シーラカンスというと、皆さんがほぼ等しく、

腕のような筋肉と骨のある鰭を持った、

生きた化石と言われる、

あの深海魚を思浮かべると思われます

 

しかし紛らわしいことに実は、

シーラカンス(シーラカンサス)はラテン語コエラカントゥスの英語発音で、

和名の表記での、

シーラカンス目シーラカンス科コエラカントゥス属コエラカントゥス

(ラテン語のスペルは同じ)という魚 は、

すべて中生代白亜紀末までに絶滅しており、

いま、シーラカンスと呼ばれている魚は、

シーラカンス目で唯一の生残り、

ラティメリア科ラティメリア属2種の魚です

 

ラティメリアとは、最初の現生個体を発見した、

南アフリカの博物館員の名前から採られました

発表したのは、

インド洋-太平洋の魚類の分類や生態研究に、

非常に大きな貢献をした、

J.L.B.スミス南アフリカ・ローズ大学教授です

 

一般には、

最初に南アフリカで戦前に見つかったコモロシーラカンスと、

`80年代末に新たに発見されたインドネシアシーラカンスの名で、

呼ばれている2種があります 

 

コエラカントゥス(管椎類)とは、

管の背骨(棘)という意味で、

背骨に硬骨がなく、

管状の組織の中に脂が詰まった、

特徴を持つことから名づけられました

シーラカンス科のコエラカントゥスという魚は、

ジュラ紀後半に絶滅したと思われる古生物です

 

シーラカンス目魚類は、

現生種のラティメリア属含め、

浮袋にも脂が詰まっていると考えられ、

深海に生息するための適応進化と思われます

 

先日も書きましたが、

シーラカンス類は、ハイギョ類と同じく、

四肢動物の直接の先祖でなく、

硬骨魚類の中から進化したグループ(肉鰭類)の可能性が高いと、

主張する学者が、近年多いようです

 

深海に進出した生物は、

浅海や陸上の生物が環境の激変で、

何回も大絶滅の経験を経てきたことと比べ、

深海は何億年も環境がほとんど変わらないため、

ほとんど(生態に関わる形質や遺伝子が)進化せず、

結果的に、生きた化石と呼ばれる生物が多く生残っていますが、

ラティメリアも、その1つと言えるようです

 

インドネシアシーラカンスは、

器用に腹鰭胸鰭を動かして、

頭を下にして深海中に停止している映像が撮られています

深海の魚やイカ等を頭上から襲う生態があると、

予想されています

 

なお、ラティメリアは非常にまずい上、

多くの深海魚と同じく、

浮力と高水圧下で体型を保つため、

胎内にワックス,尿素化合物等、

ヒトの消化できない成分を多く含み、

多く食べると健康を損ないます

これも、漁業の対象とならず、

漁獲による絶滅を免れた、

大きな要因かも知れません(2023.4)