「なぜこのタイミングなのか」
「相応しいタイミングは数年前(2015年)にあったのでは?」

近年怒髪天をはじめ、フラワーカンパニーズ、THE COLLECTORS、The ピーズとベテランバンドの初武道館が増えつつあるが、そんななかで今回のBRAHMANの武道館ワンマンは衝撃であっただろう

というのも今回の武道館、昨年ツアー千秋楽に当たる新木場STUDIO COAST公園終了後、いきなり貼り出されており、誰もが仰天せざるを得ない状況で発表されたのだ
そのうえ今回の公演は数日前にリリースされた「梵唄-bonbai-」のリリースライブでもない(レコ発は春に組まれている)
となると武道館の天井を駆使した演出がどうなるか
そして、ワンマンが常に1時間前後で終わってしまうだけにどう2時間持たせるか
この2つの点がこの日のライブのポイントである

この日のライブは2013年の幕張メッセ公演以来となるセンターステージ
なので必然的に会場入りすると目の前にステージが映るわけだが、物凄い迫力
これは自分が1階席にいるからかもしれないが、興奮した参加者が1階席から飛び下りてそのままモッシュダイブをしてしまうのではないかと思ってしまうほどの臨場感である

やや入場に時間がかかったのか、いきなり暗転したのは19:15分頃
ステージ全体を見回す限り、モニターはなく映像を使った演出はないのかと思いきや、誰もが背景と考えていた部分に映像が映し出され、天井にもその映像が映し出される衝撃の幕開け
確かにTOSHI-LOWはインタビューで武道館の天井を活かした演出をしたいと話していた
だがこんな形で実現してくれるとは…

いつものオープニング映像が終わると客席付近からメンバーがそれぞれ姿を現し、TOSHI-LOWがゆっくりとステージに上がると、KOHKIのギターが自然と鼓動を高めていく「The Only Way」で勢いよくTOSHI-LOWが拳を掲げるが同時にアリーナスタンディングはダイブの嵐
スタンディングの武道館はかつてDragon Ashで体感しており、その時もダイバーが多く出ていたが今回はその比ではない
あまりの勢いに背中を打つ方が出てしまってたり、とんでもない場所に着地するダイバーが発生
BRAHMANのライブの激しさを物語る一面だろう

祭りの音頭とも聞き取れる和のビートとハードコアが融合した「雷同」を新作から先陣を切るかのように演奏すると、

「上も下もない!左も右もない‼恨みも蟠りもない‼過去も未来もない。あるのは今。俺たちBRAHMAN始めます‼‼」

と久々にTOSHI-LOWが宣誓し、「賽の河原」に雪崩れ込むがこの日のTOSHI-LOWは非常に笑顔が多かった
それは最初の「The Only Way」からそうだが、明らかにこの武道館を楽しんでいる
同様にNAOKIも「こんなに動いたっけ?」ってくらい、軽快に動きまくってる

「賽の河原」の最後の「ここに立つ」から繋げるように「BASIS」、高校野球の応援歌としてもお馴染み「SEE OFF」、TOSHI-LOWの煽りに合わせて手拍子が会場に響く「BEYOND THE MOUNTAIN」と次々に定番曲を叩き込めば無論、拳を掲げるお客さんもモッシュも激しくなるが、尋常じゃない数のダイバー
これらを受け止めるセキュリティーの方々は本当に大変そう
以前、MステでWANIMAのことを「日本でセキュリティーが最も恐れるバンド」と紹介していたが、1番恐れていそうなのはどう考えてもBRAHMAN
以前DEAD POP FESTiVALで彼らを見たとき、SiMファンですら敬遠して後ろに回ってみていたほどである

哀愁漂うメロディーから一瞬でハードな曲調に変貌する「DEEP」を経て、「Speculation」では演奏が一瞬停止する際、やはり歓声が沸くが間奏では天井に美しい夜空が
野外ならまだしも屋内会場でこの光景を経験できるのは本日限り
この曲でこんな美しい光景を見るとは夢にも思わなかったが

RONZIがストロークを鳴らすのが長くなっている「其限」は今やみんなの歌となっているが、TOSHI-LOWが変わり始めたのは間違いなくこの頃

「誰かと話したくて 心を伝えたくて 溢れた思い届けたくて」

というフレーズはバンドを始めた頃のTOSHI-LOWの心境
だが、その思いは恐らく今も変わってない
かつては人との馴れ合いを嫌った彼らがこの曲を書いたのは、震災の影響も少なからずあるだろうが同時に新作の「梵唄 -bonbai-」から感じる暖かさの起点はこの曲ではないのだろうか

「其限」に続いてRONZIのドラムが開幕を告げるのは「怒濤の彼方」だが、再録のレコーディングに参加したNARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦からなる東京スカパラダイスオーケストラのホーンズ隊が登場し、ここからはゲストアーティストが次々にステージへ

ご存じの方も多い通り、「梵唄 -bonbai-」は新曲が少ない
そのため後半は新鮮味が徐々にかけてしまうのだが、それを吹っ飛ばしたのが勇ましいホーンの音
それは油断したものを切り裂くような閃光
ツアーでの共演は厳しいだけに今回、こうしてステージで共演してくれたのは感謝しかない

