積丹半島は古くから漁業の盛んな地域。
アイヌ語の地名であった「サクコタン」は
「夏場所」を意味していて、
アイヌの方々にとって
昔からこの辺りが春夏に漁獲の上がる鰊や鮑、
なまこなどの漁場であることを表す地名と
なっているのだそうです。
積丹半島は
土着のアイヌ民族の人々だけでなく
古くから和人の間に於いても
好漁場として認知された地域でした。
このため、
徳川家康が江戸幕府を開府した慶長年間、
積丹半島には美国場所、積丹場所の
2つの海産物の交易場が設置されています。
この地域は
安山岩や石英粗面岩で構成される
20~100m程の海食崖が
幾重にも連なり、
沿岸にも顕礁・暗礁が
散在している地形環境です。
また、
折から偏西風の煽りを受けやすい場所で、
鰊漁の最盛期であった春先には、
偏西風波動等により
天候が非常に不安定となり易く、
冬季は北西風が特に強く吹きつけるので、
この海域で操業する漁船や
航行する船舶にとって
海難事故の発生しやすい
難所とされる地域でもあります。
市街地から岬へ向かう海岸線が
はじめのうちは低い崖になっているけれど、
岬へ近づくにつれて次第に崖の高さが増して
岬の突端では
70~80m程の絶壁となる
特異な環境を備えた岬です。
その 長く連なった断崖絶壁のある
ランドスケープは、
『ラクダの背』と呼ばれるくらい 豪壮 雄大で、
この土地や海が 定住者や 漁業従事者、
航行の船を拒んできた一方で、
景勝地としては
たくさんの人を惹きつけています。
積丹半島の神威岬に灯台を訪ねたのは
初秋の9月下旬、
シルバーウィークの頃でした。
夏はコバルトブルーの海と
青々とした夏草の山のコントラストが美しく
吹く風も まだ柔らかな神威岬ですが、
秋の岬は
尾根道の両脇に広大なススキ野原が現れて
そのススキの穂が
強い風に勢いよく煽られて一斉に揺れている
寂寥感のある景色に変わっていました。
寂しいようだけれども、綺麗な景色。
遮るもののない岬の尾根道は
北西風が直に強く吹きつけていて、
髪が風に煽られひどく乱れて
あられもない様相になりつつも、
負けずに歩くという
ある意味で 大変な散策になりました。
低重心のフレブルならではの風除け術で、
前を行く犬は 不思議なくらい
さくさくと歩いていましたけれども…。