毎週日曜日 22:00 ~ 放映される NHK BS1「舟を編む」を時々観ている.
何年もかけて 辞書を作る編集社員たちの物語.
NHK BS「Covers」のホスト役だった 池田イライザ ちゃんも可愛く、野田洋次郎さんも出演・・・ほかにも 味わい深い役者さんたちの落ち着いた演技で、居心地の良いドラマである.
「辞書は言葉の海を渡る舟」という言葉にタイトルは由来し、辞書の名前は「大渡海(だいとかい)」である.
先日 こんなシーンがあった.
辞書に掲載する「水木しげる」の欄を担当する某大学教授.
水木の大ファンであるため、思いがこもり、2-3行で終わらせなければならない項が原稿用紙 数ページにわたる解説となる.
文章を大部分 削減しなければならないが、教授先生の機嫌を損ねれば、さまざまに影響が及ぶから、事は重大だ.
そこへ 他部署でありながら いつも助けてくれる営業部の 向井理 が現れる.
向井理・・・そう、「ゲゲゲの女房」で「水木しげる」役を演じた 向井理 が、教授先生の説得に入り、こう諭す.
「辞書とは『入口』なのですよ」
・・・辞書は その言葉が示すことすべてを伝えるものではなく、ただ その『入口』・・・しかし、その『入口』が、そこから広がる世界へ導いてくれるわけだから、とても重要な役割を担う・・・と.
この言葉に 教授先生は納得し、長い文章を自ら削り始める.
「辞書」の本質を問う、良いシーンだった.
・・・本日「昭和歌謡史」が発売された.
長い歌手人生を歩んできた、Kiina の抽斗に収まる作品たち.
発売を喜ぶ声とともに、新しい作品を望む声が入り混じる.
収録曲を見ていて、ふと 私が はじめて 演歌を「面白い!」と思ったのは Kiina の歌声を聴いてからだったな、と、思い出した.
自分が生まれる前の歌たちが新鮮に響き、こんな世界があったのか、と驚いたっけ・・・
あの声、あの存在 こそ『入口』だった.
私に演歌を教えた『入口』であると同様に、それが Pops や Rocks の『入口』であった、という人もいるだろう・・・.
Kiina は いろいろな音楽の『入口』、つまり音楽の『辞書』でもあった.
そして、音楽の海を航るための「舟」・・・
その、大切な『辞書』を失って久しくなった.
なかなか 代わりの『舟』も見つからず、音楽の海に漕ぎ出せない・・・
とても とても 困っている・・・