今、日本で一般的に言われている半夏生とは、

7/2頃(今年(2024)は7/1)からの、5日間にあたる、雑節の1つのことです

雑節とは、あまり知られていない名ですが、

(春の)節分や八十八夜,土用,彼岸,二百十日など、

古代中国由来の、季節を区切る二十四節気,七十二候とは別の、

日本の気候や農作業の目安となる、多くの人々に用いられてきた、

いずれも良く知られてきた、季節の節目を指すものです

 

その雑節の中で、半夏生(はんげしょう)は、

伝統的には、夏至から11-16日目にあたります

今年(2024)は、夏至が6/21なので、

半夏生は7/1-5となります

 

紛らわしいのは、

七十二候でも半夏生があり、

こちらは、はんげしょうぶ、と読むのです

七十二候では、夏至から11日目の当日のみを指します

元々半夏生が定められた、中国大陸に梅雨はありませんし、

日本で偶然時期が重なったため、

半夏生に梅雨のイメージが重なったと考えられます

 

なお、二十四節気七十二候は、元々中国文化圏の、

旧暦、つまり太陰太陽暦に基づいているため、

旧暦での春分,秋分と、

太陽暦に従っての、昼夜が等しい日とが、

ズレてしまう年になることが、多くありました

 

そこで、現在の日本では、

国立天文台が(もちろん太陽暦(新暦)で)責任を持っています、

天文学的に春分=春の昼夜が等しい日の黄道(太陽の通る位置)を、

黄経0度と定めて基準とし、

夏至=90度,秋分=180度,冬至=270度として、

二十四節気七十二候の日を定めることになっています

 

その中で、七十二候でのはんげしょうぶ=黄経100度の日と定め、

雑節のはんげしょう=はんげしょうぶから始まる5日間と、

一応太陽暦で混乱しない形として、定められています

 

昔から、半夏生を過ぎて田植えをすると、

収穫量が激減するとされてきたので、

雑節として覚えるに加え、地域によっては、

半夏生に田や畑に入ると、

祟りで凶作になるとされてきました

逆説的に、半夏生は、農民にとっての、

貴重な農繁期中の休暇となってきたようです

 

もっとも、雑節自体、

関西の気候を基準として成立してきたこともあり、

関西から遠ざかるほど、土地土地の実際の気候と合いません

春分等はともかく、

雑節の半夏生が、主に関西で重視されている、

理由でもあるでしょう

 

この半夏生という言葉は、

中日共通で、半夏が生える(目立つ)という意味になります

ハンゲとは、この時期に生えるというか、

花茎が長く伸びて花をつける、

農地の脇でこの時期に目立つ草でもある、

ハンゲ(中日とも正式にはカラスビシャク(烏柄杓))の花から来ています

この和名カラスビシャクは、オモダカ目サトイモ科ハンゲ属に属します

 

一応、花のように見える部分は、

先日ミズバショウやスカンクキャベツの話でも紹介した、

仏炎苞という、サトイモ科植物によくみられる、

花序(集合花)を守る、仏像の光背のような葉です

 

10㎝にもなる花茎の先の花序の先端が、

更に細長く苞の外に伸びるという、印象的な姿です

名のあまり知られていない雑草ながら、

見た記憶のある方も多いのではないでしょうか

 

これが一見、小さく細長い柄杓のように見えることから、

カラスビシャクと名付けられています

その緑の花が見られるのがこの時期で、

別名ハンゲが目立つ時期だから、半夏生というわけです

小さな花ですが、沢山のムカゴを付け、

それが落ちたり、動物に運ばれて繁殖します

また地下茎(根茎)で広がり、駆除が困難な農家にとっての困りものですが、

この根茎は漢方の生薬として、ホモゲンチジン酸という、

吐き気や痰を抑えたり、コレステロールを抑える効能を持っています

その意味で、昔から身近な植物であったことが、

暦にまで取上げられる理由なのでしょう

 

ハンゲ属は中国原産の9種が報告され、

そのうちニオイハンゲは、園芸植物から野生化したものです

その他、日本では、平安期以前に帰化植物となったと思われる、

カラスビシャクとオオハンゲが、野生種として見られます

(後編に続く)(2024.6)