先日大盛況に終わった「帰って来た三日月ADVENTURE」のファイナル六本木2days公演
しかしそこから間髪おかずにデビュー14周年記念ワンマンを実施することを発表
先日のファイナルとは「形」を変えると山総は明言した
セトリは間違いなく変化するだろうが、一体何が変化しているのだろうか

派手な照明もなければ、ステージングもほぼ変化していないシンプルなセットはツアーのまんま
メンバーが「インディージョーンズのテーマ」に載って登場するオープニングも変わってなく(定刻をやや押して登場するのも変わってない)、「これではただの追加公演じゃん」と思ったが、明らかに違うと確信できたのは「桜の季節」から始まったから
2011年に山総をボーカルに置くスタイルに変化し、往年の名曲も徐々に復活していったが、この曲は武道館公演でしか演奏されていない
それを今日、こうして演奏している
それは今日が特別な日である何よりの証拠だ

不穏な気配を一瞬で会場に撒き散らす「カンヌの休日」、加藤が前に出て来て煽る「Sugar!」の流れはツアーから変化なし
だが山総のギターはこの日、比較的クリアに聞こえた印象
これは前回の六本木から半月経過したからというのもあるだろうが果たして

翌日ESAKA MUSEで追加公演を行うため、この日もオープニングで投げられた帽子はしっかり回収されるが、

「このツアーのテーマソング‼」

と山総が断言してしまうほど「熊の惑星」は定着
コンセプトも縛りもないツアーだからこそ演奏できるのだが、このツアーを見れるのは今日が正真正銘ラスト
故にしばらくこの曲を聞ける機会が激減するのが惜しい

ツアーの流れで行くなら「スワン」に切り替わるのだが、そこにぐっしゃとしたイントロからポップにシフトし、最後は倍速するへんてこな「シャリー」、久々の「small world」とここまで来るとツアーの流れは全く関係ない
山総が六本木の終盤、「「形」を変えてライブする」とはフジの歴史をタイムトラベラーの如く振り替えることを意味していたのである

「フジ1のイケメン、金澤ダイスケ‼」

と山総に唐突に持ち上げて紹介された金澤が作曲し、ツアー中に大きく成長した「かくれんぼ」で轟音セッションを終盤に行い、爆音が会場に飛び散るなか、音を消すことなく「バウムクーヘン」へ
「CHRONICLE」は志村正彦のノンフィクションであること以上、この曲も志村の内面が出ているが、同時にこれは現代人の誰もが抱く負の感情の歌である
だが志村がいない今、

「大切に出来ずごめんね 僕の心は不器用だな」

は聞いているだけで胸が痛い
志村の本意でなかったとしても、志村の遺書みたく聞こえてしまうからだ
志村自身がこの曲を自身で聞き直すと、どのような感情を抱くのだろう

「ツアー中に大量に新曲を作ってきました‼」

と山総が告げたように新曲が3つお披露目されていたが、このセクションで演奏されたのは「1/365」
昨年のFABRIC THEATER2で聞いたときにはキュウソネコカミの「家」みたく、ショートチューンになるのかと思われたが、今ではしっかりフルサイズに
王道のようで王道にならないのはいかにもフジだが、ここであの曲を演奏しないのはとっておきのサプライズがあるからだとこの時点では誰も気付かなかった

「爪が割れてしまったぜ〜全然問題ないぜ〜」

と山総が話しても、見ているこちらからすれば0.1%でも不安になってしまうなかで、「炎の舞」の奇妙な世界観はしっかり降臨
加藤のベースを合図にノイズと共に不気味な気配を一掃する「Splash!」はいつ聞いても強烈だ
これなら初見であっても対応できるので、持ち時間が短いライブで投入してもいいのではと思うが、フェスでは全くと言って良いほどこの曲はやらない
それは「カンヌの休日」、「銀河」があるからだろうが、ファンとしてはもっとこの曲を聞きたい

メンバー紹介のコーナーでは山総に「イケメン」と持ち上げられた金澤が、

「かつて志村さんに「金澤先生」ら「ダイちゃんかっこいいよ、あごが」と言われた」
「かっこいいって言われるときは、「ダイちゃん先生、スタバ買ってきてって言われるとき(笑)」

など志村との思い出を振り替えるが、唐突に加藤が昨日自分が何を食べたかというクイズコーナーを実施
選択肢が目玉焼き、ハムエッグ、ベーコンエッグと類似物だらけでメンバーも困惑するなか、正解はベーコンエッグ
しかしメンバーはハムエッグを選んだため、思わず山総は「なんだそれ!?」と突っ込んでしまった

