ... phatmans after school @ LIQUIDROOM(2018.4.19.)