以前、雑誌のインタビューで

「俺は活動しなくなったら死んでしまう」

と自己分析をしていた通り、絵音はindigo la End、ゲスの極み乙女。、更にDADARAYにプロデューサーとして参加するなど休む暇もないほど活動をしている

しかし昨年、これに加えて休日課長とのボカロユニット学生気分、バラエティー番組の企画から生まれたジェニーハイ、インストバンドのichikoroを結成
5つのユニットを掛け持ちしていると常識で考えたら信じられないペースである

ゲスの極み乙女。は1月に新譜、ジェニーハイは3月に最初の音源を公開したが、indigo la Endはまだ音源はリリースしてなく、特に目立った活動もなし
そのため2018年は、この中野サンプラザワンマンから本格的に始動である
ここでライブをやるのは3年前の「幸せが溢れたら」のレコ発ファイナル以来であり、この公演で栄太郎の正式加入が発表された

ステージには幕が張られてはいるものの、中は鮮明に見える状況
このステージリングで定刻をやや経過した頃に暗転するとSEもなく、サポートのえつ子やささみおと共にふらっとステージに現れるメンバー達
栄太郎の髭が日に日に濃くなっているのは誰の目にも明らか

メンバーが登場しても幕が上がることはなく、少しずつ音が会場に浸透していく「she」からスタートするが、演奏はやはり鉄壁
ゲスの極み乙女。に加え、ジェニーハイやichikoroの活動もスタートさせたため、どうしてもライブ本数は減ってしまうし、スタジオに入る時間も減少する
それでもこうして非の打ち所がないアンサンブルを形成するのは流石
以前Dragon AshのkjがRIZEのことを

「スタジオ入っても全然練習しない(笑)。なのにライブは凄い」

と称していたが、インディゴもこれくらいの水準にまで達しているのではないだろうか

ステージの幕が取れ、ようやくステージ全体が見回せるようになるが、なぜか幕が外れず上に戻っていたことが気になっていると、ステージには元からあったセットが更に増大
昨年配信限定でリリースされた「冬夜のマジック」がロマンチックな世界へ誘いつつ、セットには映像が投影(具体的にいえばASIAN KUNG-FU GENERATIONが2015年に行った「WONDER FUTURE」のリリースツアーの+α)
このライブは映像と演奏面を両立させたライブであることをこの時点で多くの観客が悟る

R&Bの色合いが強い「藍色ミュージック」を象徴する「ココロネ」、「ダンスが続けば」では後鳥と栄太郎の絶妙なグルーヴでゆったりと踊らせはするものの、曲に入る前から絵音がファルセットを多用した「見せかけのラブソング」とこのバンドは近年音楽性を次々に変化させている
フジファブリックやくるりを聞くリスナーからすれば、特別変わったことではないが、これほどまでに音楽性を変化させることはリスクが高い
それでもしっかりチャート上位に作品を送り込めるのは絵音のメロディーセンス、そして唯一無二の音を鳴らすティスのギターが素晴らしいから
だから昨年リリースした「Crying End Roll」は最高傑作となったのである

「indigo la Endです。よろしくお願いします。」

とようやくここで挨拶するが、このタイミングでステージに再び幕
幾度となく名シーンを築いてきた「夏夜のマジック」では、幕にホタルや花火といった幻想的な夏の風景が映写され、夏の夜に聞いている気分
音楽には魔法があると自分は信じているがこの曲の魔法は神秘
シンデレラが魔法の力で変貌するかのような

そんな幻想的な光景を見させられたあと、幕にはインディゴのメンバーと女性1人が歩く映像が
次の曲とリンクしてくれるのかと思いきや、この時点では意味はほとんどなく「心雨」へ
だが映像からそのまま入ったため、イントロがカットされていた

