カウントダウン公演を含みつつ年を跨いで行われた「FOLLOW ME UP」のレコ発ツアーから2年
20年という節目を終えた真綾は同年に「Million Clouds」をリリースも以降は音源発表はなく、嚴島神社でライブを行うのみという非常にマイペースの活動を行っていた

それが一変したのはかつて彼女が「プラチナ」を提供した「カードキャプターさくら」の新シリーズに新曲の提供を発表したこと
合わせて2年ぶりに全国ツアー(といっても東阪なので全国とは言いがたいが…)を発表、更に5月に早くも新曲をリリースと休んでいた分を取り戻すかのように一気に活発化してきた
この日はそんな全国ツアーのファイナル
NHKホール2日目のレポートとなる

ステージに幾太にもある無数のポールが興味をひくなか、日曜にしては早すぎる定刻16時ほぼちょうどに暗転すると、先にバックバンドの河野伸(Key)、佐野康夫(Dr)、大神田智彦(B)、今堀恒雄(G)、石成正人(G)、稲泉りん(Cho)、高橋あず美(Cho)の7人が登場
「FOLLOW ME」のツアーの際、今堀は参加していなかったため、今回はツインギター編成となっている

ポールに光が集まっていくなか、離陸を告げるようなアナウンスが流れ出すとドレスのような衣装を纏った真綾が登場し、「プラチナ」からスタート
基本的に真綾のライブは拳を掲げることはあまりなく、手拍子を行うことが中心
とはいえこの曲はサビでドラムのリズムが微妙に変化する
そのため、最初は上手く反応できてなかった方も多数

今堀が途中でアコギからエレキに持ち替え、河野が奇妙なメロディーを鍵盤で奏でる「走る」を終えると、まだ16時だというのに「こんばんは」と真綾が挨拶
昨日が自身の誕生日だったということで「38歳と1日」になったことを強調し、

「昨日祝えなかった人は、今日祝ってもいいんだぜ‼」

と告げて、喝采を浴びると、

「久々の曲‼」

とコーラス隊との掛け合いが楽しい「ハニー・カム」、軽快なサウンドと共に、

「私の名前を呼んで‼」

と力強く歌う「マメシバ」、石成の重圧なギターリフが耳に焼き付く「夜」、カントリー風のサウンドに真綾が英語詞を載せた「24 〜twenty-four」とシングルのレコ発というメリットを活かした幅広い曲を展開
「CLEAR」のカップリングに収録された「レコード」は堂島孝平が作曲を手掛けたものだが、雰囲気は真綾が以前リリースした「シンガーソングライター」の曲に近い
真綾の今のモードはこちらに近いのだろう

「保持曲を見たら今自分、200曲持っているんですけど、1回のライブで全部歌えるわけがない‼ということで今後のライブは自分が歌いたい曲を歌います。聞きたい曲が聞けたら、縁があったと思ってください。」

と今後のライブスタンス、更に今回のツアーがシングルのレコ発を活かした「歌いたい曲を歌う」ものであることを告げ、笑わせるとここからはアコースティックコーナーであることを告げ、お客さんに客席を推奨

アコースティック編成とはいえ、バンドメンバーはステージを後にせず残っているのだが、そのなかでも最小限の音で真綾にとって思い入れのある「光の中へ」を演奏

「さよなら 愛してる」
「ありがとう 愛してる」

というフレーズは今のシーンを見ても珍しいフレーズだが、真綾はこの曲で愛について考えさせられたという
確かに邦楽では「愛してる」という言葉はラブソングで頻繁に出てくる
だがこの曲の「愛してる」は他の「愛してる」とは意味合いが微妙に異なっている
それはこの曲が死を匂わせているからだと思われるがどうだろうか

「渡り鳥」と聞くと否応なしに[Alexandros]の「ワタリドリ」を連想させてしまう「美しい人」も最小限にまで音数が絞られたが、佐野が民族的なドラミングを行う「奇跡の海」からは告知もなくバンド形態へ
そのなかでも驚いたのは前回のツアーでは演奏しなかった「ロードムービー」を演奏してきたこと
前回のレコ発で唯一にして最大の問題点
それはこの「ロードムービー」を演奏しなかった点である
てっきり真綾がこの曲に愛着を持っていなかったのかと思われたが、今回こうして演奏されたということは余程前回この曲を入れるスペースがなかったということである
とはいえ、基本的にアルバムのレコ発で聞きたいのはアルバムの収録曲
真綾に限らず他のアーティストにも言えるが、アルバムのレコ発ならアルバムの収録曲は1回の公演で全てやって欲しいものだ