そんななかでサポートの玉田はこのツアーを通して、自身が製作した楽譜が40曲にも上ること、ライブを通じてフジが好きになったと告白し、

「また三日月ADVENTUREやるなら呼んで欲しい」

と召集を志願
玉田はただでさえサポートをしているバンドが多いだけになかなか実現しないだろうが、実現できるならまた彼のドラミングを見たい

そして山総は志村が始めたバンドであるとはいえ、こうして14周年を迎えられたことを感謝するが、

「25周年、35周年となった頃にはダイちゃんが80…」

と言いかけたところで金澤に誤差を指摘される痛恨のミス(笑)
こういったところで天然が炸裂するのが山総である

そんなMCを経て「LIFE」、「徒然モノクローム」と今の編成になってからリリースされたシングルを連発するが、この2曲はフジの中では大きな分岐点

「LIFE」は山総がシンガーソングライターとして覚醒する予兆になったと同時に吹っ切れた印象をリリース当時持てた
それは意識せずともフジらしさを残せたという意味もあるが、3人になってから初めてシングルとしてリリースされた「徒然モノクローム」をユースケ・サンタマリアが聞いた時、

「深夜のアニメ(「つり玉」)のオープニングで起用されたの聞いていたら「これ、完全にフジじゃん‼」」

と感じたらしい
確かに「STAR」や「徒然モノクローム/流線型」がリリースされた頃、新曲が出る喜びも

「フジらしさは残っているのかな…」

という不安を抱えていたファンは多い
ましてやボーカルが変わった直後
ボーカルが変わってらしさを失ってしまったバンドは少なくない
それでもフジはしっかり期待に応えた

それから現在までの14年間、フジらしさは失われていない
大半のアーティストはそれほどの年月を経つとバンドの方向性は間違いなく代わる
それでも個性は残っている
これは本当に凄いことだ

山総のパワフルなギターが鳴り響く「夢見るルーザー」、

「笑っちゃうぜ コメディアン」

に合わせて金澤がコミカルな芸を行うも自身で笑ってしまった「Surfer King」、その金澤がギターを弾く志村も想像できなかった大きなトピックを作り上げた「SUPER!!」と新旧のキラーチューンを連打し、最後は「夜明けのBEAT」
志村が残した音源を山総が中心となって完成させた話は有名ではあるが、それは志村の残したものは絶えずことなく受け継がれていく証
山総の代名詞である背面ギターソロと共に、この爆音は上空へ舞い上がった

アンコールで戻ってきて、いつものように寸劇を交えた物販紹介を行うが、お知らせとして翌日15日から「電光石火」を配信リリースすること、更にこれを皮切りに3ヶ月連続で配信リリースが行うことを発表
「走り続ける曲」こと、「電光石火」がシーズン序盤にリリースされたのは嬉しいことではあるが、来月以降配信される曲は何なのだろうか(金澤のMCを聞く限り、「ウォーターリリーフラワー」や「1/365」ではない可能性がある) 

山総が聞き覚えのあるフレーズを弾き始めるとワンマンではほとんど演奏されない「若者のすべて」へ
近年入ったファンからするとフジ=「若者のすべて」のイメージが強いと思われるが、そうなったのは数年前にあるドラマの挿入歌としてこの曲が起用されたからだろう
事実、オンエア前はそれほど認知度がなかったにも関わらず、オンエアされるとこの曲の知名度が一気に上昇しフェスでは欠かせない曲となった
14年の歴史のなかでフジらしさは変化していないが、世間から見たフジのイメージは間違いなくこの曲で変化した

そして最後はサビで大合唱となる「虹」だが、ラストのソロパートで金澤が自身のマイクを落としてしまうミス
だが、それを利用してマイクとケーブルが繋がる様子をスローで行い、繋がった瞬間、よじ登って、東京名物である

「TOKIO〜‼」

とシャウト
山総と加藤とソロパートが巡っていった後、この公演を最後にしばらくワンマンでは見れないであろう玉田は、リズミカルなドラムから手数の多いドラムを披露し、最後に濃厚なアンサンブルを完成
全てを出しきってステージから去っていった

バンドが14年もらしさを活動し続けているのは凄いことだが、他のバンド以上に感動してしまうのはフジは消滅の危機を乗り越えているから

武道館を間近に控えた頃、雑誌のインタビューで加藤はフジをバンド名を変えずに活動した理由として、

「絶対にフジを風化させてはならないと思ったから。」

と答えていた

ボーカルが山総に変わり、バンド名も変えない決断は前代未聞であり、当時は賛否両論を呼んだし、離れていった方もいるだろう
だがメンバーの

「絶対にフジを続けるんだ‼」

という執念が再始動したバンドを一度も止まることなく突き動かし、今も生きている
「もう聞けなくなってしまうのでは?」と思われた曲は今日も生きている
だからフジのライブに常に足を運んでしまうのだ

来年の15周年に向けて、14年目の今年は助走の年となる
「電光石火」を皮切りに始まる3ヶ月連続リリースの曲達は間違いなくシーンとは迎合しないフジらしい曲となるだろう
それでもまだまだフジに上がり目はあると自分は信じている
だから来年、でっかい花火を上げるべく走り続けろ

セトリ
桜の季節
カンヌの休日
Sugar!
熊の惑星
シャリー
small world
かくれんぼ
バウムクーヘン
1/365※新曲
炎の舞
Splash!
LIFE
徒然モノクローム
夢見るルーザー
Surfer King
SUPER!!
夜明けのBEAT
(Encore)
電光石火※新曲
若者のすべて

Next Live is ... UNISON SQUARE GARDEN @ NHKホール(2018.4.18.)