自分がsumikaというバンドを知ったのは「Vital Apartment.」をリリースした頃、それも片岡の体調不良を理由に活動を停止していた頃である
彼らとはDISK GARAGEが主催するmusic monsters 2016 -WINTER-で初めて見た(それも鳳で)のだが、その直後にリリースした「Lovers/「伝言歌」」から状況が一辺
チケットは瞬く間にソールドアウトするようになり、音楽フェスでもメインステージ(ロッキンではPARK STAGE)に抜擢されるように
そして今年リリースした「Familia」はオリコン5位にランクイン
完全にブレイクを果たしたといっていい

そのsumikaが9月から地元神奈川にあるF.A.D Yokohamaを皮切りにリリースツアーを開始
そのファイナルシリーズは初の東名阪ホールツアーなのだが、東京は過去最大キャパの東京国際フォーラムホールA
にもかかわらず完売してしまうところにsumikaの今の勢いを感じる

なお今回のライブレポートではメンバーの意向もあり、セットリストは公開しない
しかしやはり構成上何をやったか、更に演出にも足を踏み込まざるを得ない
そのため、「それでも構わない‼」という方のみ読み進めてほしい(なので名阪公演に行かれる方は読まないことを推奨する)

東京国際フォーラムは何度か訪れているが、そのなかでも「こんなに派手な装飾あった!?」と思えるお金のかかったであろうステージ、更にステージ正面、上手、下手にモニターが設置されている手の混みよう
こういうのは本来アリーナ公演で行われることが多いのだが、それをホールで導入するのは珍しい
そして最近ブレイクしたばかりだからか、10-30辺りが非常に多く、大学や高校帰りに寄ったと思われる方が目立つ

そんななか、メンバーによるユニークな諸注意が流れ、19:07頃にゆっくり暗転すると、アルバムを聞いてたときに「これがSEになるんだろうなあ」と思っていた「ピカソからの宅急便」が流れ、サポートベース(sumikaはベーシストが固定されていない)の井嶋啓介と共に黒田、荒井、小川が登場
片岡は最後にステージへ

「皆さんからの手拍子、視線を全て演奏に変えさせていただきます‼」

と片岡が叫ぶとアルバムのオープニング「Answer」から始まるが、早くも黒田ははしゃぎまくっている
片岡も随所で決めまくり、荒井に至っては終始カメラを意識してか、笑顔でドラムを叩きまくっている

椅子や本棚が設置されている家庭のようなステージに赤い幕が降り、ポップミュージカルを展開する「Lovers」では間奏で井嶋を含めた弦楽器隊が小川の回りに集合
片岡に至っては小川にちょっかいも加えている(笑)

その小川が随所で様々な小ネタ(モニターに映ってないので小川を注視しなければ分かりにくい)をぶち込む「カルチャーショッカー」、music monstersで見たときはまさに「泣いちゃいそうだ」に鳴りかけた「ソーダ」でカラフルな照明が演奏を彩ると、

「久々の曲やっていいですか?」

と片岡が煽った「FUN」では、黒田と共に上手下手に駆け出しては弾きまくる、黒田以上のテンションハイぶりを見せつければ、和のメロディーを片岡が豪快に鳴らす「1.2.3..4.5.6」とほぼ休む間もなくいきなり6曲
あまりの飛ばしすぎにスタミナ配分を心配するほど

「視力を鍛えた結果…、8.5はあります‼」

と後方まで見えていることを片岡がアピールするが、流石に「それはないよ」という顔で荒井がリアクションを取るのが実にシュール
ここまでは上がる曲を中心にやっていたが、「Familia」のリリースツアーということでここからは「Familia」曲たちが表舞台へ

先程の赤い幕から一転、銀の幕が降りてステージの雰囲気が大きく変化すると、BIGMAMAの東出真緒やフレンズの三浦太郎が製作に参加した「KOKYU」では重厚な音に合わせて黒田のハードなリフが会場全域に
片岡が入院した際、呼吸が改めて大切だということを認識して作曲したのがこれ
なので、

「吸って 吐いて」

が繰り返しリフレインされるのだが、呼吸の大切さを訴える曲はこの曲くらいだろう

その直後の「Summer Vacation」では、上手下手にある小さなミラーボールが回転
黒田のカッティングと共にゆったりと体を揺らすのはファンク要素が強いからこそだが、これだけを切り取って見るとBRADIOのライブに参加している感覚になる
ちなみにこの2曲で片岡はハンドマイク

一転、片岡がギターを持って美しい旋律を鳴らす「アネモネ」で黒田、小川と共に見事なコーラスワークを披露すると、「SALLY e.p.」収録ながらアルバムにも入った「まいった」と聞かせる曲を連打
「まいった」をやった後に、片岡はやればやるほどダメージを負うと話していたが、それはこの曲が彼の実体験だからだろうか

メンバー紹介では黒田が何故か選挙風に、荒井は東京出身であるゆえ凱旋公演であることを公表、サポートベース井嶋の合図でいかりや長介元ネタの「おいーす‼」を会場全域で行う(このとき、ポルノグラフィティのnang-changを連想したのは自分だけ?)ユニークな自己紹介を行うが、鍵盤の小川は

「私、大学の通学で乗換駅として有楽町を使っていて、そこでアルバイトをしようと思い、面接に向かったのですが、1件2件と落ちて3件目を受けようとしたのですが、近くまで来て落ちるのが怖くなったのでドタキャン致しました(笑)」

