リュウが迎えに来ない……。
おまけに姿も見せない……。
名前を呼びながら部屋に入っていくと小屋から尻尾だけが出てる。
それも尻尾すら全く微動だにしない。
たまにこんなことはある。
そりゃ、リュウにだって色々なご機嫌がある。
いつもならこんな時はリュウの器をコンコンと叩いて「ご飯だよ。」とちらつかせると何事もなかったように出てくるので、問題なくリュウのご機嫌をとっていた。
でも……
何か腹が立つ。
もう腹が立つとしか言いようがない。
リュウだけに腹立ってるのか、今日一日に腹が立ってるのか、むしろ毎日に腹が立ってるのかもうわからない。
というか、そんなこともうどうでもいい。
「リュウ!!!!!」
激しく苛立った声とともに尻尾を思いっきり引っ張った。
「ぎゃああああ。」
引っ張り出されてリュウが思いっきり驚いて私の手をひっかいた。
「イタッ!!!」手を放してしまうとリュウは急いで小屋に戻っていった。
私の手の甲にはうっすらとリュウの爪の跡がある。
血が出るほでじゃなかったところをみると、リュウもちょっと気を使ってくれたのかもしれない。
手の傷を見ていると不思議と今までの苛立ちが落ち着いていくように感じた。
高校の時から数年、付き合っていた彼の顔が浮かんでくる。
正直、姿はぼんやりだけど、猫のひっかき傷が昔の淡くて優しい思い出を呼び起こしてくる。
「忘れてなかったんだ……。」
ほんのちょっと口元が緩んだ。
