昨年の野音ワンマン、2枚目のベストアルバム理由を皮切りに20周年プロジェクトを始動させているバクホン
そんな彼らの次なる一手はインディーズ期以来となるミニアルバムのリリース
それもその中身は初期のバクホンを彷彿とさせる濃いロックアルバムだった

そのリリースを記念してツアーがこの日からスタートするが、東京と大阪公演はワンマン公演となっており、リクエスト制度も導入
野音に続いて普段聞けない曲を聞けそうな予感がする

ステージにはバンドのロゴ以外、目立った装飾は存在しないという実にシンプルなバクホンらしいセットのなか、ほぼ定刻にいきなり暗転
今回のワンマンのために製作されたロマンチックであるものの、徐々に殺伐としていくSEを製作した栄純がいつも通り、勢いよく登場すると続いて将司、岡峰、マツの3人がスタンバイ

不穏な音が会場を支配し、

「即終了」「終了」

という他のバンドではまずないであろうネガティブすぎる合いの手が入り、将司も

「くそがああああああ」

と絶叫する「がんじがらめ」、続けて文字通り将司が咆哮する「真夜中のライオン」と予想だにしない曲を連発
バクホンはアルバムのレコ発では基本的にアルバムのオープニングから始めることが多い
故に意表を突く先制攻撃

だがそんな殺伐ムードを、陽性のコーラスと共に、

「死んでしまう いつか誰もが ならば生きよう 孤独繋いで」

と孤独すら共有する「孤独繋いで」であっという間に一掃するのは流石 
20年間活動を止めることなくフルスイングで活動を続けてきた20年選手だからなせる手腕である

普段ならTOSHI-LOWから「いつまで経っても上手くならない」と弄られるように序盤のマツのMCはグダグタしやすいが、この日は

「「情景泥棒」の濃い世界と20周年の宴を満喫してください‼」

と完璧にこなし、バンドの初期衝動をステージに呼び戻す「その先へ」を赤い照明と共に燃やし上げていく

直後に将司がお経のように歌詞を読み上げていく「雷電」という意外すぎる曲を行い、度肝を抜かせ(といっても前述通り、この日のライブはリクエスト方式を採用しているのでその中から選ばれたのだろう)、岡峰のシンセベースが耳に心地よく居座るなか、栄純のコーラスが加わる最新仕様にグレードアップされた「生命線」と近年、なかなか演奏されてない曲を連打するが、こうして過去の曲を聞いていくとバクホンの曲はメロディー以上に歌詞のエネルギーが尋常ではない

かつてのバクホンは社会への怒り、並びに自分への不甲斐なさをエネルギーに歌詞を書いていた結果、「鬱ロック」に分類され、「罠」がヒットするまでなかなか世間にその名を届かせることがなかったのだが、極限まで追い詰められた末に生まれた歌詞には0.01%でも希望、願いを孕んでいる
だから今日でも心に強く響いていくのだ

この2曲以上に大きな歓声を浴びた「8月の秘密」という初期の狂気性を忠実に再現した曲から音を切らさず、将司もギターを手に爆音を鳴らす「情景泥棒」では目立った演出はないものの表題曲ゆえにか、バンドのロゴは虹色に
無論間髪挟まず、「情景泥棒〜時空オデッセイ〜」に移行するのだが、栄純による謎の世界観の再現、それを焼却させるように後半はギターを引きまくるこのギャップが笑えてきてならない(笑)
当然、リズム隊はしっかり土台を築くことに専念しているのだが、この2曲の世界観は本当に面白い
どうかこの2曲のショートフィルムを制作していただけないだろうか

「昨年の秋にベストアルバム、野音ワンマン、更にはマニアックヘブンのツアーもやるから「バクホン、来年大丈夫なのか!?」と心配されていた(笑)」

と昨年からの怒濤の展開に他のバンドから心配されてたというエピソードで笑わせると、Twitterが今年になってからフル稼働中の栄純に話題が移り、「ずっと会話中」と岡峰と将司が弄るが、

岡峰「この前スタジオに入っていたら栄純が3日間、同じ服を着ていた」
栄純「だって乾くんだもん(笑)」

というキテレツエピソードを岡峰が明かし、更に爆笑を生む

ちなみに着替えなかった理由はオープニングで流れたSEを製作する集中力を切らさないためとのことだが、マツによれば、

「昔雨に打たれたとき、「曲のイメージが変わっちゃう‼」って言ってた(笑)」

ことも暴露(笑)
これに対して栄純は、みんなが見守ってくれたから今も変わらないでいると感謝するが、

「「売れる曲を作れ‼」って言われていたら、1日に2回風呂に入って曲のイメージが次々に変わっていたかも」

と見事に落ちをつけた

すると将司がハーモニカを手に持ち、会場がざわつき始めるとまさかの「ヘッドフォンチルドレン」
「ヘッドフォンチルドレン」はかなり聞き込んだアルバムではあるが、ライブで収録曲を聞いたことはほとんどない
なので同曲をライブで聞くのは初めてだったのだが、元々合唱パートがあったのだろうか

更には名曲「未来」
バクホンのバラードといえば「美しい名前」を上げる方が多いがちだが、「キズナソング」、そしてこの曲を忘れてはならない

「国境さえ今 消えそうな 雪の華が咲いた」

の名フレーズ
「美しい名前」ばかりではなくこちらにもフォーカスして欲しいところだ

かつてのバクホンなら間違いなく出てこなかった

「生きていて良かったよ」

というフレーズが登場する「儚き獣たち」からは終盤
昨年夏フェスの主戦上で活躍するも野音ワンマンでは演奏されなかったためようやく聞けた「導火線」、マツのハードなドラミングが際立つ「シンフォニア」で否応なしに高揚

ダイバーが続出する「コバルトブルー」を経て、

「明日からもよろしくお願いします。死なないでまた会おうぜ‼」

と近年のライブ終盤の代名詞を将司が叫び、マリンバの音が奇妙な存在感を立てながら、

「思いがけない未来で また会おう」

と再開を約束する感情暴走マシーン「Running Away」で終了

すぐにメンバーが戻ってくると、フライングで発表されていた追加公演に言及しつつ、「情景泥棒」をバクホンのライブ感を出した大切な7曲と説明
その上で、

「みんな入ってきたきっかけは違うだろうし、好きな曲もみんな違う。だから早い遅いに関わらず俺たちを祝ってください‼」

とマツが改めて感謝を述べた

そしてタイトル通り眩しいと言わんばかりの光をポップに放つ「閃光」、存在証明を見せつけろと鼓舞する「グローリア」から、岡峰が高くベースをかかげ、

「我 生きる故 我有り」

の大合唱となった「無限の荒野」で終了した

受験で苦しんでいたときも職を失って、視界が暗闇に染まっていたときも常に聞いてたのはバクホン
受験で苦しんでいたときは「閉ざされた世界」に救われ、現実に絶望していたときは「ビリーバーズ」が
残酷であっても必ず光はある
そう教えてくれたバクホンが居なければ今の自分は存在しない

誰もが味わう悲しみ、苦しみの情景をバクホンよ、今後も奪い去ってくれ

セトリ
がんじがらめ
真夜中のライオン
孤独を繋いで
その先へ
雷電
生命線
8月の秘密
情景泥棒
情景泥棒 〜時空オデッセイ〜
光の螺旋
ヘッドフォンチルドレン
未来
儚き獣たち
導火線
シンフォニア
コバルトブルー
Running Away
(Encore)
閃光
グローリア
無限の荒野

Next Live is ... フジファブリック @ EX THEATER ROPPONGI(2018.3.23.)