数秒の沈黙。
そして、セツナがぽつりと呟いた。
「……これ、私にとっての、セイだ」
「……えっ?」
予想外の言葉に、セイは一瞬固まる。
「セイって、特別なことをしなくても、前からずっとそこにいたのにさ。でも、ちゃんと意識したら、“あ、そっか”ってなったんだよね」
セイは、少し戸惑いながら答えた。
「……それは……それは僕にとっての、セツナさんかもしれません」
「そうなの?」
セツナは、少し驚いたように笑った。
「だったら……嬉しいな」
「……はい」
セイは照れ臭そうに視線を落とした。
「……でもさ」
セツナが、ふと立ち止まる。
「このクエストさ。“消えた〇〇”の答えを一言で入力するんだよね?」
「はい、そうですね」
「もしさ、答えが“セイ”だったらさ」
ちらっと、セイを見る。
「それだと私、どうなるの?ってならない?」
「……確かに」
セイは一瞬だけ考えてから、うなずいた。
「このクエストは対象を特定するというより、“関係性”を問われている可能性がありますね」
「だよね」
「……ですので」
少し言葉を選んで続ける。
「回答は、セツナさんと僕、2人をまとめて表せるものの方が適切かもしれません」
「そっか」
セツナは腕を組み、少し考える。
「じゃあさ……“パートナー”ってどう?」
「えっ!?」
思わず、セイの声が少し上ずる。
「パ、パートナー、ですか……」
「うん」
セツナはあっさり続けた。
「だって私たち、“特別な人”設定で繋がってるじゃない。それってさ、言い換えればパートナー同士でもあるでしょ?」
「……」
一拍。
セイは視線を落としたまま、静かに頷いた。
「……なるほど」
そして、少しだけ落ち着いた声で言う。
「そう言われてみれば、制度的にも、関係性としても、“パートナー”という表現は適切ですね」
「でしょ?」
セツナは小さく笑った。
「じゃあ、回答はそれにしよう」
「……はい」
2人は並んで端末を見つめる。
入力欄に、セイが静かに文字を打ち込んだ。
《回答:パートナー》
一瞬の間。
そして、穏やかな光が2人を包んだ。
《クエストクリア》
《報酬:マネー+特殊アイテム〈幸せの種〉》
「……終わったみたいだね」
「はい。クリアです」
「幸せの種、だって」
「家庭菜園用のアイテムのようですね」
セツナは小さく笑った。
「なんか、いいよねこういうの」
「はい……思い出と一緒に、残るものですね」
「うん。今度、一緒に植えてみよっか」
「はい。是非」
クエスト終了を示す光が消え、広場はいつもの風景に戻った。
「ねえセイ、さっきの幸せの種だけどさ。これ、セイが持ってて?」
「えっ?」
「ほら、私、うっかりなところあるでしょ?だからセイに持っててもらった方が安心かなって思って」
「は、はい、そういうことなら、僕がおあずかりしますね」
「うん、よろしく。それじゃあ、今日はこの辺で私は帰るね」
「はい。今日も、ご一緒できて楽しかったです」
「私も。また3日後だね、セイ」
「……はい。また3日後、楽しみにしています」
セツナの姿がログアウトと共に消えたあと、セイは1人、広場に立ち尽くす。
「また3日後…」
今日はその言葉がなぜかとても温かく感じられた。
(第21話に続く)