昨年の11月頃から始まったACIDMAN初のツーマンツアー最終クール
ファイナルの沖縄には盟友、RIZEがスタンバイしているが、その前に行われるセミファイナルにはスカパラが参加
オオキがスカパラの曲に参加したことはないものの、スカパラの谷中と加藤はオオキの思想を変えACIDMANを今日まで存続させた影の功労者である

ここのところ、メインステージを外れることも多くなってきたACIDMANだが、ZEPP Tokyo規模の大型ライブ会場をソールドアウトさせるのは流石
ただ、この日はいつもに増して早めに入場する方が多い

・Yasei Collective(O.A)
その理由はこの日限定で設立させたOpening Actの存在
ACIDMANと同じ事務所、「FREE STAR」に所属するYasei Collectiveが出演するからである

演奏時間が17:55〜と開場時間中であるため、急いで駆けつけたであろうお客さんも多いなか、時間ぴったりにYasei Collectiveは登場
リリースしたばかりのアルバム「FINE PRODUCTS」から挨拶代わりに、「Interlude-3」を演奏するが、ドラムの松下が「フォロワー2000人しかいない(笑)」と自虐するように最初は様子見が大半

しかしシングルカットもされた「radiotooth」からは一変
ボコーダーを駆使した斎藤のボーカル、タッピング奏法と並行して鍵盤を演奏する中西のパフォーマンスに誰もが魅了されていく

ドラム松下の手数もさることながら何重にも塗り替えられていく風景に「どうすればこんな曲を作れるんだ!?」と唸ってしまう「Quinty」を終えると、

「フォロワー2000人しかいなから5000人に増やしたい(笑)」

と赤裸々に今の心情を松下が話してしまい、観客は大笑い

メンバー紹介も経て時間の関係上「HELLO」がラストだったが、終わった直後観客は「かっこいい」、「凄い」と絶賛の嵐だった
ACIDMANのオオキが「みんなに知ってもらいたくて出した」と後に話したが、オオキの目論見は見事達成

ちなみに肝心のTwitterのフォロー数は3000を越えた(僕もフォローした)

セトリ
Interlude3
radiotooth
Quinty
Hello

・東京スカパラダイスオーケストラ
Yasei Collectiveのライブ時にセッティングが完了していたため、定刻になるとスムーズに始まった先攻のスカパラ

10-FEETのTAKUMAがゲストとして参加した「Samurai Dreamers」がSEとして起用されるなか、谷中をはじめ管楽器を手にするメンバーも含めた9人がお揃いのスーツでステージへ
スカパラは何度かステージで見たことがあるとはいえ、ライブハウスで見るのは初めてなのでこの大所帯ぶりは壮観である

現在、中居正広が出演しているCMに起用中でありメンバーも「久々にヒットした」と語った「Paradise Has No Border」から始まると、代表曲「DOWN BEAT STOMP」を早くも投下
NHKのスポーツテーマソングとしてオンエアされていることもあり、誰もが1度は耳にしているだけにか否応なしに踊ってしまう

メンバー紹介も兼ねた「スキャラバン」で更に高揚させると、

「東京はいいね。みんな楽しそう‼ACIDMANとは大阪のRUSH BALLってフェスでBUMP OF CHICKENの藤くん(藤原)が「谷中さん、オオキ君とは絶対話が合うと思いますよ‼」と紹介されたのがきっかけで出会ったんだけど、オオキ君に「どんな飲み方するの?」って聞いたら、「感動系です‼」と答えて。その後本当に泣き出したからなるほどなと思いました(笑)」

と谷中がACIDMANの出会いとオオキの飲酒スタイルで笑わせつつ、ACIDMANを「ひたすら真っ直ぐに音楽を届ける硬派なバンド」と誉めちぎり
もちろん今から12年前、ACIDMANが解散寸前まで陥った「and world」期のエピソードも触れるが、これはオオキが更なる詳細を明かす

