獅子身中の虫,虫養い,腹の虫,虫の知らせ,虫の居所…

これらは、

元は蟲と書いた昆虫はじめ節足動物でも、

ヘビ・トカゲのような本来、

虫の字が当てられた、

這うような動物でもなく、

ヒトや動物の体内に寄生する、

カイチュウ,アニサキス等の線形動物門、

またサナダムシの総称で知られる扁形動物門の、

体内寄生の生物を指す言葉

今回はその、虫です

 

京都・八坂神社等でも信仰される、

庚申の虫封じという、

中国神話由来の三尸(さんし)という、

旧暦の庚申の夜に体内から這い出て、

天帝に人の悪行を報告する3匹の虫が体内におり、

そのため庚申の夜は徹夜で宴会し、

「虫休め」をするという平安以来の風習も、

体内の寄生虫が、

皆にいることを念頭に置いた、

話でしょう

 

その、虫の代表である、

歴史的に最も多くヒトに寄生してきた寄生虫は、

ヒトカイチュウ(旋尾線虫亜綱回虫目)

であるでしょう

 

哺乳類に寄生するカイチュウ類の中、

生活史が解明されている多くは、

糞口感染により、中間宿主を持たず、

排出された卵が直接小腸にたどり着き、

そこで孵化します

 

その後、ほぼ知られていない生態、

実に不思議な振舞いとして、

一旦肝臓-肺-気管支と移動し、

喉を経て再び消化器に入り、

最終的に小腸に落着きます

 

これは有力な説としては、

元々他の中間宿主を経ていたのが、

ヒトの体内で似た環境に入ることにより、

ずっと体外に出ず成長する、

効率的な生活史を得たのではないかと、

考えられています

 

それだけヒトに依存する生物ですから、

寝床であり食堂でもある宿主が、

不健康であれば、一蓮托生です

 

カイチュウ類により、

アレルギー反応や様々な健康被害が、

報告されています

 

しかしその多くは、

ヒトでいえばブタカイチュウ,イヌカイチュウ等の、

本来ヒトには入らないはずの、

別の宿主を持つカイチュウ類による被害です

そしてそれらの寄生虫は、

ヒトの中では成長できず、

暴れ続けた後、死滅します

 

他種の動物をペットや家畜とすることによる、

元々生物種であるヒトの生態になかった振舞いが、

生物進化上未経験の事態を招き、

ヒトも(そしてカイチュウ類も)苦しめていると、

言うこともできるのでしょう

 

カイチュウが、特に貧困状態の、

多くは子どもの中に大量に寄生し、

深刻な健康被害を与えることは、

周知のことです

 

しかし一方、

健康で栄養状態の良い場合は、

多くのサナダムシ類と同じく、

多少腸内にいるだけでは、

影響は、ほぼ悪くありません

その意味では、

寄生ではなく、ほぼ共生虫です

 

むしろ戦後、

これらの寄生虫が駆逐されてから、

花粉症や食べ物による、

ヒトのアレルギー症が深刻になったと、

多くの専門家が言っています

 

おそらくヒトが進化したはるか以前から、

カイチュウ類等の消化管内寄生虫は、

少なくとも脊椎動物で、

各種ごと共に進化し、生存していた

 

宿主への害が少ない寄生虫の方が、

排除され難く優占種となり、

結果、深刻な被害を与える寄生虫が、

体内に定着することへの防御となっていた

そのような役割も、

考えられています

 

その寄生虫の害を抑えるため発達したはずの、

生体の免疫機能が、

ヒト体内の(善玉含む)寄生虫がいなくなり、

逆に別の抗原を攻撃するようになった

 

いわばうるさいお目付け役を失い、

殿がご乱心、

暴走状態を引起こしてしまった

そう例えても良いような

 

一部では実験が進んでいますが、

遠くない将来、

ヒトに被害を与えることの少ない寄生虫、

特に他の中間宿主を持たない種を、

人為的に体内に入れる治療法が、

アレルギー等、

免疫系の病気治療のために、

導入されるかもしれません(2023.6)