その「ロードムービー」の終盤で真綾がステージを去り、佐野がドラム、石成がギターを弾きまくるセッションに突入
更にその直後、河野がギターに持ち替え今堀、石成と共に「夜明けのオクターブ」のインストを開始
この中で河野をステップを踏みながら演奏し今堀もそれに便乗したが、石成は相手にもせず(笑)
これはこの後、真綾に弄られることに

真綾が動きやすそうな衣装に着替えてステージに戻ると、リリースタイミングが中野サンプラザワンマンの後だったので「Million Clouds」をようやく堪能
しかしこれが予想以上によかった
静寂を保ちながらも徐々に爆発する変則的な曲なのだが、メンバー1人1人に照明を当て、それが最終的に1つになる演出が非常に良い
リリース当時は微妙だったが、この爆発力を見ると今後欠かせない1曲になりそう

するとすかさず「ロマーシカ」も演奏
ワンマンという機会だからこそ演奏できる曲だが、この曲は真綾が「あまんちゅ!」にインスパイアされた製作した楽曲なのだろうか(「Million Clouds」は「あまんちゅ!」の主題歌)

昨日は飛ばしてしまったというメンバー紹介を行うと「夜明けのオクターブ」での3人に触れ、石成が河野のステップを相手にしなかったことを弄りつつ、

「石成さんはチャーミングな方なんですよ。香港でライブしにいったとき、美味しいものをたくさん食べようと早起きしたりしていたんですが、現地のICカードにお金を入れて電車に乗ろうとしたら乗れなくて、「どうしたんだろう?」と思ってみたら、ホテルのICカードを使用していました(笑)」

とフォローしようしとするが、天然エピソードをばらしフォローになってない(笑)
ちなみにこの日真綾は自身の著書、「満腹論」を渡す予定だったものの忘れたため、送りつけるとのこと

「香港のときみたいな感じで」

と香港のライブと同じ導入からバチバチと音がぶつかり合う「ヘミソフィア」に突入すると、さらっと現在「Fate/Grand Order」の主題歌に起用されている「逆光」へ
重圧なバンドアンサンブルに同期された弦楽器が混ざった非常に壮大な曲だが、現時点では音源ではANiTuaのみ
現在音源化は未定とのことだが、以前主題歌を担った「色彩」のようにシングルのカップリングとして収録されるのだろうか

と推測しているとカラフルな照明が印象に残る「色彩」からまさかのメドレー
最大のヒット曲でありながらライブではなかなか演奏されない「トライアングラー」、the band apartが作曲したことで話題を読んだ「Be mine!」と続いていくが、やはりこの曲はギターが2本あって初めて本領を発揮する
それはバンアパが高度なテクニックで演奏するバンドというのもあるが、2本なければこの曲を極限までに再現するのは困難
やはりギターは2本なければ

その流れから「tune the rainbow」、「指輪」で一息つくと、「幸せについて知ってる5つの方法」が加速し、

「123!の合図で」

に合わせて観客が拳を掲げるお馴染みの「マジックナンバー」へ着地
保持曲が200曲を越えると全ての曲をライブで演奏するのは厳しい
メドレーを実行したのは1曲でも多く曲を聞かせるために真綾が下した決断だろう
この方式が次回も採用されるかはある意味注目である

そんななかで次が最後の曲であることを告げると、

「「ALL CLEAR」なのにまだ「CLEAR」をやってないというね(笑)。今回のタイトルには「邪魔するものを取っ払って飛んで行け‼」という意味が込められています。デビュー20周年を終えた後、「次は何をするか」と考えていたところ、20年ぶりに「プラチナ」でお世話になった作品の新シリーズの主題歌の依頼が来まして。当時「伝えたいなあ 叫びたいなあ」だった部分は今「伝えたい‼ 叫びたい‼」って想いに変わりまして皆様が育てくれた曲になりました。あれから20年、当時あの主人公に憧れていた少女は大人になり、魔法なんてないことを知るようになっています。私自身も泉が枯れそうになってしまったことが何度かありましたが、「行きたいところまで走っていく」という思いを込めてこの曲を作りました。聞いてください。「CLEAR」。本日はありがとうございました。」

と今回のツアー、並びに「CLEAR」に込めた想いを話して最後の「CLEAR」
19年前、リアルタイムでこの曲を聞いていたときの感触を未だに忘れてはないない
作曲はいきものががりの水野良樹になったのでJ-POP色が強くなったことは否めないが、「プラチナ」で始まり「CLEAR」で終わる
それは真綾が20年前の自身に今の心境を送ったように見える
その証拠に

