神戸で生まれた私は、

家族で海水浴に行くのは、いつも須磨海水浴場でした

私はいつも親にせがみ、

(今の2代前の施設の)市立須磨水族館とセットでした

国鉄須磨駅まで電車に乗り、

そこから神戸市電に乗替え、

なかなか楽しいプチ旅行でした

 

その夏の須磨海水浴場で、親はあまり、

浜茶屋等での食べ物を買ってくれなかったのですが、

その中で、ねだれば良く食べさせてくれた例外が、

サザエの壺焼きでした

 

その味は、多分、

醤油を、もしかしたら酒で薄め、

サザエ自体から出るエキスを生かした、

塩辛さを抑えた、上品なものでした

 

爪楊枝を刺入れて、貝を左回りにグルグル回し、

切れずにカタツムリのような肝の先まで出せれば大勝利、

途中で切れても、肝が上がってきていたら、

うまく差し直せればなんとか残りを引出せる、

ぶきっちょな子どもでも、それなりに成功率の低くない、

後の時代のクレーンゲームより、

もっとテクニックを誇れる思いのするイベント

そしてその時取ったサザエの蓋は、

持って帰ってひと夏勉強机を彩る戦利品

苦くて磯臭さが強い肝は、

多分最初は苦手だったけれど、

闘いの戦利品として味わう内、いつか忘れられない味に

夏の思い出です

 

そのサザエ料理ですが、

どこで食べたかをどうしても思出せないのですが、

おそらく40年以上前に、神戸あたりで食べた料理です

多分、同じく壺焼きという名だったかもしれません

殻に、刻んだサザエの身と三つ葉、

そして小さく刻んだ少しの竹輪を入れ、

そこに澄まし汁を注いで壺焼きのように焼くのです

1個1個の殻の中に入るのは少量ですが、

普通の壺焼きでもつい、しないではいられない、

殻をグルグル回して、汁を最後まで飲み干すと、

重厚な、そして醤油辛くない、サザエのエキスを味わえるのです

 

そのサザエですが、

昔から外界の荒海では角あり、

穏やかな内海では角なしの丸い形、

子どものころ見ていた図鑑等ではそう書いていたけれど、

神戸に住んでいた実感としては、

両方当たり前にあったのです

これは穏やかな瀬戸内海,大阪湾と、

その中で急流と言える明石海峡,鳴門海峡の、

様々な海況の海での魚介類の、

生育環境の違いかと思っていました

今は、遺伝子検査から否定された説です

 

サザエの分類学的位置は、

古腹足目リュウテンサザエ科リュウテン属

(ここらへんの学名和訳の混沌は、何とかすべきです)の、

日本列島唯一の種

今のところ、報告されている、

最も近縁の日本列島沿岸で採れる種は

ニシとかニナとか、あるいはベーゴマになるべー貝、

単に貝とかの雑魚扱いながら、

日本沿岸の浜辺で採集して調理する方々の、隠れた絶品食材、

スガイ(同科オオベソスガイ属)です

 

そのスガイは、浜のばばちゃんたち(尊称)が、

長い年月、それこそ日本の暖流の海水が届く海で、

採集と調理を重ねてきた食材

にも関わらず、そこには、スガイの刺身はありません

生や、酢締めを食べない

これには、何かあるはずです

 

スガイのことはともかく、

サザエは、生で刺身でも食べます

しかし、高級な料理屋はともかく、

あちこち全国のスーパーでも、サザエの刺身が、

夏季には、売られているのは、あまり見ません

サザエが、特定の食中毒病原体と、

関連深いという話はないので、取越し苦労かもしれません

しかし鮮度が落ちると、

食中毒の恐れが大きいとも言われます

家庭で生で食べるときは、特に夏は、安心できる魚屋から買い、

必ずその日に食べることをおすすめします

 

貝類の中でも大柄で、漁獲量が多いサザエは、

古くから食肉の代用品として、沿岸地域で用いられてきました

その代表ともいえるのが、サザエカレーです

かつては全国的にあったと聞きますが、

サザエの魚価が高まった近年は、

高級料理化しているようです

まあ、あちこちのご当地レトルトカレーで食べられますが、

昔の家庭用理として懐かしむ人も、結構います

全国どこでもだったかは不明ですが、

サザエカレー調理のミソは、

玉ネギと一緒に肝をじっくり炒めることだそうです

 

あと、余談を3つほど①漫画「サザエさん」は、

原作の長谷川町子が戦争中疎開していた福岡で、

新聞連載執筆依頼を受けて、適当に浜辺で名付けたとのこと

②おはぎ,あんこの、サザエ食品は、その「サザエさん」からネーミング

貝類のサザエとは全く無関係

③サザエの学名は、

中国大陸沿岸のナンカイサザエ(同属)と混乱していて、

かつて誰も記載していなかったことがつい最近判明し、

これほどの重要種なのに、7年前、本当に初めて新種記載されました(2024.7)