今日(2026.4.3)キリスト教受難日で、受難節に因んだ魚の話です
ヨーロッパを中心に、キリスト教ではレント(受難節•四旬節)の時期、
古い習慣として肉を食べない伝統がありました
そのため、レントに入る直前にカーニバル(謝肉祭)として、
ご馳走を食べて騒ぐ祭りがあったりします
そのレントの時期、魚は肉ではないとして、昔からキリスト教文化圏では、
今でも普段以上に、魚が良く食べられます
その時良く食べられる魚は、
北欧のニシン・イワシ類、地中海沿岸のタラ、ポーランド周辺のコイ類などと、
地域性のあるものもありますが、
世界的に一段と良く食べられる魚の代表が、メルルーサという深海魚なのです
メルルーサ(類)はタラ目タラ亜目メルルーサ科メルルーサ属の総称で、
太平洋,インド洋,大西洋どこの深海でも安定して獲れる、
10数種のグループを主に指しますが、
以前はホキ(ホキ属)はじめ、メルルーサ科の他の種類、果てはソコダラ亜目等、
タラ目の様々な魚が一緒くたにメルルーサとして、
市場に出回ることも多かったようです
メルルーサはマダラはじめタラ類(タラ科)の魚とよく似た姿ですが、
ヒゲがない、鋭い歯がある、
タラ類での第3背鰭の部分が第2背鰭と分離せず、2つの山がある形になっている
といった特徴で、容易に見分けられます
タラ目(タラ亜目,ソコダラ亜目)の魚には、上品な白身魚が多いのですが、
米国,英国で良く魚フライで食べられることを始め、
魚臭さがなく小骨もほとんどないため、どのような調理法でも美味しく食べられる魚で、
世界中で様々な料理として用いられています
その中でも、特にメルルーサは、カルシウム,リンや、
健康効果が報告され最近人気のタウリンも豊富に含み、
また、青魚には敵いませんが、白身魚としては、
DHA,EPAといったオメガ3不飽和脂肪酸を多く含み、
魚が苦手な人でも割合食べやすい上、健康にもたいへん良い食材といえます
更に言えば、メルルーサはレント限定でなく、
イースターの時期にも主菜として良く食べられるもので、
質素にも豪華にもなる食材と知られています
もちろんそれ以外の季節にも食べられ、
今日本の外食や中食で、白身魚の○○という料理は、
そのかなりの割合で、メルルーサが用いられています
当たり前に日常に使われる、ありふれた名も知れない切り身魚として、
その正体や人との関わりが気にされない、安い扱いがされてきた魚とも言えます
実は直近の系統分類の世界で、メルルーサの位置付けに?が大きくなりつつあるようです
タラ類(マダラ,スケソウダラ,コマイ等)の、
形態上の1つの特徴として、偽尾というものがります
例えばカレイの煮付けなどで分り易いですが、
日常食卓に上る多くの魚の尾は、 最後端に尾骨と言う扇形の骨があり、
そこから鰭条が伸びて、尾鰭となっています
それがタラ類では、尾骨が非常に小さく、
その周囲に、直前の脊椎骨から上下に伸びた神経棘と血管棘という、
背骨の上下のいわば、ホネホネの姿を形どる骨の最後の数本づつが尾骨を取囲み、
その全体から尾鰭の鰭条が伸びているのです
この形は、普通の尾鰭とそっくりながら、厳密にいうと、
背鰭と尻鰭が尾鰭にくっついた構造なので、偽尾という専門用語が付けられています
タラ目には、ソコダラ亜目を中心に、尾部が鞭状に細くなり、
尾骨が消失または痕跡程度になったものが大部分です
確たる化石の検証のない段階で、推測となりますが、
深海の底魚として遊泳力を失ったタラ目魚類の中で、
再び尾鰭の推進力を持つため、タラ類は他には無い、尾骨に代わる偽尾を進化させました
さてそこでメルルーサです
同じくタラ亜目に属するメルルーサにも、偽尾があり、遊泳力を持つ魚となっています
このこともあり、昔からメルルーサはタラ類に非常に近縁なグループとされてきました
ところが近年の遺伝子解析によると、
他の多くの尾骨をほぼ消失している種類を含めたタラ亜目の中でいうと、
メルルーサは決してタラ類と近縁とは言えない結果が得られました
尾骨が退化したタラ目あるいはタラ亜目の中で、
タラ類とメルルーサが、独自にほぼ同じ偽尾の骨格形態を、
両者が独立して進化させてきたという、一寸考え難い話を考えるしか、
つじつまが合わないのです
イエス・キリストの受難と復活については、
聖書以外に、同時代の客観的な歴史的資料は皆無で、実在した証拠は全くありませんが、一方で、
決して権力を持たなかったはずのキリスト教がその後ごく短期間に地中海世界に行渡り、
そしてローマ帝国国教までなって数世紀内に世界最大の宗教として席巻したという、
世界史上他に例を見ない発展から、イエス・キリストの地上での存在が、
幻想あるいは捏造の可能性はほぼないというのも、同時に認められていることです
あたかもメルルーサの尾鰭の人知れぬパラドックスのような
別にキリスト教に限りません、単なる私の妄想です
メルルーサは、私たちの望ましい理想の姿ではないかと思っています
一見何の特徴もないかのような、尾鰭の神秘なパラドックスを持つメルルーサ
深海の底魚としてはむしろ珍しいのですが、
ひっそりとあまり知られずながら、群れを作って仲良く生きる生態です
そして鱈腹の例えになった親戚のタラのように暴食をせず、
仲間と食べ物を分け合って少しずつ食べている暮らしです
世界中で人の健康を支える働きを、地味な装いをしつつ静かに続けています
そんなメルルーサのように生き死ぬのも、悪くないかと(2026.4)