「戦うように楽しんでくれよ‼」の

谷中節が炸裂すれば「Routine Melodies Reprise」に突入
しかしながら流石は世界で適応するバンド
音の厚みが凄い
4人管楽器隊がいるとはいえ、物凄い迫力
そしてインストで楽しそうに踊るオーディエンス
「音楽は国境を越える‼」というタイトルのアルバムをスカパラは先日リリースしたが、近い距離でライブを見たらそれは嘘ではないことが明らか

KEMURIの伊藤ふみおの歌唱パートをメンバー全員で歌う「Pride of Lions」ではアウトロがフィードアウト形式のため、谷中をはじめとするホーン隊が一度抜け、バンドのみが残るのだが曲が終わらず、不思議に思っていたら音を切らさずまさかの「水琴窟 -SUIKINKUTSU- 」へ
切ないメロディーは琴線に触れていくがそれ以上にキーボード、沖の演奏がとにかく凄かった
随所にアレンジを盛り込み、とてつもないスピードで早弾きをするその姿は完全に沖の独壇場だった
その余韻を

「道なき道を乗り越えていこうぜ‼」

と谷中がアップグレードし、「道なき道、反骨の。」は谷中メインボーカルで
Ken Yokoyamaが参加するときだけかと思いきや、不在時でも演奏するのか
健さん不在で出来るのなら「さよならホテル」を是非演奏してほしいけど

最後は仕上げと言わんばかりに怒濤の演奏を繰り広げる「ペドラーズ」
一瞬にして最もインパクトに残る爆音撃だった

ライブ後、周囲にいた方が

「大人の音楽みたいだった」

と評していた

言われてみればスカパラの曲はほぼ歌詞がないインストバンド
だから人によってはジャズと同じ見方をするだろう
でもそれでも日本はおろか、海外でも通用するほどの底力を持っている
それはスカパラの音楽が鳴り出した時、気付いたら踊ってしまっているから

全世界にも通用するこのサウンド
それがスカパラが向かうところ敵なしだと言われる由縁

セトリ
Paradise Has No Border
DOWN BEAT STOMP
スキャラバン
Routine Melodies Reprise
Pride of Lions
水琴窟 -SUIKINKUTSU- 
道なき道、反骨の。
ペドラーズ

・ACIDMAN
スリーピースとはいえ、楽器が多いためか展開にやや時間がかかっていたACIDMAN
ここで見るのは今年2度目

19:30頃にようやく暗転すると、いつもの「最後の国」の満面の手拍子に導かれて登場するやいなや、

「ACIDMANです。初めて見る方もいつも見ている方も1分、1秒楽しみましょう‼」

と宣誓し、いきなりの「World Symphony」で早くもダイバー発生
イントロに合わせて膨大な合いの手が起こる「アイソトープ」と1月のワンマンでやらなかった曲が最初のタームに集中
「アイソトープ」は頻繁に聞くことが出来るが、この合いの手が聞けるのは現場だけ
だからこの曲は一切飽きることがない

同じ事務所のYasei Collectiveをバーターと弄り、出演してくれたスカパラにオオキが感謝を述べるとそこから「River」、「スロウレイン」と懐かしい曲を連発
中でも「スロウレイン」は自分がACIDMANと出会うきっかけを作ってくれた曲である

音楽を聞き始めた頃、どんな音楽があるか知りたくてMUSIC-ON TVで放送されているチャート番組を毎週予約していたのだが、その時に出会ったのがこの曲
歌詞の意味を理解できず、メロディーだけでいいか悪いかを区別した時代にこの曲と遭遇
ACIDMANを本格的に聞き始めた頃、「green chord」で再会するまでかなりの年月を要したが、生で聞ける日が遂に来た
これだけでチケットを払った価値があるといえる

すると今度は「銀河の街」、「世界が終わる夜」とACIDMANらしい死生観が出た曲を連打
終盤に演奏されることが多い「世界が終わる夜」がここで演奏されるのは主催ライブくらいだろう

