皆様、お久しぶりです。
なかなか史跡も美術品も見に行けない日々が続いていましたが、幸運にも神戸に立ち寄る機会があったので神戸市立博物館で開催中のボストン美術館展(2/4まで、以降は改修のため閉館)に行ってきました。古代エジプトから現代まで様々な美術品が集まっていましたが、私が特に惹かれた作品をいくつか紹介します。

古代エジプトコーナーにはツタンカーメン王やハトシェプスト女王などファラオの石像が多数展示されていますが、私としてはヌビア(現スーダン)で出土したという、直径3~4㎝と大きめで青緑色をしたファイアンス焼きのビーズ(紀元前1700~1550年頃)に目が行きました。解説板によると「メロン形」だそうですが、穴に対して平行に何本か溝を切ったその形は古墳の副葬品や正倉院宝物に見られる「くちなし玉」とほぼ同じです。エジプトの美的感覚が2000年以上かかってシルクロードを越え、日本の古代文化に影響を及ぼしたことを実感しました。

日本コーナーは英一蝶作の涅槃図が目玉でした。撮影可能なパネルが設置されていたので掲載します。
見ての通り動物がたくさん描かれていてウサギがとても可愛いほか、ヒョウが「雌のトラ」として描写されていたりします。

もう一点「おおっ!」と思った日本画を挙げるならば、 曾我蕭白作の風仙図屏風です。陳南の龍退治を描いたとされる絵ですが、一見おかしく感じる描写も全体を見渡せば動きや迫力をよく表現していて、その発想に心のなかで盛大に拍手しました。具体的には、陳南はほとんど棒立ちで視線も倒すべき龍を睨み付けていないように見えるのですが、画面を左から右へ見ていくと黒い渦巻きで表現された龍、棒立ちの陳南、風に飛ばされる従者2人、何事もなかったかのようにおとなしい2匹のウサギという静と動の対比を意識した配置になっていて、これならちゃんと勝てただろうなと想像できます。先に中国美術コーナーで龍の絵を見た後でもあり、動きを演出するために龍をあえてただの黒いつむじ風として表現している点も斬新な発想だと感じました。

西洋画は印象派から現代アートまで取り揃えていますが、やはりモネの睡蓮に和みます。モネの睡蓮というと青い花のイメージがあり、展示されていた作品にも描かれていたのですが本人は実は現物を見たことがなかったとも聞いたことがあります。それでもなお、あの繊細な花の色や漂う神秘的な雰囲気が伝わってくるのでずっと眺めていたくなります。