「あの人、昭和の女優気質もあるからこういう上下関係にはうるさいのよ。まあ、無駄に顔が濃いから小さなネックレスでもいいんだろうけど。」
「「本音出た。」」田中と辰巳は声には出さないものの同時に同じことを考えていた。ふと顔を見合わせた。番宣では「三橋さんがキレイ系だから。」などと言ってはいたその顔のパーツを「無駄に濃い」と思っていたようだ。
「大体、この映画、超大作っていうから出演したのになんなのよ。ハートフルなラブコメディなのに殺人事件が起こるし、なんでも要素を詰め込んだらいいってもんじゃないわよ。台本の最終稿を見たら『暁家の三姉妹の一週間』に『~あなたを殺したのは誰ですか~』なんてサブタイトルがついてるんだもん。ハートフルでサスペンスなラブコメディなんて聞いたことない。」
「それは僕も聞いたことがない。」辰巳は原稿から目を離さず心の中で同意した。
僕が就職活動の面接で語った会社に入ってやりたいことって何だったんだろ。
もう思い出せないけど少なくとも今の状況が違っていることだけは間違いがない気がしてる。
大学でみんなと自主制作で映画作ってた時が懐かしいな。
今観ると恥ずかしいものばかりだけどそれでも楽しかったな。
あいつもいたし……。