サンエル、最新作「ROCK TO THE FUTURE」を引き下げて行う東名阪ワンマンツアー
しかしながら、今月になってボーカルのKo-ichが突如脱退を発表
そのため、このツアーが活動停止前のラストツアーになってしまった

ラストツアーのためか、物販コーナーは尋常ではないくらい長蛇の列
なので早々に退散するが、他のバンドTシャツを来ている方が多く、初見多目の印象
開場直後はガラガラの匂いも感じさせたが、蓋を開けてみれば予想以上に当日券が売れたのかチケットはソールドアウト

場内にはu-yaが制作した自作のリミックス音源が流れており、FACT、OKAMOTO'S、SiMなどに加え、FLOW、藍井エイルなども盛り込まれたボーダレスなリミックスが流れているなか、定刻を15分過ぎた頃にいきなり暗転し、ステージの幕が開きライブがスタート

オープニングは最新作「ROCK TO THE FUTURE」のリード曲「フューチャーメーカー」
初聴時には「サビが弱すぎないか?」と感じたが、生で聞くと「歌詞を強く刻み込ませるためにこうしたのでは?」という新たな解釈が浮かび上がる

Ko-ichが脱退することへの寂しさや悲しみは客席では感じなかったが、多少は存在していたであろうネガティブな感情は問答無用の「Everybody!! Up to You」、「BoomOVER」の流れがあっという間に忘却させてくれる
また、このバンドはラウドロックにカテゴライズされるだけに、ダイバーも次々と上空を遊泳

わずか3曲とはいえ会場は既に灼熱地帯
そんな熱気に包まれた会場に、タオル旋風を巻き起こす「トライ + リライト」で軽やかな風を流し込むと、早くも名曲「REASON」を惜しみ無く叩き込む

しかしながら、このライブは活動停止前最後のワンマンツアー
ボーカルが脱退するということは、今まで見慣れた風景が変わることを意味する
故に、Ko-ichの声で生のサンエルの曲達を聞くことは今後まず叶わない
その感情は、ライブ中は感じないものの、非日常から帰ってきたとき、その寂しさから逃れることはできない

そんな状況ではあるが、

JUNE M(Ba.)「どうもKo-ichです‼」
Ko-ich「いや、ここでやっても意味ないから‼」

とメンバーは予想した以上に、ライブを楽しんでいる
MCも昨年見たとき、ほとんど話さなかったJUNEが担当するなど、メンバー間の雰囲気は悪いとごろか更に深まっている
そんな彼らも今日の下北沢公演の熱気には驚いている様子

JUNEが新作「ROCK TO THE FUTURE」は東京に出てきてから初めて制作したアルバムで、思い入れが強いアルバムと紹介した後は、アルバムの中でも特に思い入れが強い「STEP BY STEP」
これまでのサンエルの作品と比べると、歌詞を重視しており、ラウド要素や激しさはほとんど感じない
「ROCK TO THE FUTURE」の収録曲はこのような構成の曲が大半を占めている

そんなシリアスな雰囲気からサンエルを代表するダンスチューン「MONSTER DiSCO」が始まれば、一面ダンスタイム
ダンスナンバーの元祖「FeelThisMoment」も混ぜつつ、女子男子、JUNE側(下手側)、u-ya側(上手側)の順で合唱の練習をさせると、新型ダンスナンバー「It's Easy Just A Magic」で更に会場を揺らす
この構成、野球に例えるのであれば3・4・5からなるクリーンナップのような豪華さ

するとここでメンバーがステージを去り、u-yaがm-floのVERBALが着けていそうなサングラスをかけながら「-Mirai-(instrumental)(BGM代わりのこの曲をセトリに入れてもいいのだろうか)」を自身の同期セットから流し始めると、昨年のツーマンツアーでここ、下北沢GARDENを訪れたときの話になり、

「電車で下北沢まで来たのはいいんですけど、道がわからない上にiPadの充電が切れていたので、バンドマンの勘を頼りに下北沢GARDENを探したんですけど、道に迷ってたどり着くのに一時間かかりました。色んな人に話を聞いても、「下北沢GARDEN?、分かりませんね…」と言われて、最終的にバンドマンの勘でたどり着きました(笑)」

