(前編から続きます)

ここから以下は、

ある程度、アンデルセンの作品のネタバレにもなりますので、

もし気になる方は、「青空文庫 アンデルセン もみの木」で検索し、

前もって、

児童文学作者および訳者として、

数々の作品が知られている、

楠山正雄の訳をご覧いただければと思います

 

一応混乱を避けるため、この箇所では、

主人公を本文に書いてある、もみの木でなく、

若い木と呼びたいと思います

森で、木こりへの恐怖と、

一方で外の世界へ連出してもらう憧れの中で、

若い木は心が揺れて、

優しく諭してくれた日の光にも、耳を貸しません

それが、まだ若い木であった、ある冬に切倒されて•••

 

アンデルセンの作品には、

いくつも、

子どものうちに死んで行く主人公の話が出て来ます

夢があっても叶うことなく、

幸せを感じられる時も一瞬で、

厳しい現実の下で命を奪われて行く

その1人として、

それも他の物語に増して、若い木が、

救いのない終わり方をする作品です

 

そこには19世紀デンマークの、

どうしようもない貧困の中で、

命を奪われるしかない人々の立場から、

アンデルセンが童話を書いたことと、

強くつながっているのでしょう

しかし真摯なキリスト教信仰の中で、

たとえ切ない最期であっても、

その魂は救われて行くという思いが込められている

 

多くの作品の最後には、

そう思わせる表現があるのですが、

この話では、そのようなところさえない

終わり方なのです

 

豊かなクリスマスツリーの森があり、

そこから毎年多くの人々が木を切倒して来て、

キリスト教の最大の祭の、

短い時間の華麗な飾りとして使捨てている

 

クリスマスツリーこそ、

クリスマスの最大の犠牲者の1人として、

いつも命を奪われている存在

ここには、「マッチ売りの少女」に通ずる、

アンデルセンの心の中の、どうしようもない怒りが、

静かに語られているのではないか

クリスマスは、誰のために祝うのか

トウヒ類の姿を思浮かべる時、

一緒に思出されるのです

 

トウヒ類は、若木の間は根が弱いようで、

強風に弱く、台風等の風が吹くと、

倒れなくても根が傷ついて、

しばしば枯死してしまうことがあります

また、先端の樹冠部分が折れたりすると、

それからは、ほとんど成長しません

 

日本の気候にはもう1つ合わず、

うまく育たなくて、

園芸屋さんに新しく植替えてもらうことも、

よくあるそうです

つまり用無しとなった古い木は、

アンデルセンの物語の、若い木のように•••(2025.12)