するとTOSHI-LOWが、

「スカパラホーンズに大きな拍手‼」

と感謝のコメントを送るまさかの展開
更に「新たな命を注いでくれました」とスカパラをべた褒めするのだが、

「自分に力がないわけじゃない。自分の手を見ろ。そこには感覚がある」

と告げて、サビで急激にブレイクダウンする難度の高い「AFTER-SENSATION」へ繋げるが、印象的だったのは、

「幻影の痛みが絶えず 蘇るよ」

の部分
この曲について、TOSHI-LOWは患者の気持ちに寄り添えなかった医師の話を例に出しながら話していたのだが、体のパーツを切り離したとはても感覚は決して消えやしない
見えないようで切り離されたパーツは繋がっているのだ
まだ聞き込みが足りないだけにこの辺りはもう少し深堀したい

すると「終夜」という意外すぎる曲を披露すると、TOSHI-LOWが出演しているCMのワンシーン連想させるシーンが映し出される「ナミノウタゲ」ではハナレグミが登場
元々この2人はナタリーの企画で対談したり、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDが主催するNew Acoustic Campに招くなど親交が深いが、まさかBRAHMANの曲に参加してくるとは

「しっかり掴まれよ」

に合わせてTOSHI-LOWとハナレグミが熱い握手を交わすなど熱い絆を見せつけ、

「波の向こうにいる人にも波の向こう側に行ってしまった人にも届く素晴らしい声でした。」

とまたしてもべた褒めしていった

そのハナレグミの声を受けて、「A WHITE DEEP MORNING」で一足早く清々しい朝を迎えさせると、

「90秒のためだけに北海道の松戸市からやつが来たぞ‼油断してると負けんぞ‼」

とSLANGからKOを召集
もちろん「守破離」のために来たのだが、生で聞くと威圧感たっぷり
出演時間は90秒とこの日のゲストの中では最小だが、それでもBRAHMANのために参加し漢を上げた

そのKOが

「北海道にはもう1人かっこいいやつがいる‼」

と叫び、バトンを渡すようにTHE BLUE HERBのILL-BOSSTINOをコール
昨年のツアーでは千秋楽でのみ演奏された「ラストダンス」がようやく聞けたのだが、ILL-BOSSTINOの声はイマイチ
この曲の肝はラップだけにそのラップが聞き取りづらかったのは残念

「KOとILL-BOSSTINOに拍手を‼彼らが格好いいのはいつまでもレベルミュージックで怒っているから。でもこのままでいいの?全国津々浦々から来た皆さん、怒りましょう。」

と2人を称えつつも観客に彼らを越えることを促し、「不倶戴天」で怒りを頂点に達しさせ、赦しをもらえば、ワンマンでやるのは久々な「ARRIVAL TIME」を経由して、「Answer For...」で一気にダイバー続出
やはりこの曲を聞くと心にグッと来るものが多いのだろうか

いつもならこの流れを受けてTOSHI-LOWが客席に突入するのだが、

「今日客席突入できないかなから、俺の分まで暴れて‼」

と武道館のルールで客席に突入できないため、「警醒」はTOSHI-LOWの分までアリーナが大暴動に
TOSHI-LOWはというとゲストが登場する入場口(客席ではないのでセーフ)の上に飛び移り、北側の最前のお客さんに向かって歌うサプライズを行うのだが、猫達が暴れまくるPVが同時に投影されており、

「掲示‼」「開示‼」

はまともに質疑応答せずに逃げまくる現政権を風刺しているようにも聞こえてしまう
いつの時代だって怒りは押さえきれないのだ

「皆分かっていると思うけど、今日かなり制約多いのよ。「客席に入るのは駄目です。」「はい。」「殴るのも駄目です。」「はい。」「お客さんとハイタッチするのも駄目です。」危うく最初にハイタッチしかけて、公演終わらせてしまうところだった(笑)。でもできないなら頼めばいい。足が不自由なやつの分まで遠くにいく。目が不自由なやつの分までいいものを見る。俺だってそう。背が高いやつに物を取ってもらうみたいに歌が上手いやつに頼めばいい。」

と武道館の制約を説明しながらも、今のTOSHI-LOWのスタンスを話すと、この日最も登場が待ち望まれていたと思われる細美武士が満を持して登場
震災以降に生まれた関係ではあるが、細美とTOSHI-LOWの絆は音楽好きであれば知る人はほぼいないほど関係は強い
特にライブの定番の1つ、「Placebo」は細美武士がいなければ完成はしなかった
そこまで言わせるまでに彼らの絆は深いのだ

