以前よりは減っているとは感じますが、

ハマチやサーモン等の養殖魚を、

抗生物質やダイオキシン類が、大量に入っているから怖い

大っぴらには言わないけれど、本音では、

このように考えている人は、それなりにおられるようです

 

あるいは、エビ始め熱帯域の養殖は、上記薬物に加え、

海洋汚染と、特に多様な水産生物の幼魚期の生息域としての、

マングローブ林伐採が、現地の水産業を破壊するから食べない

このような意識を持つ人も、おられます

これらは確かに、説得力を持つ課題です

 

しかしその上で、地球の人口増加と環境悪化に対する、

持続可能な食物生産の手段として、国連FAO等から、

水産養殖が今も有望とされていることは、

健康や環境を大切に生きて行きたいと考えるからこそ、

外せないことと思います

 

昔、およそ40年ほど前ですが、

水産学に関わっていることもあり、時々、

本当に養殖魚は怖くないの?との、ざっくりした問いを受けました

その時の答えは、

食料として、多くを狩猟採集に頼っているのは、漁業だけ

飼育•栽培なしに、ジビエと野草だけで世界の人口を賄うのは不可能

畜産物•農作物とも、投薬,農薬問題を中心に、

様々な問題への対策を重ねた結果が、今の農業

 

水産養殖業でも同じで、長い目で見ると、

課題と取組みながら、安全性保って盛んにするしか、

人口が急激に増えつつある人類が、

皆で飢えずに生きて行く道はないはず

このように話すことが、度々でした

 

水産養殖の最大の利点は、

成長するための餌が少ないことです

現在の飼育法で、

豚肉1kgを得るための餌の重量が、平均6.5kg

対して、例えばノルウェーサーモン養殖では、

骨,内臓込みですが、1kg得るためには、餌1.2kgと、

非常に効率良く、飼料から食糧に転換可能

もちろん、どちらも種ごとに比率に違いがありますが、

哺乳類,鳥類に対し、魚介類は、

重量ベースでの効率の差は圧倒的です

 

その最大の理由は、

大部分変温動物である水産生物は、

体温調節に費やすエネルギーが、

ほぼ0と言って良い少なさのため、

食べたエネルギーが大部分、体の成長に用いられるからです

 

そして、水の管理費と漁船の燃料費とで、

エネルギー消費は相殺です

養殖魚こそ、効率的に動物性タンパク質を作り出すことに、

最も適した生き物なのです

 

もう1つの点、未開発魚種の多さもあります

上記の(ノルウェー)サーモンは、

英語でアトランティックサーモン、和名で言えば、

タイセイヨウサケ(サケ目サケ科タイセイヨウサケ属)

その海中または陸上での完全養殖技術が、

80年代ノルウェーで実用化したことに始まります

 

これにより、アニサキス等寄生虫の害を防ぎ、

サケの刺身が、安全に食べられるようになり、

瞬く間に、ほぼ0から、世界的な大産業になりました

今では世界中で、サーモンとは、

タイセイヨウサケ、および近縁種との交配種の、完全養殖魚を指し、

日本でも、サケとサーモンは、違った食品として流通します

 

日本市場への登場が突然的、大々的だったため、

かつてハマチ•ブリ養殖の害が問題となった記憶から、

サーモンでも、噂が一人歩きしたところがあるようです

 

幸いなことに、ノルウェーはある意味日本以上の水産王国で、

漁業従事者の収入も高く、また沿岸にフィヨルドという、

水深が深くて海水の循環が大きく、

そして波の静かな内湾が、多数存在する好環境のため、

過密な環境を避けての飼育を始め易いという、絶好の条件

しかも、健康福祉や環境保護に非常に熱心な北欧地域でもあり、

消費者の厳しい目があればこその、

安全なサーモンの大量な生産開始となりました

 

現在のところ、そのノルウェーサーモンに価格で対抗できるのは、

同じくフィヨルドの発達した、北欧グリーンランドおよび、

南米チリ(こちらの諸問題については、要検証)くらいです

今では当たり前に大量に食べられている生サーモンは、

ほんの30数年前に新しく生まれた、

世界有数の高級魚市場というわけです

 

サーモン養殖技術は、日本のサクラマス(同タイヘイヨウサケ属)および、

サケ科各種やそれらの交配種が、日本以外含め、

多種の養殖ブランドを産み出す、原動力になっています

サーモンでも見られた水産養殖のもう1つの強みは、

魚介類の種類数の圧倒的な多さです

 

今まで知られていなかった、味の良い魚の、

それぞれの生育環境を生かした養殖技術が、

今後も実用化され続けることでしょう

特に日本においては、各県に公的な、仔稚魚を育て放流し、

親魚の資源量を増やす、栽培漁業施設が多数あり、

多くの有用魚種の飼育技術が、長年蓄積されています

そこで得た技術は、近縁種についても含め、

多くの魚種での、産業化できる価格での養殖の技術に役立つ、

大切な基礎研究成果と言えます

 

サーモンやマグロでもそうであるように、

美味しい魚が安く大量にあれば、

今まで知られていなくても、絶対に売れます

昔と好まれる味の傾向が変わり、

かつては敬遠された、脂の多い魚(の部位)が、

とろサーモン,とろサバ,とろカツオのように、

より好まれるようになりました

これはどうしても運動不足で、脂を蓄えがちの養殖魚の特徴が、

以前より利点となることにつながります

 

そして高級魚ブランドになることで、

品質管理と環境保護に努めることが、

ブランド向上の武器に変わります

沢山の種類が少量ずつ流通する、水産業だからこそ、

穀物や畜肉では難しい、

日本に適した、小規模飼育が不利にならない生産体制を、

作り続けられると、思われるのです

日常から安全な養殖魚を贔屓する、

消費者の意識が高まれば、

たぶん、世界中皆で徐々に、幸せになるのです(2024.9)