(前編から続く)
七十二候や雑節の半夏生は、ハンゲ=カラスビシャクにちなんだものですが、
ややこしいことに、
同じ時期に見られる、ハンゲショウという植物も、
存在しています
こちらはコショウ目ドクダミ科ハンゲショウ属になります
日本列島でドクダミ科に属する植物は、
ドクダミ(ドクダミ属)とハンゲショウの2種のみです
ドクダミと同じく、地下茎で広がって群生する多年草です
ドクダミで、1つの花のように見える部分は、
サトイモ類のような、一見おしべ雌しべに見える、
真ん中の花序と、花弁に見える葉である苞ですが、
ハンゲショウでは、その苞はありません
その代わり、花が咲く時期になると、
おそらく花弁の役を代行して虫を引寄せるため、
花序の近くの葉が白く変わります
そして花が終わると、葉は再び緑に戻る、
少し珍しい生活史を持ちます
その花弁または苞の役目を担い、白くなった際、
葉先に緑色が残ることが多く、
そこからカタシロソウ(片白草),サンパクソウ(三白草)という、
こちらもなかなか趣のある別名があります
なお、ドクダミに近縁とはいえ、暖かい地域の湿地などに群生し、
高さ1mに達する、なかなか壮観な姿です
さらに言えば、花序はドクダミよりはるかに長く、
大きく成長し、先が垂れ下ることでもあり、
少しイネの穂に似た姿です
その意味では、花序について、
細長く上に伸びて、先端が垂れ下るという点では、
偶然、ハンゲに似ていると言えるでしょうか
逆にドクダミには、姿はあまり似ていないようです
(ドクダミと同じように匂いますが)
ただ、名前がハンゲと紛らわしいことに加え、
元々ハンゲが咲く時期だから、
ハンゲショウという季節の名が付けられたのですから、
そのハンゲショウに咲くのでハンゲショウというのは、
綺麗な名とはいえ、ややこしさ、この上もありません
けっこう半化粧と漢字をあてていることも多いようですが、
開花時期が半夏生の頃でもあり、
その半夏生という名は、前編で述べたように、
中国由来の長い歴史の中にある言葉です
半化粧は、おそらく後付けの、語呂合わせの当て字でしょう
加えて、こちらドクダミ科のハンゲショウも、
ハンゲと同じく生薬になり、
そちらとは異なって、解熱および利尿作用の効能があります
ドクダミも利尿作用のある生薬になりますから、
その意味でも、ドクダミの親戚といえます
ハンゲショウを生薬とする際は、三白草と呼ぶのが通常ですが、
薬品会社等で紹介しているサイトを見てみると、
和名ハンゲショウとだけ記しているものも多いようです
これでは、かえってハンゲと混同されることもあるのではと、
少なからず、心配でもあります
生薬ゆえ、患者が自己判断で間違えることも、
有得ない話ではありません
一応、ハンゲは地下茎のみが、生薬に用いられるのに対し、
ハンゲショウでは、地下茎はあまり生薬に使わず、
逆に、それ以外全部が生薬になるそうです
いろいろ含めて、和名をサンパクソウに変えた方が、
間違いがなく、良いような気がします
半夏生は匂いがあるとはいえ、
大きく、そして群生でなく1株の方が、
美しい姿のようですから、
観賞用に鉢植えで栽培されることも多いようです
寒さと乾燥さえ年間通じて避ければ、
割合に丈夫で病虫害にも強く、
育てるのはそれほど難しいものではないとのこと
しかし湿地に住む、多くの生物と同じく、
近年ハンゲショウも、生育数をかなり減らしているようで、
東京や大阪はじめ、いくつもの都府県で、
絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されています
ハンゲショウ群生がなくなれば、
共生関係にあった多くの生物を、
地域絶滅に追いやるでしょう
野生のものを勝手に採取することは、
非常に問題があると考えるべきでしょう
ところで今回の余談として、
この半夏生に、タコを食べるという風習は、
いつ頃、なぜ始まったか調べ始めていますが、よく分りません
(タコが立つと根を張るようとか、タウリンで疲労回復とか、後付けとしか…)
明石では、半夏生のタコを宣伝するポスターも作られ、
たくさん消費してもらおうとの雰囲気もありますが、
本当に昔から、明石で結付いていたのかどうか、
可能性は高くないのではと、思っています
節分の恵方巻と同じように半夏生にタコを食べるのも、
元は狭い大阪だけの風習だったのが、
商魂たくましい大阪人によって、
最近になって無理やりに、関西全体の文化のように、
宣伝され、押付けられているだけではないのだろうか
きちんと確認しないで、いい加減に書いてはいけないと思い、
今回はあまり触れません
関西近辺の、半夏生の食べ物の風習としては、
福井県越前の山間地での焼き鯖、
そして香川県のうどんが、
古くから知られているそうです
こちらは地元発の情報で、決してウソとは言えないでしょうが、
どちらも、地元では名産として年間通じて、
たくさん食べられているものです
推測に過ぎませんが、
「半夏生にはいつもの定番の物を食べる」、
つまり折角の農作業の休みの時に、
わざわざ特別なことをして、しんどい思いをしない、
という文化が、昔からあったのかもしれません
あえてその意味で言うならば、
明石で半夏生の時期に、
春-夏に漁獲量の多いマダコ(頭足綱タコ(八腕)目マダコ科マダコ属)
を重んじる文化があったとしても、
不思議ではないことになりますが、
果たしてどうなのでしょうか(2024.6)
