ねじれたハートで | 上田 真一郎 犬のためのヒーリングデバイス CS60

上田 真一郎 犬のためのヒーリングデバイス CS60

   大切なことは全部犬が教えてくれた
ペットと飼い主さんを「言葉」でつなぐコミュニケーションを。

 

 

家人の車の定期点検でディーラーへ。以前は

隣にお気に入りの喫茶店があったので、整備

の待ち時間も苦にはならなかったし、寧ろ美

味しい珈琲を楽しみにしていたのだけれど、

昨年だったか残念ながら閉店してしまったの

で、小一時間を埋めるべくキンドルを持参し

た。

 

件の喫茶店は遂に取り壊され、新しい建物が

建築中で工事の音が煩い。換気の為に開け放

たれたドアの所為もあるけれど、喫茶店への

惜別の情が無駄な怨みとなって余計に金属音

が皮肉に響く。

 

キンドルの電源を入れて続きを読み始めた。

 

短編の連作で、高校生の娘とどうもギクシャ

ク擦れ違ってしまう父親のストーリーなのだ

けれど、途中思いも寄らずグッと来てしまい

、軽く潤んでしまった。

 

こんな時に限って営業さんが挨拶に来てくれ

て、こんな処で涙を堪えている顔なんて見せ

られないので、力を込めて感情を押し戻す。

 

そのストーリーの中で、泣くとことは別にと

ても好きな下りがあった。

 

寂しい父親のモノローグ。

 

 家族って、電車に乗り合わせたようなもん

だ。最初は一緒に乗っていたって、いつか乗

り継ぎの駅がきて、子どもは違う場所へと行

ってしまう。それまで隣に座っていたのに。

同じ景色を見ていたのに。いろんな話をした

のに。

 でも俺だってそうだ。時期がきたら自然に

、自分の意思で親と違う電車に乗り継いだ。

そして美恵子と出会って、ふたりで同じ電車

に乗って、、、、、、そこにさつき(娘)が

乗ってきたんだ。さつきはさつきの切符を持

って。

 

だから、子供が席を立ったとき、ちゃんと次

の電車に乗れるように信じて見送ることしか

できないんだと父が気づくシーン。

 

その下りを読みながら、母が生前、まったく

故郷に帰ってこない息子を想って、父に愚痴

っていたと後に父から聞かされたことを思い

出した。

 

「息子なんて産むもんじゃないわ。

 家に帰りもしないで、つまらない」

 

その息子は忙しく、ようやく時間に余裕を持

てるようになった時にはもう居なかったのだ

から、仕方がないじゃないかと今でも思う。

 

でもひとつだけ言えることは、若い頃、弱音

も吐かずに仕事に没頭して、便りのない事が

一番の親孝行だと信じていたのは間違いだっ

たという事。それも大きな間違い。

 

もっと甘えるべきだったと、思いがけず湿っ

た心がそんな事を想った。

 

 

  

   ベル インスタはじめました ベル

   わんわん ワンコがいっぱいです わんわん