その「Placebo」が進化した形がこの「今夜」
2人が強化を確かめるように歌うシーンが印象的であった

「俺の親友、細美武士‼」

とTOSHI-LOWが紹介して、細美に多くの喝采が届くと、

「「お前昔、そんなこと言ってねーじゃねーか。」と思ってる人もいると思う。変わったんだよ、あれが原因で。それに俺にとって手を借りることは挑戦だ。近年、たくさんのアーティストの武道館を見てきて、そこに至るまでのストーリーは素晴らしいんだけどさ、ステージに上がるなり「ここに連れてきてくれて、ありがとうございます。」…って今まで感謝しなかったのかよ。俺たちなら…ここに連れてきてくれてありがとうございます(観客拍手)。こうなっちゃうんだって(笑)。ステージに立ってみたら分かるから。それに俺たちが皆が守ってきてくれた物を壊すわけには行かない。ロンちゃんがちん○ん出して出禁になるわけにはいかないから(観客爆笑)。」

と唐突にRONZIを弄りながら一気に話すと、

「23年前阪神淡路大震災の際、ミュージシャンは無力だと言われていたのを1つの曲が変え、その16年後種は開花しました。ならばその歌を歌い継がなければならない。」

と丁寧に説明しながら満月3兄弟(SOUL FLOWER UNIONの中川敬、HEATWAVEの山口洋、そしてうつみようこ)をステージに招き、「満月の夕」をカバー
この曲が与えたものは想像以上に大きく、この曲を巡る特集番組が組まれたほどである
だが、中川の年齢は既に高齢に近い
歌を廃れさせないためには引き継ぐ者がいそう
それをBRAHMANが担ったのだ
ちなみにこの曲、バージョンが2つあるのだがBRAHMANのカバーは混在ver.
これはNHKの「The Covers」で両者を共演させたからだろうか

満月三兄弟を見送ると、

「歌い継がなければならないものもあれば、語り継がなければならないものもある。」

とTOSHI-LOWが告げ、天井に映し出されるのは福島の第一原発に入った方の姿
その様子がPVで使用された「鼎の問」が流れ出すと雰囲気は一変する
今現在、世界情勢は原発廃炉に向かっている
にもかかわらず、それを世界に輸出しようとする政治家
そんな政治家にはこのPVを24時間正座で見させ続けたい
原発の悲惨さは現地で体験した方しかわからないから

KOHKIの物静かなギターから一気に爆発する「FOR ONE'S LIFE」で、

「I ACCEPT ALL SINS」

の大合唱を起こすと、

「さあ受け継いだよ‼皆が守ってきてくれたものを‼次にこのステージに立つのは誰だ?今度会う時は薄汚いライブハウス。でもその前に言わせてください。ここまで連れてきてくれてありがとうございます。そして今まで行ったことなかったけど…、「またお会いましょう。」」

と多くのバンドマンが受け継いできたものを守り、メンバー一同で感謝を告げ、最後に演奏されたのはなかった「真善美」
基本的にBRAHMANはアンコールを行わないので曲が始まる前にゆっくりとステージを1周しながら感謝を伝えるTOSHI-LOW
最後には、

「さあ 幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が 問う  番だああああ」

と歌ってマイクを意図的に落下させてステージは暗転した
今まで数多のアーティストを武道館で目撃してきたがこんなかっこいい締め方は今までなかった

そして天井にはこの日のために用意されたものが解き放たれ、最終的に爆発し、「BRAHMAN武道館」というロゴが現れて、ライブは終わりを告げた
演奏時間約90分
わずか90分ではあるがその90分で25曲を駆け抜けた

新作の「梵唄 -bonbai-」は賛否両論になっている
それは新曲が少ない(前作の「超克」だってシングル全てぶちこんでいる)というのもあるが、曲がよりポップになり、かつてのBRAHMANにあった怒りのエネルギーが消えたのが大きい

確かにBRAHMANは変わった
特にTOSHI-LOWが

だがその変化は悪い変化ではない
かつて鬼と呼ばれ、他者との交流を頑なに避けてきた彼が、今回多くの仲間の力を借りた
そしてはっきりと感謝を口にするようになった
鬼は鬼でも優しい鬼となったのだ

今日のライブで「天馬空〜」や「EVERMORE〜」は演奏されていない
これは公式インタビューでも言及していたので予想通りだし、最初に書いたがこれはアルバムのレコ発ではない

それにBRAHMANのライブは箱でこそ真価を発揮する
BRAHMANのライブはやはりスタンディングでなければ
ツアーは3月から、まもなくツアーが始まる
だから6月のZEPP、ツアー千秋楽でまた会いましょう

セトリ
The Only Way
雷同
賽の河原
BASIS
SEE OFF
BEYOND THE MOUNTAIN
DEEP
Speculation
其限
怒濤の彼方 w/ NARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)
AFTER-SENSATION
終夜
ナミノウタゲ w/ハナレグミ
A WHITE DEEP MORNING
守破離 w/ KO(SLANG)
ラストダンス w/ ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)
不倶戴天
ARRIVAL TIME
Answer For...
警醒
今夜 w/ 細美武士(the HIATUS / MONOEYES)
満月の夕 w/ うつみようこ、中川敬(SOUL FLOWER UNION)、山口洋(HEATWAVE)
鼎の問
FOR ONE'S LIFE
真善美

Next Live is ... ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST(2018.2.20.)