「翼がないなら走っていくわ 行きたいところまで」

と以前とは違う力強さが鮮明に映り、本編は終了

すぐにバンドメンバーと共にステージに戻ってくれると先ほど何も言わずに行った新曲の「逆光」に言及しつつ、ツアーファイナルであることから

「卒業式みたい」
「終わってほしくない‼」

と本音がポロリ

その上で昨年DREAMS COME TRUEのトリビュートアルバムに参加したことを明かし、同級生から絶賛されたエピソードを明かすのだが同時に、

「19の頃、私の兄が倒れて意識不明の状態が続いていた時期がありまして、「歌うことを職業とする私が何かできることはないのか」と思ったことがきっかけで18年間続いているチャリティーポストカードを始めたんですけど、同時に「救命病棟(24時)」というドラマでこの曲が使用されていまして、私の心境と重なっています。」

と曲にまつわるエピソードを述べてDREAMS COME TRUEの「三日月」をカバー

自分はこの曲がリリースされた頃は音楽に触れてもいないし、テレビもほとんど見ていない
だが、真綾のようにあるエピソードが元で大切な曲となったものは存在する
今日のライブを契機に「三日月」を聞く方は必ずいるはず

更に5月に新曲をリリースするというアナウンスが先日行われたのだが、その新曲である「ハロー、ハロー」をオンエアに先駆けて披露
振付もある可愛らしい曲だが、この曲の作詞作曲は真綾
「シンガーソングライター」で全曲作詞作曲プロデュースを行う前代未聞のアルバムをリリースし、以降の作品はセルフプロデュースを行ってきたが、遂に本人の作詞作曲曲が表題曲になった
ここまで来るともはや彼女の才能が恐ろしくなる

そして最後は本人が「1番好きな曲」と告げる「シンガーソングライター」だが、「CLEAR」の時にかかった幕が綺麗になくなり、なんとセットをまるごと公開する大胆な演出(笑)
普段は見れないNHKホールのステージ裏まで明かされ、真綾もそこに移動して歌う、まさに「ALL CLEAR」な終わり方だった

本来ならライブはここで終了のはずだったが、終演アナウンスを遮るほどのアンコールを求める手拍子が発生
なので少し様子を見ていると真綾とバンドメンバーがステージに帰還

「まだ物足りないのか‼」

と客席を煽りつつもマイクスタンドを忘れスタッフに持ってきてもらう天然ぶりを見せた真綾
というのも真綾はこの時、ハーモニカを手に持っていたのだ
となればやるのは当然「ポケットを空にして」

この日は4/1
新年度が始まる日である
前日まで学生だった若者は社会人となり、新たな人生が始まる
そんな記念すべき日に合唱となったこの歌は新生活を全ての人々をそっと送り出す、そんな希望の歌となって降り注いでいった

この日のライブの映像化は確実にない
それは会場にカメラが一切入ってなかったから
同時に、

「タイムシフトなんかで済ませたら駄目だよ‼昔はドリフ見逃したらもう見れなかったんだね‼」

と何でもタイムシフトで済ませようとする今日を皮肉っていった
中野サンプラザ公演やさいたまスーパーアリーナ公演は映像、もしくはライブ音源が製作されているがあれはあくまで記念碑だから
生に勝るものはない
それが真綾の考えなのだろう

それならライブ本数を増やす、もしくはキャパを拡大して欲しいところ
今回のツアー、本数が少なすぎてチケットを取れなかった方が続出している
真綾が多忙なのは分かっている
ならば東京国際フォーラム辺りの会場で見られたら…

「プラチナ」をリアルタイムで聞いていた方は今や社会人となり、魔法なんてない現実を否応なしに1度突きつけられている
絶望や悲しみ、それを救ってくれる魔法は存在しないのだ

それでも音楽という魔法はある
どんなに悲しいときも苦しいときも音楽はそばで支えてくれるのだ
20年前に「プラチナ」で支えられた方は今「CLEAR」を力にまた歩き出している
そしてその時は風よりも鳥よりも自由になっているはず

セトリ
プラチナ
走る
ハニー・カム
マメシバ
24 〜twenty-four
レコード
光の中へ
美しい人
奇跡の海
ロードムービー
夜明けのオクターブ 〜Instrumental〜
Million Clouds
ロマーシカ
ヘミソフィア
逆光※新曲
メドレー(色彩〜トライアングラー〜Be mine!〜tune the rainbow〜指輪〜幸せについて知ってる5つの方法〜マジックナンバー)
CLEAR
(Encore)
三日月(DREAMS COME TRUEのカバー)
ハロー、ハロー※新曲
シンガーソングライター
(W Encore)
ポケットを空にして

Next Live is ... キュウソネコカミ @ 新木場STUDIO COAST(2018.4.5.)