まさかこんな事態になると予想した方は少なかっただろう

昨年結成15周年を迎えたアルカラは様々なマニフェストを発表しながら例年以上に精力的に活動
毎年彼らが地元神戸で主催するネコフェスをはじめ、キャリア15年目にして初のフルアルバム「KAGEKI」をリリース、そのアルバムリリースのレコ発として9mm Parabellum Bullet、THE BACK HORN、tricotといった仲間を呼んだ自主企画を開催
そして10月から始まった「KAGEKI」のレコ発ワンマンツアーが実質的にアニバーサリーイヤーの集大成になるはずだった

だがこのツアーのリハーサル中、ギターの田原が突如音信不通に
メンバーやスタッフが様々な手段を用いて接触を試みたものの、活動できる状態ではないと親族から伝達
そのためアニバーサリーイヤーにも関わらず、メンバーを1人欠き、サポートメンバーを加えてツアーを開催する非常事態となった(数年前にBase Ball Bearもギターの湯浅将平が突如失踪し、脱退する青天の霹靂を見ていたとはいえまさかこのバンドでこんな事態になるとは予想しなかった)

この日は東名阪ZEPPシリーズの最終日にしてファイナル
だが、この日はようやくライブ活動を再開できるまでに回復した9mm Parabellum Bulletのギター、滝が参加することも発表されており、注目度は高い

当日券は出ているものの、2階席から客席を見渡す限り、カメラは入ってるとはいえ客席はすし詰め状態
だがステージは真っ暗闇でかつ、エフェクターが確認するのがやっとというほどの暗さ

そんな状態だが定刻を少し過ぎると何やら前方がざわめき
それもそのはずで既にメンバーがスタンバイしているのだ
その状態でいきなり暗転すると壮大なSEが響き、鳴り終わったところで「3017」からスタートするのだが、いきなり凄まじい迫力
恐らく今日ライブを見に来た誰もが「アルカラは大丈夫なのか!?」、「田原の穴をどう埋めるのか」といったことを考えながら会場に足を運んでいるものと思われるが、田原の穴を埋めるどころかパワーアップしている
普通ならメンバーが離脱した場合、空洞を埋めるべくサポートの力を借りるのだが、これでは埋めるどころか補強してしまっている
このバンドは一体どうなっているんだ!?

「3017」の途中でステージを暗闇にしていた幕が下り、早くもリード曲の「如月と彼女」では映像を生かしたZEPPらしい演出を行い、「アブノーマルが足りない」ではイントロと間奏に下上のスラップソロを盛り込む進化した姿を見せつついつも通り豪快に演奏するのだが、下上に負けじと暴れまくっているのがSSGHとして参加しているfolcaの為川裕也
アルカラの1番弟子を自称するfolcaのギターがアルカラを更なる時限へ引き寄せている

この為川というリサールウエポンのお陰か、

「俺たちかっこよくない!?」

と稲村までビビる事態になるが、キメ連発の「HERO」で稲村と為川が向かい合って演奏するほど今やアルカラになくてはならない存在になっている

社会を俯瞰する稲村の歌詞に不気味な緑の照明、下上のゴリゴリとしたベースが会場を混沌とさせる「さ・あ・な」では稲村がマイクを手に挑発するように歌っていくと、素早くアコギに持ち替えて稲村のソロ曲に近い「銀河と斜塔」を歌うのだが、

「太古から吹く風のように 人々のドラマは生まれ消えてく」

という歌詞が今のアルカラを指してるようで胸に響く
今回の事態が引き起こされるなんて誰も予想しなかったし、田原が今何をしているのかも分からない(Base Ball Bearを去った将平もそうだが)
だがバンドは転がる生き物
今日も生まれては消えていくのだ

そんなことを思いながら聞いていると終盤バンドの演奏が
SLSでこの曲を演奏したときは、稲村以外は全員直立不動で演奏していたらしいが、このように演奏したのは田原が脱退する前から決まっていたのか
それなら田原がいる編成で見てみたかったが…

「35年ぶりに東京に低温注意報という訳の分からない注意報が出ていますが、ここでは20分前から下上から警報が出ています」

と下上が弄ってからは稲村のトークショー
最新作「KAGEKI」の収録曲の大半が季語を含んでいるということもあってか、次々に俳句を発表していくが、新しいことに挑戦するということでまさかの物販コーナー
バンドのマスコットキャラクター、くだけねこも登場しグッズを紹介していくが、これ自体が次の曲への繋ぎであり、最後に紹介されたのが稲村が「廃棄物」と称した「コンピュータおじさん」
こうなると次に何をやるか、一目瞭然だが、

「Windows95、ソリティアもマインスイーパにExcel、Word、一太郎も入って25000‼」

と無駄に設定が凝っている(笑)

