6日目の朝も、いつも通りに始まる。
動きに迷いはなかった。
ルカが外に出たそうにしていたので、人目のない道を、少しだけ歩く。
会話はほとんどない。
足音と、風の音だけが並んでいた。
少し進んで、少し戻る。
疲れたら帰る。
それだけの散歩だった。
そのまま、買い物に足を伸ばす。
明日は、セツナが訪問する日だ。
彼女が来ても、いつも通りに過ごせるように、新しいお茶と、それに合いそうなお茶菓子を探す。
——手作り、という選択肢も頭をよぎる。
棚を眺めながら、そんなふうに彼女のことを考えている自分に気づき、少しだけ意外に思った。
(……まあ、いいか)
深く考えず、視線を商品に戻す。
「よし、こんなもんか」
材料とお茶を手に取り、周囲を軽く確認してから家に戻った。
帰ると、暖炉の前でルカがくつろぎ始める。
その様子を見て、セイはコートを脱いだ。
手早く昼食を済ませ、午後は短い筋トレと読書。
夕方には、いつものようにルカと並んで食事を摂る。
戻る場所が、ちゃんとあった。
夜、灯りを落とす。
明日は——土曜日だ。
そう考えただけで、なぜだか少し心が浮くような、そんな感覚があることに気づいたが、セイは軽く頭を振り、ベッドに入ると、静かに目を閉じた。
(第117話に続く)