最近、用事で岐阜東濃地方・恵那市近辺に行く機会があり、

その帰りに、近くの中濃地方・坂祝町にも寄りました

すぐ近くとは言えませんが、

その際に利用した、長良川鉄道の最寄り駅のその先の、

沿線に美濃市があるので、

時間があれば行きたいと思っていました

絶滅危惧種ウシモツゴの生息地を、

1度見てみたいと考えたからです

 

そこは美しい水環境の風景ではないそうですが、

実際にどのような、一見「さえない」水域で、

ウシモツゴが生残っているのか、

かなり興味があったのです

(ただし、密漁防止のため、

簡単には生息地が分らないように、

行政や保護団体は注意しているそうです)

 

実際には時間が取れず、叶いませんでしたが、

そこで見たいと思っていたのは、

ウシモツゴ(コイ目コイ科モツゴ属)の生息する、

ため池でした

日本産モツゴ属には、

東アジア沿岸域に広く生息するモツゴ、

東日本に生息する日本固有種シナイモツゴと共に、

濃尾平野・木曽三川流域の固有種であるウシモツゴが、

生息しています

 

モツゴ属魚類はいずれも、

清流というよりは、中-下流域の、

どちらかと言えば濁った湖沼はじめ、止水域を生息域とし、

汚濁には比較的強い魚です

 

しかし、近年、河川や用水路の改修や、

沼やため池の、腐食泥の浚渫による水質浄化が進み、

かえってモツゴ類の生息には向かない環境になっています

 

加えて、ブラックバス等外来魚の食害も深刻であり、

さらに言えば、アユ稚魚放流に伴い移入したモツゴが、

ウシモツゴやシナイモツゴを圧迫するという事態も起こっています

そのため、環境省のレッドリストで、

ウシモツゴ,シナイモツゴは、

絶滅危惧ⅠA種=「絶滅寸前」という、

「絶滅」「野生絶滅」に次ぐ、

最大の危機にある種として指定されています

 

この3種は外見上の区別がつき難く、

モツゴの側線が完全、それに対し他2種は不完全、

という点しかはっきりした違いはありません

ただ、遺伝子分析では別種とされ、

特にウシモツゴは、近年までシナイモツゴの亜種とされていたところ、

最近になって、完全に別種であることが判明しました

絶滅の恐れの厳しいウシモツゴは、

もしかしたら、

種として分類される前に、

絶滅してもおかしくなかったわけです

 

なお、コイ科カマツカ亜科に低まれる、

モツゴ属や、カマツカ属,ニゴイ属,モロコ属は、

いずれも細長く、また、

頭から背鰭起点にかけて直線的に太くなり、

その後同じく直線的に細くなるという、

非常に似た体型で、特に牛らしいと言えず、

なぜウシモツゴに「ウシ」の名がついているのか、

一見分り難くなっています

 

実は岐阜県南部には、

「牛」とつく地名が多く、

いずれも、水害の危険性が高い土地だそうです

ウシは水田等、水辺を好む生態なので、

洪水時、水の溜まり易い地名という、

解釈が語られていますが、

全国的にはあまり当てはまらないかもしれず、

もう一つよく分りません

 

ただ、岐阜県南部と言えば、

昔から輪中が有名な、

長良川中流域に当たるので、

確かに、水が付きやすい場所のことを、

「ウシ○○」と呼び、

そこらあたりで元々良く見かけた魚ゆえ、

ウシモツゴと呼んだのかもしれません

 

岐阜県内でも一部地域では、

ウシモツゴを単に「ウシ」と呼ぶところがあり、

歴史的に水害を繰返してきた長良川流域で、

何度洪水に流されても帰って来る、

水害と闘う人間の手本となるような小魚として、

「ウシ」の顔の魚として、

親しまれてきたのかもしれません

実際、1960年代ごろまでは、

濃尾平野で日常的によく見られる、

代表的な魚だったようです

 

それだけに「ウシ」が絶滅するのは、

大変に残念なことです

美濃市等の池では、

協力者が家庭でウシモツゴを飼育し、

野生に帰す事業をずっと続けているそうです

天然記念物として扱われることもない、

地味な小魚ですが、

どうかこれからも、人と共存していってほしいと願っています

 

なお、ウシモツゴは長年、

雑魚扱いでもありましたが、

甘露煮や唐揚げ等、

モロコ類と同じく、結構美味な魚でもあります

モツゴと間違えて、

獲りつくさないよう、注意が必要な魚です(2023.9)