このライブのゲネプロは行われていないので、「夏夜のマジック」で幕が降りてくることは想定しておらず、

「あっちから映像を映しているからチカチカする(笑)」

とゲネプロを行ってない故に、感じたことを次々に話すが、ティスが次の曲の入りを間違える痛恨のミス(笑)

「ゲネプロしないんだから、こういうことしちゃダメでしょ‼」

と弄られてしまった

そのティスが美しいアルペジオを鳴らす「幸せが溢れたら」から、「心ふたつ」では

「涙が枯れるまで後10分」

にちなんで時計が映し出される演出が
更に「エーテル」ではどういうわけか、蝋燭が無数に映し出されるこちらからすると「?」の演出がされるが、絵音とティスが揃ってアコギを奏でる光景はワンマンでしか見れないもの
サポートに鍵盤(えつ子)が入っているとはいえ、エレキではなくアコギを主戦軸に置いた曲が書けるのは強い

だが、個人的に1番ヒットしたのは「鐘鳴く命」
美メロを奏でるティスのギターに加えて、死生観と向き合うようになった
インディゴの曲は「喪失」をテーマにした曲が大半を占めていたが、こうして死と向き合う歌詞が描けるようになったことは音楽性を拡張する上で役立つ
死生観漂う歌詞が出てきたのは例の騒動後であるがゆえに、暗さも孕ませてしまっているところは致し方ないことだと思われるが

MCをほとんど行わない上に、音をほとんど切らさず進行するので、非常にテンポよくライブは進行
しかしながら「瞳に映らない」で絵音が歌詞を飛ばす失態

「これでおあいこだね(笑)」

と発したティスに対して、絵音は言い訳で誤魔化そうとしていたが、どう考えても誤魔化しきれてない(笑)

このようなやり取りから「盛り上がる曲」と称された「瞳に映らない」を仕切り直し、インディゴの中でも特に陽性に分類される「想いきり」とアッパーな曲を続けていくと、「悲しくなる前に」では幕に映された壁が演奏によって燃える激しいバンドアンサンブルを見せるこの曲に相応しい演出が
特にこの曲は栄太郎のドラミングがただでさえハードなだけに、ドラミングで本当に壁が破壊されたかのようにも見える

終盤の定番曲「夜明けの街にサヨナラを」は都会の映像と合わせて演奏されるため、都会のラブソングへ認識が変化すると、

「中野サンプラザでライブをするのは3年ぶりなんだけど、その時は栄太郎がまだサポートメンバーで、赤坂BLITZからメンバーになったんだっけ?(ティスが「アンコールから正式メンバー」と答える)そっか、1割メンバーか(笑)。こうしてまた中野サンプラザでライブが出来て嬉しいです。勿論、次もやるけど。この間にメンバーが入れ替わったり、やっている音楽が変化したり、色々騒がせたりして(会場爆笑)。そこ笑うところじゃないだろ(笑)。2年前、活動停止に入る前にバンド辞めようとしてたんだよ。その前のツアーからライブの見られ方が変わったりして、音楽が届いてないような気がしたから。それにゲスの極み乙女。も活動できなくなってしまうことが俺には受け入れられなくて。それで分裂もしてしまって、「辞めようかな…」と思っているときに、これ以前(indigo la Endとゲスの極み乙女。のツーマンライブ)も話したけど、「君の音楽が好きです。」ってティスが電話してきてくれて。mixiで知り合って、普段から仲が良いわけでもないし、個別LINEしてもindigo la EndのグループLINEで栄太郎や後鳥さんは返事してくれるのに、ティスは既読スルー(笑)。でもそんなんだからこうしてバンドを続けてこれたんだと思います。ステージに立てる喜びも改めて感じられてますし、またここでライブをしたいと思います。ありがとうごさいました。indigo la Endでした。」

と衝撃の事実を告白しつつ、バンドのこれまでを振り替えり、再び中野サンプラザでライブをする事を宣言しながら、最後は「素晴らしい世界」
しかしこの「素晴らしい世界」は今回が最後

