少し前に、「美味しいイラブチャーの中の殺し屋」という題で、
アオブダイ(ブダイ科ブダイ属)には、
猛毒バリトキシンを持つものがあり、
絶対食べてはいけない、と言う話を書きました
その時には、
資料を調べて特に出てこなかったため、
アオブダイ以外は魚毒を持たないと、
書いてしまいましたが、
なんとなく気になり、確認すると、
重要なことを抜かしていました
サンゴ礁域はじめ、南洋の魚類に広く見られる、
シガテラ毒による食中毒です
どのような経緯が分らない、
オニダルマオコゼの持つストナストキシンを別として、
バリトキシン,テトロドトキシン,サキトキシン等々、
魚類の体内に持つ毒は大部分、
餌のプランクトンや刺胞動物等由来の毒が、
生態系上位の捕食動物の中で、
生物濃縮によって蓄積したものです
その食中毒を引起こす魚毒の中で、
最も被害が多いのがシガテラ=シガトキシン中毒です
有名なところで、
オニカマス,バラハタ,バラフエダイ等フエダイ属,
カスミアジ等ギンガメアジ属,ウツボ,イシガキダイ
これらが、多くシガテラ食中毒を起こします
餌生物由来(シガテラ毒では渦鞭毛藻類)の、
毒性物質により、
神経症状による温度感覚異常,めまい,筋肉痛による脱力,筋肉痛
消化器系の嘔吐はじめ諸症状、および循環器系の血圧低下,徐脈等、
広範囲に症状が出ることが特徴です
後遺症に長期間苦しむ人もいます
シガテラ中毒は致死率が少ないながらも、
感染症例が多いのが特徴です
これは、上記の広く知られた魚種以外も、
1説には400種以上と言われる、
広範囲の、特に温暖な海域の魚から報告されている、
ある意味、どの魚から検出されてもおかしくない、
厄介な魚毒と言えるものなのです
その報告例をよく調べたら、
ブダイ科のナンヨウブダイが含まれていました
ナンヨウブダイは、最近どうやら、
アオブダイ属からハゲブダイ属に分類群が移ったようなのですが、
前回取上げたアオブダイと非常に紛らわしく、
口に歯板に加え犬歯がある
尾鰭後端が截形(真直ぐ)でなく上下端が細長く伸びる
以上の違いで区別できますが、
非常に似た姿です
なお、共に雌性先熟の性転換をし、
雄の額が盛上がるところも同じであり、
さらに言えば、色彩の違いは一応あるけれど、
両種とも色彩変異が大きいと言われているので、
色や模様、あるいは体型からの区別は、
あまり信用しない方がよいかと思います
そのアオブダイと紛らわしいナンヨウブダイも、
少数とはいえ、
シガテラ食中毒例が報告されているので、
アオブダイに似た魚は、
全て食べない、とする方が、
これらのグループを見慣れていない人は、
安全かも知れません
アオブダイ以外は、
全く安全と思込むのは危険です
なおシガテラ毒は、
魚種によって有毒部位に差はありますが、
内臓に毒を持つものがかなり多いとのことで、
サンゴ礁域の生息する魚は原則、
内臓を食べてはいけない、ということを、
注意する専門家も多いと聞きます
ナンヨウブダイも同じですし、
もしかしたら、報告されていないだけで、
他のブダイ科魚類でも、シガテラ毒が全く発生しないとは、
考えない方がよさそうです
一応シガテラ毒は南方系の魚に限定、とは言われますが、
海洋温暖化で、
南西諸島以外でも増えるのはもちろん、
今まで発生例がなかった魚種でも、
これから中毒例が増える可能性は、
高いと考えておくべきでしょう(2023.8)
