あいにく雨天のなか開催されるも終盤には雨が上がるという「希望の残骸」を再現するかのような野音ワンマンから早4ヶ月
野音ワンマンの後も精力的にライブ活動を続け、2月上旬には地元FC岐阜のサポートソング「HYPER CHANT」を作成するなど絶好調なcinema staff

彼らはセットリストを頻繁に入れ換えることでも知られているが、そんな彼らでもやらなくなる曲は出てきてしまう
そんな曲たちの救済措置的、インディーズ時代からのファンにはたまらない企画ライブとして前衛回顧主義が再び開催
今回の対象は「cinema staff」、「Salvage YOU」、「Into a green」
再録音源も対象に含まれるかはこの時点では不明

ステージにはバンドのロゴだけが飾られ、開演19:30という平日にしてはやけに遅い開演時間(そのためか会場には会社帰りのサラリーマンが多く目につく)のなか、定刻を少し過ぎたところでゆっくり暗転
クライムの「泥棒」をSEに久野、飯田、三島の3人が登場し、辻は最後に登場してお辞儀

「cinema staffです。最後まで楽しんでください。」

と飯田が告げると、辻のギターリフが何度も耳でループする「白い砂漠のマーチ」でスタート
このライブはよくあるアルバム完全再現シリーズとは違うので、アルバムの曲順に演奏されることはない(その方式で行ったら「Into the green」のセクションがすぐ終わってしまう)

だが昨年の野音ワンマンでも演奏された「火傷」が「cinema staff」の曲順通りに演奏されると、感動的だった昨年の野音ワンマンの記憶が脳裏に蘇ってくる
飯田の歌声はこの日も鉄壁であるが、一方でこのバンドの象徴ともいうべき辻の暴れぶりは健在で、飯田の歌声より目立っているのでは?と思ってしまうほどの躍動感

「火傷」の直前、三島は

「岐阜から来ましたcinema staffです‼」

と力強く叫んでいたが、その三島が辻と共に曲間を開けることなく繋ぐと「super throw」、「her method」といったハードな曲ではゴリゴリのベースを見せつつも甲高いシャウトを決める

再び挨拶代わりのMCを行ってからは、PVも製作された「skeleton」を筆頭にシネマの良さの1つであるグッドメロディーが堪能できるゾーン
1人の少女の夢の中身をユニークなメロディーと共にお送りする「明晰夢」、とびきりポップなメロディーで心を鷲掴みする「さよなら、メルツ」、久野が16分のビートを刻み音が0になる瞬間を作らないように「棺とカーテン」にスイッチする

cinema staffというと「進撃の巨人」の主題歌を担当したバンド、ギターが暴れまくるバンド、残響出身なと様々なイメージがあると思われるが、ここまで生き残ってこれたのはやはりメロディーが良いから
ステージを暴れまくる辻は美しいメロディーからハードな音まで変幻自在に生み出す
ステージの中央に辻が君臨しているように、辻なしではシネマのサウンドは考えられない

「次やる曲はタワーレコードの特典として収録されていた曲で、知らない方も多いんじゃないかな」

と飯田が話して演奏したのは「cinema staff」のタワレコ特典音源として収録された「Seattle meets realism」
自分はその時、このバンドの存在すら知らなかったので完全に初聞きだが非常にダンサブルな印象
この日の公演は映像収録が入っていたため、次の新譜の特典映像になると思われるが今回のツアーに参加できなかった方のためにも必ず収録して欲しいところ

音が伸縮する展開が見所の「You Equal Me」、久野のタイトなドラムが光る「cockpit」、ミドルテンポながら重圧な「warszawa」と普段はなかなか演奏されない曲を演奏していくと、飯田が

「今日もらしい天気でした(笑)」

と雨バンドの底力をある意味発揮してしまったことを自虐し、さらに会場到着前に雪を降らせてしまったことも明かす
その一方でEX THEATER ROPPONGIでようやくライブが出来たことを喜びを噛み締めながら「錆のマーチ」、「実験室」で轟音を徐々になそれも解き放たれたように照明が大きくなっていく
その解放を代弁するように打ち込みを交えながら名曲の「salvage me」では辻にもマイクスタンドが用意され、美しいコーラスラインを形成
この曲の美しさは決して派手ではないものの確かな美しさを見れる絵画のよう
この曲を聞けるのであればどんな苦難も乗り越えられる
それだけこの曲は美しい

