■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第19話) | 世羅の気功と日常ブログ

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《ヒント:ないのに、あるもの》

 

 

……これ、ちょっと難しいね」

 

セツナが率直に言う。

 

セイは即座に答えた。

 

「これは、おそらく、量子力学的な考え方に近いかもしれません」

 

「え、量子力学?」

 

「はい」

 

セツナは一瞬、思考を止めた。

 

……それって、すごく難しいやつ?」

 

「簡単に言いますね」

 

セイは言葉を整理するように、少し間を置いた。

 

「観測されるまで、存在が確定しない、という考え方です」

 

「なにそれ……」

 

「有名な例で言えば、二重スリット実験や、シュレーディンガーの猫、ですね」

 

「聞いたことはあるかも……でも詳しくは知らない」

 

セイは、少し噛み砕くように続けた。

 

「たとえば、電子みたいな小さな粒があるとします」

 

「うん」

 

「それを、壁にあいた2つの細い隙間に向かって飛ばす実験があるんです」

 

2つ?」

 

「はい。本来“粒”なら、どちらか片方の隙間を通るはずですよね」

 

「えっ?そうなの?私なら、どっちも通るかも、って思うけど

 

「確かに。一般的な感覚では、そう考えるのも不思議ではありません」

 

セイは、少しだけ微笑んで続けた。

 

「ですが、この実験が示しているのは、“観測されるまでは、粒として確定していない”という状態なんです」

 

……まだ、なんかわかるようでわからないけど、とりあえず今は、そういうものなんだ、って思うことにするよ」

 

「はい。今の時点では、そのくらいの認識で大丈夫です」

 

セイはうなずく。

 

「説明を続けますね。この実験では、観測していない状態だと、まるで“波”のように、両方を同時に通ったかのような結果が出るんです。つまりどの隙間を通ったかを“観測”した瞬間、その振る舞いは“粒”として確定するということです

 

……見たら、決まっちゃうんだ」

 

「はい。観測されるまで、状態が確定していない、と考えられています」

 

セイは一度、言葉を切ってから続けた。

 

「そして、その考え方を、もっと分かりやすくした例えがシュレーディンガーの猫です」

 

「猫?」

 

「はい箱を開けるまで、猫が生きているか死んでいるか分からない、という例えです」

 

どういうこと?

 

箱を開けるまで、猫の状態が、“生きている”とも“死んでいる”とも言えないままだ、ということです

 

……ああ、そういうことかでも」

 

セツナは、ゆっくりと言葉を選んだ。

 

「箱を開けた瞬間に、どっちかに決まるんだよね?」

 

「はい。“観測した瞬間”に、状態が確定します」

 

……2つの隙間と、同じだ」

 

「ええ。どちらも、“意識に上げるまで、確定していない”という点では、同じ構造です」

 

セツナは目を瞬かせた後、ふと静かに言った。

 

……じゃあさ」

 

「はい」

 

「これって、“意識されてなくても存在してるけど、意識に上げた瞬間に、はっきりするもの”ってこと?」

 

……その通りです」

 

うーん……

 

一拍置いて、セツナの表情が、わずかに変わった。

 

……あれ?もしかして……あっ」

 

(第20話に続く)