昨年、ミイラズが年間に5枚のアルバムをリリースしたことで話題を呼んでいましたが、実はpasも3枚のアルバムをリリース

内2枚は「過去現在未来進行形」、「未完成フューチャー」のミニアルバム

そしてもう1枚は1年半ぶりのフルアルバムとなりました

 

「過去現在未来進行形」はロック色全開、「未完成フューチャー」はポップに回帰しつつも棘のある歌詞が目立ちましたが、今回のアルバムのテーマはずばり歌

2枚のミニアルバムからリード曲と「440Hz」が収録されている中、新曲は確かに歌ものが目立ちます

その理由はライブ

激しい曲やエモーショナルな曲をあるライブで続けていたのですがタクミはどうも手応えがなかったとのこと

その時にpasに求められているものは歌だと認識

その結果、ロックとポップが1:1だったアルバムの構想が見直され現在の形になったとのことです

 

ロックサイドの中ではMIYAVIを意識してスラッピングギターを披露する「エスニックガール」がありそのインパクトは絶大ですが、このアルバムが凄いのは歌ものを後半にがっちり固めていること

「未完成フューチャー」以降は全て歌もの

盛り上げが重視される今のシーンにおいてこのアクションは攻撃的です

 

ですがこれまでのアルバムと比較すると背後に見えていた暗さは少し和らいだ気がします

「sleep in good bye」では「メメントモリ」で掘り下げた死生観を更にディープに掘り下げていますが、それ以外は基本的にポジティブ

「幻影少女」で人間の不甲斐なさ、「アノニマス」で焦燥感を描いている部分はあっても結局は前向きな回答に

中でも「kakemeguru」では今までになくリスナーを肯定してくれてます

デビューした頃といえば、ライブではユタニが中心でタクミは余裕がないのか非常に暗いオーラを醸しだしアルバムにもそれが反映されることが多々

それが遂にリスナーを肯定に出来るまでに

「過去現在未来進行形」から少しずつ変化はしてましたが、今では心に余裕が出てきたのでしょう

それだけこの1年はpasにとって濃密だったということです

そのポジティブなカラーが大きく出ているからこそ水樹奈々に提供した「レイジーシンドローム(オリジナルは「Angel Blossom」のカップリングとして収録)」のセルフカバー、スケールのでかい「世界線YOUTH」に繋がってきます

 

12月のリリースにちなんでか、モータウン調の「Christmas Song」という微笑ましい歌もありますが、対照的なのが「イトシキミヘ」

いわゆる失恋の歌ですが世間では珍しい男性目線の歌

一方よく考えるとこのアルバムは陰性の曲が少ない

負の側面が少ないのはこの曲に全て背負わせているのもあるのかもしれませんね

 

全体的に見ると明るくなり、少しpasの個性が弱まった感もあります

ですがこのアルバムを聞くとpasがいかに歌を武器にしているかがよく分かります

「過去現在未来進行形」ほどのインパクトはありませんが、傑作であることには変わりありませんので今後も彼らに期待します

 

評価:★★★★

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