直後にオオキがこの2曲を続けて演奏した理由を語りつつ、1月のワンマン同様音楽を始めた理由を語りはじめ、

「歌詞を書いて曲を作るのが好きだった。愛の歌は書けなかったけど、宇宙の歌は書けた。けどそこのポンコツ(サトマとイチゴ)は理解してくれなくて。辛いこともあった。ちょうどその時に谷中さん、当時は夜まで飲んでいたから夜中さんって呼んでたけど(笑)。加藤さんが飲みに誘ってくれて。「後ろを振り替える必用なんてない。」「前だけを見ろ。」そう言ってくれて救われました。谷中さん、加藤さん、そしてここにいるみんなが支えてくれたからここにいます。ありがとうございます。」

と谷中も触れていたオオキとの伝説の夜を詳しく話す
この時期は「and world」がリリースされた頃でバンドは解散秒読みになっていた
それはオオキがスリーピースバンドを3人で支えあって活動するバンドと考えていたから
しかしこのバンドの作詞作曲は主にオオキ
自分の負担が日に日に増え、オオキの不満が爆発した結果、バンドは解散の危機に達してしまう
そこに渇を入れたのが谷中と加藤であるが、同時にこのようなアドバイスを送っていたとは
当時のオオキにとっては救いの光そのものだったのだろう

「Yasei Collectiveもスカパラも好きということはインストやってもいいよね?」

というオオキの煽りから11月に行われるACIDMAN主催の音楽フェスのタイトルであり、埼玉、祭など様々な意味を持ち合わせた「彩-SAI-(前編)」へ
だがこの日はそれだけに止まらず「slow view」も演奏
インストを2曲続けて演奏するのは珍しい

インスト攻めの後には恒例、イチゴのMCコーナー
最初は若干噛んでいたが、今日のゲストであるスカパラはリハーサルでは全員衣装が揃ってなかったという初めてリハーサルを見たからこそいえる率直な感想に次いで、

「さっき出てきたYasei Collectiveがフォロワー5000目指すって言ってたけど、久々に地上波の番組(バズリズム)に露出した時、トレンド4位にランクインして、「よっしゃ‼時代来たわ‼」と思ったけど16人しか伸びなかった(笑)だからそんなに期待するな(笑)」

と同じ事務所のYasei Collectiveはしっかり弄る

イチゴがしっかりまとめて次のセクションへ移ろうとするも、イチゴが合図を送ってなかったため最初から
ところが今度はイチゴが合図を送ったものの、先日オオキが見たという「メッセージ」という映画の宣伝を開始
余程気になったのか、この宣伝は本編ラストにも盛り込まれる

「次の曲は「最後の星」という曲です。この曲は地球が最後の星になってしまったとしても、繋がりは消えないという想いをのせて作った歌です。」

と長い前置きからアーティスト写真がどんどん離れていくことをバズリズムで紹介され、話題となった「最後の星」を演奏するとまさかの「アレグロ」
「造花が笑う」、「赤橙」とともにプレデビューシングルでリリースされた名曲をここで演奏したのは20年を振り替える目的があったからだろう
とはいえ演奏機会は前述2曲と比べ物にならないくらい少ないのでもっと演奏すべき

「このまえアラバキで鳳をやらせてもらいました。その時に色んな方とコラボしたんですが、ここでそれをまたやってもいいですか?」

とオオキが煽ると、スカパラから谷中と加藤が登場
まさかの「ある証明」のコラボが実現である

加藤が加わることにより、ただでさえ厚いギターが更に厚みを増すのは言うまでもないが、谷中のサックスは「ある証明」を情熱的に変貌させる
スリーピースの究極体であるこの曲がここまで進化を遂げるとは
恐るべし谷中敦
ちなみにドラムの前には谷中のマイクスタンドがセットされていたが、一度も使われることなく撤収
そのまま突入した「飛光」では文字通り、ダイバーが飛ぶ光の如く雪崩れ込む

