八代亜紀さんの訃報を聞き、驚きました.つい先日までTV画面でお姿を観ていたような気がするので尚更です.

 

代表曲「舟唄」は時代を超えて歌い継がれる名曲ですが、八代亜紀さんの歌唱が素晴らしく、詞、曲、歌声がこれ以上ないくらいマッチし、多くの人の心をつかんだことは今更言うまでもないことです.

 

この曲は、降旗康男監督の「駅 STATION」(1981年)という映画の挿入歌でもありました.それも「添えられる」という使い方ではなく、主軸として.

 

映画「駅」の舞台は北海道・・・主人公の高倉健と倍賞千恵子. 大晦日. ふたりきりのカウンター. TVで紅白歌合戦. 倍賞千恵子が「私、この歌好き」と見入る画面・・・八代亜紀「舟唄」・・・それだけで二人の関係と映画の展開を予想させる、重要なシーンとなりました.劇中で二回使われますが、「舟唄」には映画のストーリーそのものを動かす、威力があるように思います.

 

さて、Kiinaの専属司会をされていた 西寄ひがしさんのトークショー(「上書き厳禁!ツメ折りライブラリー」)に、一昨年行きましたが、その中で西寄さんが八代亜紀さんの話をされました.

 

ひとつめは、西寄さんが八代さんのステージの司会をされた時のこと.

八代さんといえば受賞曲も多数あるので、持ち歌の前口上の題材も事欠かないそうですが、それを言い終えた西寄さんに、ステージに向かいながら八代さんが顔を向けて 「ヒュー、勉強した? ヒューヒュー、勉強したでしょ?」と、あのスマイルで言い、客席をなごませ、西寄さんに注目を向ける気配りをされた、そういう方だったそうです.

 

もうひとつは、ステージの予行練習でのこと.時間が制限されているため、バンド演奏と共に数曲のみ歌うのが通常だそうです.すると、八代さんは居合わせた、ホールを掃除していた年配の女性たちに声をかけて、最前列の中央のシート、つまり目の前に座らせ、「なにが聴きたい?それ歌います」と訊ねられたそうです.

ふたりは代表曲の「舟唄」や「雨の慕情」をリクエスト.

八代さんにしてみれば、それらは常日頃歌っているので練習は不要、久しぶりに歌う曲を練習したかったはずなのに、リクエストに応えた歌で練習を終わらせたそうです.

そのようなサービス精神あふれる、というより 本当に優しく、温かいお人柄だったようです.

 

西寄さんはそのようなエピソードをたくさんご存知なので、八代さんの人となりを伝え続けるうえでも、末永くご活躍していただきたいな、と思います.

 

その歌声とお人柄で多くの人のこころを温めてくれた、八代亜紀さんのご冥福をお祈り申し上げます.