「安くもない弁当で身体を満たす どんどん忘れていって どんどん失って」

のように絵音はもう地元、長崎には友人はいないと言う
だが、こうやって一緒に音楽をやってくれる中間はいる
この曲を封印する
それは退路を絶つことに等しい
そしてもう「一人」で生きていく必要はない
痛みや苦しみを共有できる仲間が出来たことを見届けて、この曲は役目を終えた

アンコールで戻ってくると、追加公演を告知しつつ以前ここでライブするきっかけとなった「幸せが溢れたら」が良いアルバムであることを振り返りつつ、新曲を披露
「Crying End Roll」とも「藍色ミュージック」とも音楽性が異なるシュゲイザーテイストが非常に強い轟音ロック
そこにティスの美メロギターやえつ子が奏でる鍵盤が合わさりこれまでと全くベクトルが違うことを伺わせる
なお序盤に出てきたメンバーと女性が歩く様子はこの曲のPVの伏線だったことがここで明らかに

方向性が近いからか、「大停電の夜に」で歌詞を表示させつつノイズを会場中に散乱させると、

「次で最後の曲です。「Crying End Roll」が合わなかった人でも次のアルバムは大丈夫かな。」

と次のアルバムの方向性を匂わせつつ、最後は絵音とティスのカッティングのユニゾンが印象的な「インディゴラブストーリー」で終了

終演後、記念撮影を試みるが、合図を任せられたティスと後鳥が合図に失敗
最終的には栄太郎の、

「今日風強かったじゃないですか。だから洗濯物が飛んでいってしまって探し回っていたんですが、救急車のワイパーに刺さってました(笑)」

を合図に写真撮影
しっかり締まらないのはいつになっても変わりそうにない

後鳥や栄太郎がえつ子、ささみおと共にステージを去ると、ステージに残った絵音がティスにあの名言をもう1度言って欲しいと無茶振り

しかし、ティスは

「絵音さん、あなたと出会えてもう何年も経ち二人ともそろそろ30になりますが、今もこうしてバンドを続けているのはあなたの音楽に惚れているからです。」

と無茶振りに答え、最後には絵音とハグをしてステージを去った
やはりこの2人の関係性はエレファントカシマシの宮本と石くんのように強い絆で結ばれている
でなければこのバンドはとうの昔に消滅している

メンバーがステージから消えると、幕が再び下り、

「4th album 「PULSATE」 7月18日リリース」

と表示
加えて先程演奏された新曲の配信が翌日から解禁されることを告知して、ライブは終了した

音楽は魔法と芸術の2つの側面を併せ持つ
例えばsumika
彼らがやっている音楽は退屈な空間を幸福な色に塗り替えるまさに魔法そのもの
例えばandrop
ライブでは徹底して演出にこだわり、その演出は見るものを魅了する
だがこの両極面、1:1で共存させることは中々できない
この2つの側面を最大限に発揮するのは非常に困難である

そんななかで今日のインディゴのライブはその両方を見事に顕現させていた
インディゴのライブは「夏夜のマジック」に代表されるように、魔法に近い
それがこの日、映像をほぼ全面に活かした演出を行い、芸術も共存させた

「素晴らしい世界」はこの日でその役目を終えたが、このバンドはこれからも必ずそれに代わる名曲をたくさん手掛けるに違いない
そしてその度に我々の心の奥にある「鐘」は鳴り響くのだ

セトリ
she
冬夜のマジック
ココロネ
ダンスが続けば
見せかけのラブソング
夏夜のマジック
心雨
幸せが溢れたら
心ふたつ
エーテル
鐘鳴く命
瞳に映らない
想いきり
悲しくなる前に
夜明けの街にサヨナラを
素晴らしい世界
(Encore)
ハルの言う通り※新曲
大停電の夜に
インディゴラブストーリー

Next Live is ... フジファブリック @ ZEPP DiverCity Tokyo(2018.4.13.)