この何年か、海水温上昇により、

九州南部や伊豆諸島を中心に、

南方系の大型外洋性サメの報告例が増えています

つい先月2024.6には、鹿児島湾で、

これまで奄美諸島が、生息域の北限とされていたメジロザメ

(メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属)が、

養殖生け簀等に被害を与えているとの、ニュース記事がありました

 

メジロザメは全長(サメ類は尾鰭が長く特徴的なため、尾骨後端までの体長でなく、

尾鰭後端までの全長で示すことが多いようです)3m以下、

第1背鰭が大きく、

背側から腹側にかけ、徐々に灰色から白色に変わる体色

大きな背鰭を立てて泳ぐ姿は、まるで潜水艦のようです

 

もしこの背鰭が、海面から出て迫ってきたら、

さぞ恐ろしく感じるかとも思われますが、

メジロザメは海面近くを泳ぐことはまずなく、

海底近く、餌を探しながら泳ぎ回る、比較的大人しい生態です

 

そのメジロザメを報じた記事では、専門家の話で、

メジロザメよりも、むしろシュモクザメに気をつけてとの言葉がありました

日本近海で良く見られるシュモクザメは、

アカシュモクザメ,シロシュモクザメの2種

(同シュモクザメ科シュモクザメ属)です

目が左右に飛び出た特徴的な姿で、

眼柄の中央前端が、少し窪んでいる方がアカシュモクザメ、

窪んでいないのがシロシュモクザメです

共に、全長4-6mに達します

 

なお、アカシュモクザメは、

比較すると生息数が少なく、漁獲対象となっていませんが、

外見は眼柄以外ほとんど区別がつかず、

混同された例もあるかもしれません

アカというのは、

解体した身がシロシュモクザメより赤味がかっていることを指します

共にサメ類の中でも、美味しいとされ、

乱獲により、絶滅が危惧されています

 

海岸の浅瀬まで入り込む習性で、

海水浴場で時折発見され、大騒ぎになることも良くある魚ですが、

ヒトを襲った例は報告されていません

その意味では、ヒト側の警戒の薄さも相まって、

イルカ類の方が、よっぽど危険です

前記,専門家のコメントは、少々不用意かと思われます

 

その他、目が鋭く、鼻先が側偏するため横から見ると尖って見える上、

鋭く長い歯がいつも半開きの口から覗く、

獰猛な顔つきで恐れられるほどの姿の、

シロワニ(ネズミザメ目シロワニ科シロワニ属)も、

全長3mほどにまでなる大型のサメで、

よく海岸近くに、姿を現わします

最凶と言われ、最もヒトを襲った記録のあるホホジロザメに次いで、

恐ろしそうな風貌と評されることが多く、

「人食いザメ」として、

良く映像,画像に用いられるサメです

 

しかしこのシロワニは、

メジロザメやシュモクザメ類に増して、

とりわけおとなしい性格のサメとして知られ、

主に底生生物を、尖った歯でフォークのように、

掬い取って食べる生態です

特にシロワニは、他のサメ以上に、見かけによらず、

安全性の高いサメとして、逆に覚えておくと良い魚なのです

 

過去、人を襲った記録が多く残るサメは、

これら、よく海岸近くで目に触れるサメではありません

世界中で特に死亡事件の多いサメは、

ホホジロザメ,イタチザメ,オオメジロザメの順に、

これら3種が圧倒的に、事故件数が多いようです

しかしホホジロザメ(ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属)

イタチザメ(ネズミザメ目イタチザメ科イタチザメ属)は、

非常に狂暴ですが、

それら以上に獰猛との説がある、

アオザメ(ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ属)、

ヨゴレ(メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属)も含め、

海岸近くまで寄ってくることは、まずありません

 

映画『ジョーズ』のモデルはホホジロザメですが、

これらのサメが、海岸すぐ近くで人を襲うことはまずなく、

沖合でダイビングやサーフィンをする人が、

現地のサメの生態に詳しい人の注意をよく聞くことで、

被害は減らせるでしょう

 

しかしただ1種、オオメジロザメ(メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属)だけは、

沿岸の汽水域を好み、

河川や上流の淡水の湖まで進出することもあり、

魚や水生生物はもちろん、水辺に来た陸上動物も襲うという、

恐ろしい生態を持つサメです

 

体の背側は薄灰色で、腹側は白色、

体は全体に丸く、全長4mまで成長する、

かなり巨大になる種です

前記の温厚なメジロザメと、大きさを除き、

姿は似ており、

第1背鰭が比較的小さい以外は、余り見分けは付きません

これまで南西諸島以南までしか知られていませんでしたが、

最近、宮崎県大淀川河口で、捕獲例が複数あり、

温暖化により生息域が北上していると考えられます

とりあえず今は、南西諸島以南までが、

気をつければよい地域になります

 

以上の通り、温暖化で分布域が変わらない限り、

南西諸島を除き、海岸でサメに襲われる可能性は、

ほぼないと言って良いでしょう

 

なお言わずもがなというか、ある意味どの動物にも当てはまりますが、

不必要に触る、近づく、あるいは近くで驚かすなど、

動物が身の危険を感じる行為をすれば、

命を守るための反撃にあうことがあります

安全性が高いとされるサメ類でも、これは同じです(2024.7)