(前編から続きます)

その知人の養蜂家は、

ずっと同じ場所に留まって、

季節ごとに花からの、

多くの種類のハチミツを採る飼育方法でした

 

一方、TVの養蜂家は、

ミツバチと共に、花を求めて、

春の時期、

鹿児島から青森まで移動しながら、

飼育する飼い方でした

 

TVでは、巣箱に王台という、

大きな巣穴を人工的に用意し、

そこに卵を移すことで、

何頭も女王蜂を作出していました

沢山の女王蜂の羽化により、

多く分蜂させ、

巣箱の数を増やすのです

 

女王蜂と働き蜂は、

遺伝的には全く同じで、

大きい巣穴で、

長期間ローヤルゼリーを与えられた幼虫が、

女王蜂になるのです

女王蜂は、いってみれば自然では、

姉妹である働き蜂によって、

必要に応じ、生み出されるのです

これはいくつかのハチ目のグループの、

半倍数性という遺伝的な仕組みが、

原因といわれています

 

女王蜂が雄蜂と交尾し、

受精卵(2倍体)を作りますが、

これは全てメスになります

一方、受精しない卵からは、

女王蜂の遺伝子の半分を受けた、

子ども(半数体1倍体)が生まれ、

こちらは全てオスです

 

なので、メス(女王バチおよび働き蜂)からすると、

自分の姉妹は遺伝子の2/3が一致、

自分の子どもは遺伝子の1/2が一致という、

不思議なネジレ状態が生じているのです

つまり、自分の遺伝子を残すには、

子どもを産むより姉妹を育てる方が有利

 

言ってみれば、女王蜂は、

一見、働き蜂を従えているようで、

実は姉妹から、

損な役割を代表で押付けられているだけ

そう捉えることもできるのです

不思議な、生物の世界です

 

しかし、定着しての養蜂は、

あまり数を増やせるだけの花が、

季節を通じて確保できないので、

王台を作る作業をする機会は、

比較的少ないそうです

 

その時に聞いた話では、

ミツバチはレンゲ(マメ目マメ科ゲンゲ属、

正式な和名はゲンゲ)の蜜が最も好きで、

レンゲが咲くと、

他の花には目もくれず、

レンゲの蜜ばかり集めるそうです

また養蜂家の側でも、

レンゲのハチミツは癖がなく上品な味,香りで、

最も高価だそうです

 

だから、レンゲの開花に合わせて、

春の季節、南から北に、

日本列島を縦断するのです

 

私が聞いた時は、

レンゲのみを求めて巣箱と一緒に移動するという話でしたが、

TVの養蜂家は、

最初はレンゲと共に、ナタネ

(アブラナ目アブラナ科、和名セイヨウアブラナ)

も元々用いていたと、

紹介されていました

 

農家がナタネ油を生産しなくなったため、

花畑がなくなり困っていたところ、

青森・津軽のリンゴ園で、

養蜂をすることになったということでした

前に聞いていた話と違い、

以前からの、

様々な作物の花の受粉をさせながら、

移動しての養蜂でした

 

推測ですが、

おそらくレンゲばかりの養蜂と、

各地で作物の花の受粉を手伝いながらの養蜂、

さらに1ヶ所に定着する方法を合わせると、

3種類の飼い方をする、

養蜂業があったのでしょう

今もレンゲのみの養蜂が残っているか、

私には分りませんが

 

なお、セイヨウミツバチは、

逃出して野性化しても、

スズメバチ類により、すぐ全滅するので、

日本の生態系にはほとんど、

影響を及ぼさないそうです

安心なような、可哀そうなような(2023.6)