最後の「愛を両手に」の前ではやはりオオキによる長い演説が始まるが、

「これからも暗い曲を書き続けます。悲しいんでください。そして何かに気づいてください。
機会ってのはそこら中に落ちいてるけど拾ってないだけで。谷中さんと出会えたのは藤くんのお陰で。藤くんと出会えたのは以前、BUMP OF CHICKENが僕たちのライブを見にZEPPにまで見に来てくれたことがあって。機会を手にするかしないかは皆さん次第だと思います。」

とやはりエモい

「死後の世界はあって、みんなそこにいる。オカルトでごめん、でも宗教じゃない。強いて云えばACIDMAN教、大木教です(観客爆笑)。お布施はいりません。ライブに来てください。支持政党もありません。ライブに来てください。」

と堂本剛よろしく、とうとう宗教ぽくなっていることを自虐する場面もあったが(笑)

そして「愛の両手に」
シングルで聞いたときは微妙だったが、ライブで聞くとまるで別物
それは演出や生というのもあるが、イチゴのドラムが非常にパワフルだからだろう
ライブアルバムが出たら真っ先に聞き込む
それほどの完成度の高さだった

メンバーが戻ってくると、20周年イヤーを総括するシングル「ミレニアム」を告知
相当な自信作であることは間違いないがこの日は行われず
アルバムの制作も進んでいるのだろうか

そして最後はACIDMANのアンコールの象徴、「Your Song」
ダイバーが次々と転がるこの光景は何度見ても素晴らしいし、この曲以外で締められたら違和感しかない
最高のデザートだ

今日のライブはオオキが「過去最高‼」と自画自賛していたように今までで1番良かった
「スロウレイン」が聞けたのもあるが、何より「ある証明」のコラボ、これに尽きる
あの完璧な曲がこんなにも生まれ変わるなんて思ってなかったから
この「ある証明」を越えるのは後にも先にも難しい

ただ今日のライブを見ると、フェスやイベントで呼ばれた際のセットリストに疑問を感じざるを得ない
ACIDMANのセトリは数年前からマンネリ状態になっていた
時間の制約があるとはいえ、いつも同じ曲ばかり
レア曲もなし
これではACIDMANが好きな方ほど別のステージへ行ってしまう
実際、自分もワンマン以外ではACIDMANを見る機会が大幅に減少した 

ACIDMANの盟友、ストレイテナーは細かくセットリストを変更しやTHE BACK HORNはほぼ毎回レア曲を行うことでサプライズを与えている
ツアーではACIDMANと同じくセトリをほぼ変えないUNISON SQUARE GARDENもでフェスでは大きくセトリを変えているし、KEYTALKはほぼ毎回セトリ変更
10-FEETだってフェスは磐石だが、ワンマンはかなりセットリストを入れ換える
フェスやイベントが主体の今、ACIDMANもセットリストを見直すべきではないだろうか
ACIDMANは代表曲が多いし、「波、白く」や「REMIND」みたいな古い曲をやれば絶対ファンも戻ってくる

今日のセトリは、思わず大きな声を挙げてしまうほど懐かしい曲もやっている
そういう曲をフェスやイベントでもやればファンは戻ってくるだろうし、ACIDMAN健在をアピールできる
このツーマンツアーはフェスやイベントの戦略を大きく見直すきっかけにするチャンスだ
11月の主催フェスでいつもと同じセットリストになることだけは避けてほしい

セトリ
World Symphony
アイソトープ
River
スロウレイン
銀河の街
世界が終わる夜
彩-SAI-(前編)
Slow View
最後の星
アレグロ
ある証明 w/谷中敦、加藤隆志 from 東京スカパラダイスオーケストラ
飛光
愛を両手に
(Encore)
Your Song

Next Live is ... THE BACK HORN × MUCC @ CLUB CITTA(2017.5.31.)