OSK日本歌劇団「大阪ラプソディ」 | 世界史オタク・水原杏樹のブログ

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世界の史跡めぐりの旅行記中心のブログです。…のはずですが、最近は観劇、展覧会などいろいろ。時々語学ネタも…?
現在の所海外旅行記は
2014年9月 フランス・ロワールの古城
2015年3月 旅順・大連
2015年8月 台北(宝塚観劇)
を書いています。

OSK日本歌劇団のジャズミュージカル「大阪ラプソディ」を見てきました。閉館した扇町ミュージアムスクエアをリニューアルして扇町ミュージアムキューブという複合施設ができたので、その中にある小さいホールです。
「道頓堀ジャズ誕生100周年記念」ということです。

まず主役の楊琳さんが客席から登場して、ジャズの由来を語ります。黒人奴隷の嘆きの歌と白人の音楽の融合から生まれた音楽がわずか20年で日本に上陸。関東大震災が起きて、東京の芸人やミュージシャンが大阪に逃れてきて、「大大阪(だいおおさか)」の時代に大いに発展したということ。

そして楊琳さんは、主人公の服部良太郎となり、生い立ちを語ります。もちろんモデルは服部良一。体が弱く何事も続かなかった少年が、ハーモニカを与えられると音楽に夢中になりました。おりしも道頓堀では道頓堀ジャズが生まれ、さらに松竹座ができて松竹楽劇部が公演を始めます。大大阪をテーマにした歌を皆が歌い、背景に古い写真の松竹座が映し出され、印象的なアーチのファサードのことを歌います。OSKも去年で100周年でしたね。
もちろんOSKのレビューシーンも盛り込まれますが、使っている歌が「ビロードの夢」。この歌は服部良一の作曲なんですね。あやめ池時代に「秋のおどり」でテーマソングとして使われていたので懐かしいです。

そしてOSKレビューの出資者、織田雅道(華月奏)と服部良太郎、そして織田家の使用人の娘でOSKに入った三笠桜子(舞美りら)の交流が描かれます。ダンスホールに行ってタンゴを踊るなど当時のモダンな生活が描かれます。

その時代を中心に進んでいくのかと思いきや、時代はどんどん進み、戦争に突入していきます。服部良一の「タリナイソング」をアレンジしたようなナンバーで踊る場面も出てきます。「タリナイソング」は戦争でものがなくなっていく状況をパロディ化した歌で、発禁の憂き目に遭ったもの。

織田雅道も軍隊に入り、ジャズを禁止して良太郎をいさめる立場になってしまいます。良太郎はそれでも、ジャズは異なるものをミックスして新しいものができることを主張するのですが、「ミックス」と言うたびに「敵性語を使うな」といさめられてしまう。じゃあ「融合?」

さらに上海の場面も出てきます。服部良一は戦争末期に上海に召集されていたので、その時の李香蘭との出会いもアレンジされて場面になっていました。この舞台ではリン・シャンランという名前で(琴海沙羅)「蘇州夜曲」を歌います。「夜来香」は音楽のみで、娘役たちが踊ります。「夜来香」は当時は日本語の歌詞がなかったので、中国語で歌うのはハードルが高かったか。

やがて戦争は終わりますが、服部良太郎はすっかり意気消沈して曲を書く気力がなくなってしまいます。妹・久代(桜乃ひとみ)の励ましも効果がなく…。
しかしそこへ三笠桜子が現れます。それから出征した劇団裏方の飯田五郎や織田雅道、そしてOSKの団員達も現れます。青白い照明だったり、どうもこの人たちは現実ではないんじゃなかろうか…と思いながらも歌や踊りが繰り広げられ…そうしてすーっといなくなっていきます。やっぱり。

良太郎は、ジャズは異文化の融合から生まれる、と主張してきましたが、ここで日本の伝統とジャズの融合を考えます。上海で聞いた新しいアメリカの音楽、ブギウギを使いたい。そしてヨナ抜き音階でリズムを取って行く…。
さらに大阪弁を加えて「大阪ブギウギ」が生まれます。「東京ブギウギ」じゃなくて大阪を持ってくるところがいいですねえ。
「東京ブギウギ」ほど有名ではありませんので、リンク貼っておきます。こういう歌。
https://www.uta-net.com/movie/91193/

歌やダンスのナンバーが多く、その中で時代の変遷や主人公を取り巻く人間模様などが織り込まれた力作でした。
楊琳さんは、良太郎がジャズに懸ける一途な思いを熱い演技で伝えてくれました。

フィナーレはジャズの名曲で歌い踊ります。「私の青空」「A列車で行こう」と手拍子も楽しいナンバーがあり、それからムーディな「煙が目にしみる」でデュエットダンス。
最後は…「東京ブギウギ」で盛り上がる…最後は東京か!と心の中でツッコミ。

アンコールの楊さんのダンスはとても熱くて、さすがOSK!