タイトル:「Fin
アーティスト:10-FEET

先日レビューしたUVERworldが3年ぶり、Dragon Ashは3年4ヶ月とミクスチャーロックを軸に活動するバンドは制作に非常に苦労するのか、新作リリースまでかなりの時間を要しています
しかし、彼らの盟友である10-FEETは更にその上を行く5年ぶり
一時期、もう新作が出ないのでは?と噂されていた彼らですが遂に新作が完成致しました

なおタイトルは「Fin」ですが、勿論最後のアルバムではなく、これは魚のひれを表す単語(よく見たらアルバムジャケットのマフィンに魚のひれが刺さってる(笑))
ただ、これが最後のアルバムでもいいという意気込みで作ったようです

今回のアルバム、先行シングルの流れを見たら誰でもわかるかと思われますが、パンク要素はMONOEYESが昨年「Dim The Lights」をリリースした時のように大きく後退しています
ですがそれ以上に大きいのは、歌詞カードから和訳が消滅したということです
勿論英語詞が用いられている曲もあります
それでもこの画期的な変化
いかにメッセージに比重を置いているかは明らかです

そんな今作は「U」や「What's Up?」に代表される激しいナンバー、「1 size FITS ALL」からスタート
ここのところ、パンクロックはおろかこうしたハードチューンはほとんど見られなかったので驚いた方も多いはず
最後のアルバムを想定してなければ間違いなくこの曲は生まれてないでしょう

更に現代版「蜃気楼」といえる「Fin」、美しいメロディーを感じさせながら高速パンクで駆け抜ける「fast edge emotion」とシングルの傾向とは異なり、激しい曲が続くのは意外です
10-FEETは基本的にライブでは同期を使用しないため、ライブでは全て自家製のサウンド
なのでストリングスなどを聞けるのは音源だけなのですが、「Fin」は「蜃気楼」の続編を見てるかのようです

最後のつもりで作ったということコミカルゾーンも全力でおふざけ
いきなりハードなリフから始まりブレイクダウンしながらもかっこいいロック…と見せかけて十二支を英語で歌っただけの「十二支」、更にスカパラをゲストで呼んでいたにも関わらず歌詞はひたすら骨を歌っている「HONE SKA」の勿体なさ(笑)
でも最後のつもりじゃなかったらただのコラボになってしまいましたし、これはこれでありかも(笑)
10-FEET初の四つ打ち曲「月~sound jammerせやな~」もある意味このセクションですね

倍速したり減速したりする「夢の泥舟」、KOUICHIのタイトなドラムが炸裂する「火とリズム」、野球をテーマにした「STANDin」とトリッキーな曲が後半に多く配置されていますが「太陽4号」、「アンテナラスト」というシングル曲も間に挟まれておりそこでバランスはしっかりと

そしてここまで名前が上がっていない「ウミガラスとアザラシ」、「way out way out」、「何度も咲きました」
これらがこのアルバムのベスト3

ミドルテンポで人間の不器用さを歌った「ウミガラスとアザラシ」、ツービートを軸にしながらも福島を匂わせるフレーズが序盤に登場する「何度も咲きました」、そして昨年このブログの推薦曲で見事2位に輝いた「way out way out」
美しいメロディックパンクでありながら日本語詞で勝負したこの曲はずば抜けてます

とここまでは楽曲を中心に見ましたが、歌詞に目を向ければ暗い、本当に暗い
幾度となく出てくる「最後」、「死」という言葉
特に「fast edge emotion」は世界情勢がリアルに反映されてますし、「Fin」はいかにTAKUMAが苦しんでいたか、それが1曲に込められてます
コミカルな部分もいつもの10-FEETらしい部分もありますが、最後を意識する
すなわちそれだけ最後や死と向かい合うということです
歌詞に注目してこのアルバムを聞けば、見方も少し変わるかもしれません

個人的に最高傑作だと思っている「VANDALIZE」には届きませんが、それでも5年かけてでもこのアルバム、いや新作を届けてくれたことが本当に嬉しい
もう出ないのではと思っていたので…
5年かけてでもこの名作を制作してくれてありがとう‼

後はライブを見れますように…(執筆日時点ではライブに参加する予定日が雪の予想のため…)