と自身の下北沢に纏わるエピソードで笑わせる
自分も初めて下北沢にたどり着いたとき、似たような経験をしたので、思わず頷いてしまう

すると、ゲストとして赤タイツを着たおじ神さん(どうみてもドラムのNORI、アルバムジャケットが一面赤だったのにちなんで、バンドのロゴも今回から赤に一新されている)が登場
妙に高いテンションで観客が困惑するなか、豪華なプレゼントを渡すじゃんけん大会を開催
見事、優勝した方にはメンバーのサイン入りバンドTシャツをプレゼントする太っ腹ぶりをみせる
なお、本来は趣味である占いで占う観客を決めるじゃんけん大会であったが、終わってみれば完全な蛇足(笑)
その後、観客にサイリウムを配ると出番を終えたのかステージから退場
ちなみにおじ神さんがステージにいる間、事前に録音された「サザエさん(恐らくNORIが歌唱)」のカバーがBGMとして流れていたのだが、あまりにも下手すぎて所々で笑いも起こる

そのおじ神さんと入れ替わるように登場したのがボーカルのKo-ich
u-yaがアルバムに収録されている「NEVER SAY NEVER」のリミックスに触れたので、それをやる…と思いわせて、先客の「Over The Rainbow」へ
サンエルのジャンルはイージコアに分類されているが、同期と生音を混ぜるのではなく、この曲はDJとボーカルだけのcapsuleスタイル
一応、ギターの音も入っているので、このスタイルでやるのは意外

そのまま名曲「NEVER SAY NEVER」のリミックスをかけると、途中で暗転してJUNEとNORIが合流
破壊力抜群のオリジナルに戻り、感情を爆馳せるかのようにダイバーが無我夢中で泳いでいく

するとまさかの「FIRST IMPACT」
アルバム「LiVERTY」のオープニング曲であり、この曲から直接「Everybody!! Up to You」に移るように編集されているのだが、こんなタイミングで聞けるとは
更に初期のファンにはこれ以上ないほど嬉しい「A HERO FOR YOU」とここに来て、レア曲を連発
かと思えば、「ROCK TO THE FUTURE」の中でもラウド色が特に強い起爆砲「NOVA」を思いきりぶちこむ

すると、Ko-ichが熊本大震災に触れ、

「今日本では大変な起こっていて、サンエルも何か出来ないか考えているところです。でも俺達に一番できることはこうしてみんなと一緒にライブをしていくこと、それが広がっていけばいいなと思います。」

と話し、

「今日来た人が「来てよかったな」と言ってライブハウスを出られますように」

と願いを込めて、至高の名曲「ONE」

「don't lose yourself この先もきっと あなたを救う言葉をずっと忘れないでほしい」

のフレーズは被災されている方に今最も送りたい言葉
心が暗闇に閉ざされたとしても、救いの言葉があれば人は光を見出だすことができる

メジャーに移動した際に、切ないメロディーがイントロに加わった「BRAINWASH」で最後の一暴れを行わせると、ラストはツーマンツアーの際、新曲として初披露されていた「グロリアスデイズ」
当時、生まれたばかりだった雛が大空に羽ばたくように大きく飛躍したこの曲によって、本編は終了

会場は凄まじい熱さになっており、メンバーが再登場するときに、窓一面が曇っているほど

そんななか、アンコールの話題は「ROAD TO ◯◯」
観客が何を目指しているかということを、聞いていく
これは狭いライブハウスだからできること

その中で観客は「神奈川で一番のバンド」、「JUNEさんのようなベーシストになりたい」、「フェスに出たい」と次々に自身の夢を話していくなか、Ko-ichが幼稚園の頃の思い出に触れ、