そしてこのまま曲に突入するのだが、このコンピュータおじさん、古いだけあってほぼ直立不動
しかも最後の

「廃棄処分 処分 処分」

に合わせて起動するシュールぶりに稲村も

「なんかかわいそうになってきた」

と言い出す始末(笑)
無論最後は廃棄処分されてしまったが
ちなみに音源に合った逆再生パートは為川がパソコンのような音を弾く形でフォロー

その為川に、稲村がわざとらしく

「この曲知ってる?」

と質問してから下上がスラップを入れまくるアレンジに変更された「シェイクスパイ」を経て、ワンマン恒例のインストゾーンへ

今回はレコ発の関係上、「箱」しか出来ないがこの「箱」が凄い
コミカルな感じだった「ガイコツマン」、「迷宮レストラン」では真逆にロックとストリングスが融合したロックオーケストラ
近年のインスト曲ではずば抜けており、ライブハウスよりもホール、アリーナの方が相性が良さそうだがアルカラのことだからそういった会場とは縁はほぼ皆無
毎年のように出演しているMETROCKで演奏してくれないだろうか

ステージの暗転が終わると為川の姿がなく、

「そろそろお呼びしましょうか。30代が選ぶナンバーワンギタリスト、滝善充‼」

と稲村の呼び出しでいよいよこの日のメインイベント、SSSSSSSGHである滝がステージに降臨
まだ万全ではないので、数曲だということはわかっているが、

「夢のような時間をお楽しみください‼」

と稲村が伝えたように照明がゆっくり移動していく「はじまりの歌」から音圧が桁違いに
9mmから滝のライブ活動停止が発表された際、昨年のライブでは滝の穴を埋めるべく、RADWIMPS同様同じパートのミュージシャンを2人呼ぶ形でカバーしたのだが、滝のギターを久々(9mmのライブを最後に見たのがCDJ15/16のため)に聞くと、彼の穴はそう簡単に埋めることが出来ないのがやはりわかってしまう

エモーショナルではあるが下上どころか滝も暴れまくるのでむしろ笑えてくる「半径30㎝の中を知らない」、歌詞を聞くとどうしてもきゃりーぱみゅぱみゅが浮かんでしまう「水曜日のマネキンは笑う」と代表曲を披露したところで終わりかと思ったが、

「12月のケツにスタジオ入ったんだけど、その時滝くんがギターを抱えながら機材をローソンの袋に入れて持ってきたので、どこの滝くん似の少年だと(笑)。滝くんの指の調子とかもあるので2〜3曲やろうって練習したんだけど、すぐ出来てしまって(笑)。3時間余ったのでどうしようかと思っていると、滝くんがどんどん弾いてくるから曲が出来るわけですよ。」

とまさかの新曲「Thirsty Thirsty Girl」を演奏
ここまでの滝のプレイは賛否両論を呼んだSpitzの「ロビンソン」をカバーしたときと同様に、原曲を忠実に再現しながら演奏していたのが、この新曲になると重りが外れたのか滝節がいたるところに炸裂
もはやアルカラ × 9mm Parabellum Bulletのコラボ曲状態に
ちなみに稲村は何故かサングラス着用、滝はコーラスまでやっていたが、この曲音源にしますよね!?

滝が出番を終え、為川にバトンタッチすると、

「俺達は素晴らしい音楽を届けたいと思ってこれまで活動をして来ました。しかし昨年の10月にKAGEKIな出来事(観客爆笑)が起こってしまいまして。去年の10月に千葉県のK'S DREAMでライブをやったとき、「アルカラ大丈夫か!?」って昔の関係者や交流があった人が来たんやけど、「ああ、大丈夫やな」って帰っていって。沢山のミュージシャンからもメールをいただきました。そのなかでも9mmの卓郎くんが「アルカラ大丈夫?すぐに助けに行くよ。」と真っ先にメールを送ってくれたんやけど、来たのは滝くん(笑)。機材車も本日はアルカラのではなく、9mmの機材車を借りております(笑)。なのでこの場を借りてお詫びします、卓郎くんすいません。」

と昨年の事件を振り返りながら9mmの卓郎弄り(笑)
しかしこれが後の伏線となるとは…

「「誰かの叫び声 涙目の都会の朝 同情してるフリ」なんてないやろ」

と冷めたように弾き語りをしてから、大都市で歌われるのが実に相応しい「デカダントタウン」、歌詞が歌詞だけにこの状況では田原に向けて歌っているようにも聞こえる「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」、演奏歌唱共に緩急をつける「ひそひそ話」とほとんど音を切らさずに曲を連発

そこから長いセッションを経てド直球な「防御戦の果て」という予想外すぎる選曲を経て、

「どんなことがあろうがアルカラはいつも「やるかやるかやるかだ」‼」

とアルカラの基本方針を説くように、この曲の肝といって田原のギターをよりグレードアップさせた「やるかやるかやるかだ」、そこから薄気味悪い緑の照明と共に「LET・IT・DIE」を一気にやり遂げる
そして、

