同じ事務所で三姉妹を演じる俳優たちは先輩、後輩、人気急上昇の売り出し中、いわゆるバーターというキャスティング。

事務所内でも「撮影中、大丈夫か」と心配されてはいたものの周囲の1秒たりとも目を離さない努力もあって絶妙な均衡を保っていた。

 

 「ここまで上手くやってきたのに、おしまいか…。」マネージャーの辰巳は原稿の最終チェックをしながら聞かないふりをした。正直、もうこの冷戦状態に首を突っ込みたくない。できれば田中に解決してほしい。

辰巳が見た限り、先輩の三橋は小さいながらもやはり先輩というのにふさわしい高級なものを選んできているが、五連のネックレスの美香の方が目立ってしまうのは確かだ。美香はネックレスが重いからギリギリまでつけたくないと言っていたぐらいだからそりゃ、派手なんだろう。

ただ田中はずっとついているだけに美香の趣味を良く理解したスタイリングをしてくれている。それにしてもスタイリストなら普通はアクセも2、3点持ってくるだろ。

 

「お二人の世間のイメージも違いますし、大丈夫な気もしますが…。」

 

衣装は数点持ってきていたものの、アクセサリーを1点しか用意していない田中は窮地に陥っている。

「他は無いの。」という質問を美香に吐かせるわけにはいかない。辰巳をちらっと見るものの、「任せた。」と背中で語っているのが分かる。

 

「あ~、あいつと温泉でゆっくりしたいなあ……。」辰巳の頭の中は温泉の香りの混じった湯気でうっすらともやがかかってきた。