ドアを開けると、そこには冬の冷気を少し纏った、見慣れた姿があった。
「セツナさん、いらっしゃい」
「来たよ、セイ。お邪魔するね」
玄関に滑り込んできた声が、部屋の静けさに柔らかな温度を混ぜていく。
「どうぞ。中へ」
セツナを迎え入れ、セイはキッチンへ向かう。
やかんを火にかけ、茶器に視線を落としたあとで声をかける。
「今日は僕の方でお茶を選んでもよろしいでしょうか」
「え?あ、うん。もちろん」
セツナは気軽に頷く。
「今日は、ほうじ茶にしてみました。いつもと少し違うものも、いいかと思いまして」
そう言いながら湯を注ぐと、香ばしい香りがゆっくりと広がる。
「へえ、新鮮だね。いい香り」
少し意外そうに、それでも嬉しそうに微笑む。
その反応に、セイの肩の力がわずかに抜けた。
「気に入っていただけたならよかったです」
菓子の皿もそっと置く。
「今日は少し軽めのものにしてみました」
「ほんとだ。いつもとちょっと違うね。でも美味しそう。ありがと」
セツナは軽く笑いながらそう言った。
(第132話に続く)