と有楽町にまつわる自身のエピソードを明かし、笑わせる
こういったところはかつてとんねるずの番組に出演していただけあって、ツボをしっかり抑えている

そんななか、片岡がsumikaがホールでワンマンを行うのは初めてということでお客さんを座らせては即座に立たせる悪戯を行うと、ホールに合わせてアレンジされた「Amber」を披露
アレンジがカントリー調、更にテンポがやや遅めになっているが、これにより曲に集中しやすくなっており、曲の良さがより伝わりやすいアレンジに

更に片岡が友人の結婚式のために製作したという「ここから見える景色」も演奏
「Familia」で初収録されたように見えるが、実はこの曲、5月に突如発表し話題になった「Dress farm」の第1段に収録されていた音源である(同時収録されていたのはあの名曲「リグレット」)
初期からsumikaを聞いている方にはこの曲がこの国際フォーラムで鳴っているのを見て、感慨深くなったのではないだろうか

今回のツアーでは各地の打ち上げで何を食べるべきか聞いており、東京でもアンケートを取るのだが、もんじゃ焼き、寿司と様々な意見が出た結果、寿司に決定
その流れで神奈川出身の片岡が神奈川の良いところを紹介すると言い出したのだが、

「タオルを掲げて…湘南乃風(笑)」

と湘南乃風をネタにして、もはや良いところを紹介すらしてない(笑)

そんな流れからホールにも関わらずタオルを回しまくる「マイリッチサマーブルース」で小川の細かなリアクションで笑いを堪えざるを状況に持っていかれると、

「皆さんが起こした風は天気を晴れから曇り、そして雨に天気を変えます‼」

と片岡が告げて、雷のようなリフを黒田が鳴らす「イナズマ」、

「皆さんに体力がかいふくするじゅもんを」

の下りから問答無用で上がる「ふっかつのじゅもん」とここに来て急加速
小川が先導する間奏の「ソレ‼ソレ‼」もしっかりマスターしており、メンバーは実に楽しそうである

そのまま間髪挟まず、「アイデンティティ」に突入すると、片岡が2年以内に目標を達成できなかった場合、音楽で食っていくのを辞める方針でこのバンドを結成したエピソードを初めて明かし、

「死ぬ気で頑張った結果、オガー(小川)やスタッフが入ってきてくれて。さあこれからだ‼と思ったら2015年の5月2日。朝起きたら声がでなくなって。しゃべることも出来ない。だから辞めることも覚悟して、メンバー全員に送るメールも用意したんだけど送れず。そしたら、メンバーから、「歌えなくてもいいから音楽やろう。だめなら農家でもやろう。」ってメールが届いて。それで続けることを決意して、こんなに休めるのはもうないだろうと思ったから、久々に家族旅行に出かけて、親父ととも小学校以来かな、久しぶりに一緒に風呂に入ったんだけど、風呂から上がる直前に親父が(メンバーのことを)「それはもう家族だ。」と言ってくれて、だから音楽人生で最初に出すフルアルバムは「Familia」にするって決めてました。俺よりも良いメロディーや歌詞を書く人は沢山いるかもしれない。けど血だらけになったりしても見捨てることはしません。」

と非常にエモいMCから最後は「Door」
この時、自分の近くにいた方は大粒の涙を流していた
この時期、学生は受験勉強や進路、なかでも就活生は就職先が決まらず悩みながら生きている方が多い(2年前のCDJでNothing's Carved In Stoneを見ているとき、自分も同じ感情になっていた)
それだけに隣にいた方を含め、今日来た多くの若者にはsumikaが自分の居所になっているんだなあと悟った

5分経たずにメンバーが戻ってくると、

「1秒で世界を変える曲を」

と本編で演奏されなかった「MAGIC」を演奏
リリースした時、とんでもない曲をリリースしてきたなあと思っていたがこの曲を聞いているときは痛みや苦しみを一切感じない
無意識に魔法にかけられている証拠であろう

そして最後は、

「伝えたい 全部あなたに」

の大合唱となった「「伝言歌」」で終了

演奏を終えると井嶋とと共に記念撮影
このライブを共に作ってくれたスタッフ、音響、PAを拍手で称えると最後に思わぬサプライズ(ここは当日行って体感してほしいので伏せる。最後まで席を立たないように)を届けてステージを去った

ライブは言うまでもなく素晴らしかった
これまで見てきたバンドの中でも特に楽しそうに演奏しているのがわかるし、その立ち振舞いからいかにもいい人だなあとすぐに判る
同じ神奈川県民としてsumikaは神奈川の宝だ

そしてsumikaが何故SUPER BEAVERと同じNOiDにいるか
同じレーベルのAmelie、SAKANAMONはともかくこのバンドだけはずっと「?」状態だった
それが終盤のMCでやっとわかった
片岡もまた熱い感情を持っているのだ
フェスではなかなかそういった姿を見ることは出来ないが、ワンマンではこういった部分も見れる
だからsumikaもNOiDに所属しているのだ

その同じレーベルのSUPER BEAVERは武道館が射的圏内に入っている
恐らく自分も参加するZEPP Tokyo2DAYSで発表されるだろう
しかしsumikaはそれすら飛び越えて数年以内に横アリでライブをしているのがはっきり見える
そこにたどり着くには、神奈川出身というのもあって先にパシフィコ横浜でライブを行いそうだが、横アリでワンマンを行うその日、いやそれ以降も我々に日常に魔法をかけていつまでも踊らせてくれ

Next Live is ... androp @ 日比谷野外音楽堂 (2017.10.28.)