「cinema staff」がリリースされたのがちょうど上京した頃という事で、MCは上京してたの頃の話になるが当時は今ほどお客さんが集まらず、バイトをしようにもライブが入りまくっていたため、金欠状態であった当時の苦しい環境を振り替えるが、

「当時はお金がなくて、みんなで集まって暮らしていたんですけど、スーパーで売っている2個入りのコロッケを辻くんが4つに分けて深夜に食べているのを見てかわいそうになりました。」

と辻弄りに発展
さらに学生時代もバンドのためにお金を消費していたことが明かされ、辻の悲惨なエピソードがどんどん拡大していく
今でこそ自分の店を持つまでになったが、そこまでたどり着けて本当に良かった

その一方で、

「この頃の作品はオリジナリティーを出そうと必死になっていて、今の自分達のモードと似ているんですよ。よく雑誌の記者さんから「cinema staffの強みはなんだい?」って聞かれていたんですけど、「そんなの聞く人次第」と今返したいと思います。」

とこの頃の状況とインタビューを振り返り、このセクションでずっとMCをしなかった三島が、

「俺達に奇跡なんていらねえんだよ‼」

と実にエモい言葉を発し、「奇跡」から一気に終盤に入り、「WARP」では

「これから起こるドラマを車の鍵に託して」

と更なるクライマックスを予感させると不穏な空気を漂わせる「小説家」、そんな雰囲気を緩和させるように「どうやら」を一気に連打

そのうえで、

「去年からもらってきたものを歌って返したいって野音の時にも言ったけど、たくさんCDを売りたいと思っていて。それはお金を稼ぎたいからではなく。1、2年前に出したCDが消化されるのが怖いから。この前とあった友人が「最後のつもりでいつもやっている」と話していたんだけど、僕は違うなあと思っていて。「何度も会おう。」そのつもりでライブをやるっていうのは全然違くて。これからも「何度でも会うつもり」でやっていきたいと思います。」

と飯田が今後の決意を述べ、「into the green」で夏の気配を一足早く感じさせつつ、

「物語は砂漠から海へ‼」

と飯田がハーモニカを吹くアレンジが施された長尺の「海について」がラスト
この曲を海の近くで聞くことができたJAPAN JAM BEACHでのロケーションを越すことは今後もまずできない(そもそも海の近くでライブ出きる会場が少ないため)
だがハーモニカを加えた新たなアレンジはこの曲に新しい命を吹き込む
それだけにこの曲を1回でも多く聞けたならと思っていたら、辻がいつのまにギターを手に持ちながら弾きまくり、客席に突入
そして最後はいつも通りノイズを撒き散らしてステージを去っていった

アンコールで久野がビールをマイクの前で開封する茶番を今回も行うと、飯田と共に物販紹介を行うのだが、刺繍ネタを引っ張りまくり、更に久野が利己主義に走るなど飯田のMCが台無しに(笑)
三島や辻がステージに戻ってくると、1曲だけやると宣言し、彼らの地元を拠点とするFC岐阜へ捧げ、彼らの2018年の第1歩となる「HYPER CHANT」で終了

ライブが終わると野音ワンマン同様、最後にエンドロールが
野音ワンマンの映像も加わっており、最後には東名阪のクアトロツアーを4ヶ月連続で開催することを発表
今年もシネマは熱くしてくれそうだ

ライブの集客が安定していなかった頃にリリースされた3枚の作品がEX THEATERのような巨大な会場に鳴り響くのが実にエモいこと
だからこそ自分としてはまだまだシネマに上へ行って欲しいと思ってるし、こちらもシネマの魅力を1人でも多くの方に伝えたい
過去を振り返り、彼らは更に先へ進む

セトリ
白い砂漠のマーチ
火傷
super throw
her method
skeleton
明晰夢
さよなら、メルツ
棺とカーテン
Seattle meets realism
You Equal Me
cockpit
warszawa
実験室
salvage me
奇跡
WARP
小説家
どうやら 
into the green
海について
(Encore)
HYPER CHANT

Next Live is ... フジファブリック @ Live House 窓枠(2018.2.24.)