夕食の支度を終える頃には、湯気の匂いが部屋に満ちていた。
温かな香りを吸い込みながら、セイは小さく息を吐く。
張っていたものが、少しだけ緩む気がした。
ふと視線が向かいの椅子へ向く。
当然、そこには誰もいない。
一瞬だけ手が止まった。
だがすぐに視線を皿へ戻し、セイは何事もなかったように食事を続けた。
食事を終え、片付けを済ませる。
気づけば、外はすっかり暗くなっていた。
夜。
ベッドに入り、目を閉じる。
静かな空気の中で、意識はゆっくりと沈んでいく。
ルカが小さく鼻を鳴らす気配だけが、最後まで残っていた。
(第194話に続く)