※正式タイトルはユニークなプロモーションが話題に〜「MODE MOOD MODE」/UNISON SQUARE GARDEN〜

タイトル:「MODE MOOD MODE
アーティスト:UNISON SQUARE GARDEN

ユニゾンの最新作はプロモーションから度肝を抜かれました
なんと配信が解禁するまで曲名を一切明かさない戦術を用いてきたからです

これはユニゾンがツアーの真っ最中
加えて特典DVDが当時現在進行形のツアー1公演を丸々納めたものだったということ
要するに開催中のツアーから話題を剃らさせないよう策を練ったのです
それがセールスに結び付いたかと言われると定かではありませんが、非常にユニークな戦略で発売寸前まで期待を高めてくれました

一方アルバムはというと、前作の「Dr.lzzy」がマンネリ化していたユニゾンの音楽性の幅の広さを証明するアルバムだったと自分は考察しているのですが、今作はいうと更に音楽性を拡張
それもポップ方向にベクトルを置いた1枚となってます

そもそも驚きだったのは今回のアルバムの軸を「オーケストラを観にいこう」と「君の瞳に恋してない」に置いたこと
この2作、前者はストリングスを、後者はブラスセクションを加えるというロックファンが嫌がるタイプの曲

更に先行シングルだけで4曲、なおかつシングルは連続させず始まりにも終わりにも置かないこと
そしてポップなアルバムを製作すること
これらの課題を踏まえて、上で挙げたキーとなる2曲をいかにアルバムに溶け込ませるかを元にこのアルバムは構築されました
その課題は「フィクションフリーククライシス」を作成することによって達成され、ある1曲が漏れることになりましたが

そんな宿題を突破した今作と前作を比較するとやはりポップ色が強い
前作は8割型ロック、ラーメンで例えるならこてっこての濃厚ラーメン
同期を使用した曲もありますが、あくまで補助といった形式に近いのものでした
対して今作はあっさりとした塩ラーメン
勿論いい意味で表現しています

前作みたいな変化球曲でグランジの効いた「Own Civilzation(nano-mile met)」、まさにユニゾン‼で、

「この高揚感は誰にも奪えない‼」

と宣言する「Dizzy Trickster」、お祭り騒ぎのような曲調で問答無用で上げさせる「MIDNIGHT JUNGLE」と今回も密度の高いロックばかり

ですが、やはり主役はポップス
「静謐甘美秋暮抒情」のようなのどやかな曲はしんみりさせてくれますし、オーケストラを取り組んだ「オーケストラを見に行こう」、ホーンを大胆に取り入れた「君の瞳に恋してない」のような飛び道具要素、それもギターより主張しているアレンジの曲が全く浮かないのが本当に凄いんです

こういったストリングスを取り入れた曲をアルバムに治めると、バランスが崩れたりその曲だけ浮いてしまうなんてこと多々
壮大すぎて世界観の統一を乱してしまうのです
でもそうはさせずにしっかり落とし込む
田淵のアルバム構築力には関心しっ放しです

そしてそんなアルバムの中でも特に強烈なのが「フィクションクリーククライシス」 
歌詞はともかく、この1曲だけでアルバムのバランスを整え、しかも中毒性がある
そのうえ軸に置いた2曲もインパクトが強い
ある意味ユニゾンの恐ろしさを物語ってますね
まだこんな引き出しがあるのかと…

前作がロックサイドの幅を広げるなら、今作はポップ
これでユニゾンはロックにもポップにも行ける振り幅が格段に広がりました
ある雑誌でこのアルバムを「ユニゾンの音楽性を広げるアルバム」と評してましたが、1年半でこのクオリティーは改めて凄いと
振り幅が広がりまくった先にはどんな作品が生まれるのか
なんか来年にもアルバムが出そうな予感がします
当然、楽しみでしかない‼

アニメタイアップが増え始めた頃、ユニゾンが急激にポップになっていくことに耐えきれず、更にライブマナーの悪化
一時はユニゾンから離れかけましたが、「Dr.lzzy」にこの「MODE MOOD MODE」
「俺たちは何て言われようがロックバンドなんだ‼」とロックにこだわるアリチュードを見ると、ユニゾンのファンでいて良かったと改めて思います

「15周年にフルアルバムをリリースしたかった」

と田淵は話していますが、その前夜祭としてこんな素晴らしいアルバムを届けていただき、ありがとうございました

評価:★★★★★