「後2万5千曲あるとお伝えしましたが、あっという間に残り1曲となってしまいました‼稲村さん、このツアーでずっとお伝えしていることがあって、それは来世でもアルカラをやるということです‼だからいい曲をたくさん作って来世でもアルカラをやります。来世ではお前らもメンバーやからな。練習しとけよ‼」

と今後の決意、及びお客さんを強引にメンバーに勧誘し、雨が降るような演出が

「さすらいの別れ雨」

と呼応する「さすらい」で終了

アンコールでいつも通り稲村が女装して登場すると、滝もスタンバイしておりここからは滝も全面参加
folca、キツネツキのライブ情報、更に下上と疋田がサポートとして参加するライブも告知
稲村はその企画の多くに弾き語りとして参加するのだが、LUNA SEAのツアー初日がメンバーのインフルで中止になったことからLUNA SEAの曲を歌いまくる悪のりぶり(笑)
しかも滝が完全に合わせてしまうのだから凄い

その滝も交えた5人編成で音圧が強固となった「キャッチーを科学する」から最後の曲に映ろうとすると、またも稲村が卓郎を弄りはじめ、為川が卓郎に似ているということで彼を卓郎として最後の曲をやろうとすると、

「待て待て待て待て待て待て‼」

となんと卓郎本人が登場

卓郎「あいつ(為川)は俺と顔が似ているから(笑)」
稲村「じゃあダブル卓郎に挟まれたということで俺も卓郎になる(笑)」

と徐々に混沌とし始め、稲村が昨年9mmが行ったBABELスタイル(ドラムを前方に設置し、ギター2人(その2人こそfolcaの為川とHEREの武田)を後方に配置する布陣のこと)に言及すると、HEREの武田将幸まで登場し、ギターが4人もいるとんでもない事態に

「誰のライブかわからなくなってきた(笑)」

と稲村までもが吐いてしまい、収集がつかなくなってきたなか、卓郎のトークを強制終了しようとしたタイミングで狙ったように卓郎が、

「チクショー‼チクショー‼」

と叫んで「チクショー」に突入
ギター4本ということでこれまで体感したことのないような音圧
更には稲村と卓郎のツインボーカルというもう見れないのではと思うほどの豪華ぶりにダイバーまで発生
爆音を撒き散らして終わると、ボーナストラックに収録されているラジオの再現がはじまり2032年にタイムスリップ
リポーターがお客さんに「あ~あタンバリン あ~あタンバリン」を歌わされたり、「アルパカに乗った少年」の感想を言わせる無法地帯と化していくが、ステージに目を向けると稲村を含め本日の出演者がほぼ全員老化(笑)
滝に至っては松葉杖まで使用して設定を守っているが、為川はピンピンとして設定をぶっ壊している(笑)

そして今度こそ「RADIOから聞こえるJ-POP」で絞めに入るが、疋田までカツラをシンバルに乗せる設定放棄を始め今までで1番のグダグタぶり
それでもボーナストラックの最後の3017年にワープし、しっかり締める辺りはアルカラ
このツアーのドキュメンタリーが3月にスペシャで放送されることも決定し、「KAGEKI」が最初から流れ始めてライブは終えた

今回のツアー、 Base Ball Bearの事件が2年前なので心配でライブに来た方も多いはず
しかし蓋を開けてみればむしろパワーアップ
田原の喪失を補うどころか、彼の魂を引き継ぐようにfolcaの為川と9mmの滝が演奏していたのが非常に印象的だった

加えて稲村は「たくさんいい曲を作って、来世でもアルカラをやります‼」と終盤叫んだ
これからどうなるかはわからない
けどこんなところでアルカラは終わらない
それは今回のアルバムで15年後の未来を想定していたし、「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」では、

「30年後でも 笑い合って 四半世紀分 笑い合って  いつぞやの事と 思い出して笑う」

と歌っていた
だからアルカラは立ち止まらない
今後どう活動していくはともかく
なぜならアルカラの活動方針は「やるかやるかやるかだ」から

セトリ
3017
如月に彼女
アブノーマルが足りない
キリギリスのてんまつ
HERO
さ・あ・な
銀河と斜塔
コンピュータおじさん
シェイクスパイ
(滝 in)
はじまりの歌
半径30㎝の中を知らない
水曜日のマネキンは笑う
thirsty thirsty girl
(滝 out)
デカダントタウン
ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
ひそひそ話
防御戦の果て
やるかやるかやるかだ 
LET・IT・DIE
さすらい
(Encore)
(ここからずっと滝 in)
キャッチーを科学する 
チクショー w/ 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、武田将幸(HERE)
(2032年のライブから)
RADIOから聴こえるJ-POP

Next Live is ... Dragon Ash @ 横浜アリーナ(2018.1.28.)