「幼稚園の頃って手形を粘土で取って残すじゃん。その時に将来の夢をセミって書いた(笑)」

と笑わせるが、話がセミの話から何故か蟹の話しに変化し、セミは海老みたいなもん、食べると美味しいなどどこまでも海老蟹について語り続ける

これに気づいたJUNEがセミの話から「ROAD TO」の話に慌てて戻すと、u-yaが

「俺達はみんなの夢を応援するバンドになりたい」

と話した上で、Ko-ichの合図でようやくアンコールがスタート
Ko-ichが大切な曲と評した「ロストメロディ」では

「届けて届けて この声をその声を なんどもなんども この声をその声を」

で大合唱が起こり、美しい光景が会場全体で共有される
代表曲「ONE」とポジションが被ってしまっているため、フェスではなかなか演奏されないが、名曲であることはいうまでもない

イントロだけで興奮する「As I'm Alive」を経て、

「hello hello hello me show your voice」

でお馴染み、サンエルのライブのラストといえばこれしかない「Just going ahead」で最後にして、この日最多のダイバーが出現して終了

ライブを終えると、記念撮影が行われ寂しさと悲しさ、いわゆるネガティブな感情を覚えさせないまま活動停止前、東京で最後のワンマンライブを終えた

結果的にこのライブで、Ko-ichは脱退の件について一切触れなかった
これは、ツアーファイナルの地元愛知で全てを話すのか
それともGalileo Galilei同様、曲に全ての思いをぶつけたのか
そこが不鮮明なまま、活動停止には入って欲しくない

解散ではなく活動停止前ラストのワンマンなので、バンドそのものは存続する
しかしながら、Ko-ichが不在のサンエルを自分達は受け入れることができるのだろうか?
バンドが再び転がりだしたとしても、そこにいるのは全く新しいサンエルである
つまり、今のサンエルはもう帰ってこない

かつてserial TV dramaのボーカル伊藤(現:another sunnyday)が脱退した後、バンドは新しいボーカル新井(現:T.S.R.T.S)を招いて活動を継続したが、結局彼らは2年も持たず解散してしまった
現在でこそ、山内ボーカルのスタイルが受け入れられたフジファブリックも「LIFE」が出るまでは志村正彦の消失を受け入れられず、今の彼らを受け入れられないという方が多くいた

すなわち、次のボーカルは立ち位置が既に確立されていたKo-ichに変わる存在感、そして前任者の穴を埋められるまでに成長しなければならない
リアルタイムで自分はフジファブリックの山内の成長を見てきたが、新体制になってから行われたツアーで、声が飛んでしまう事態も珍しくなく、ボーカルが安定し始めたのは、2013年からだった
要するに、前任者の穴を埋めることは簡単ではない

やがてサンエルは充電を終え、再び自分達のもとに帰ってくる
その時に生まれ変わったサンエルを受け入れられるか、それとも拒んでしまうのか
ファンは決断を迫られる宿命にある

無論、自分だって今後のサンエルを応援したいが、次に会うときは全く別物のサンエルだと思った方がいい
それでも、サンエルの名曲が表舞台から姿を消すよりかは遥かにマシだ

初めて、彼らの曲(「NEVER SAY NEVER」)を聞いたとき、

「いつもぶつかって悔しくて躓いてたんでしょ? 本当は辛くて逃げたかったんだ」

の歌詞にガツンと心を掴まれ、シャウトやデスボイスを受け入れられるようになった
そして、ラウドロックでこんなにも美しいメロディーを作れるのかと驚愕した

だから、新しいサンエルが始まったとき、しっかり受けとめ彼らをそのまま応援していきたい

ひとまず、気は早いですがKo-ichさんお疲れさまでした
またどこかであなたの活躍を見られることを祈っています

そして、サンエルの皆さん
どんな状況になっても僕は皆さんについていきます

セトリ
フューチャーメイカー
Everybody!! Up to You
BoomOVER
トライ + リライト
REASON
STEP BY STEP
MONSTER DiSCO
FeelThisMoment
It's Easy Just A Magic
-Mirai-(instrumental)
Over The Rainbow
NEVER SAY NEVER(u-ya Remix)
NEVER SAY NEVER
FIRST IMPACT
A HERO FOR YOU
NOVA
ONE
BRAINWASH(LiVERTY ver.)
グロリアスデイズ
(ENCORE)
ロストメロディ
As I'm Alive
Just going ahead