先週末、実に久しぶりにカットに行った.
「似合うように」と頼んだら、とんでもないことになっていた.
ボブ、と言われればそうかもしれない.
それなら 先日映画を観た山口小夜子さんに肖っているようでうれしいけど、なんかまとまっていない 切りっぱなしのような感じ.
「チコちゃん」というか、「まる子ちゃん」というか、私の世代だと「磯野ワカメちゃん」みたいだ・・・というか、コケシっぽい・・・生きていない気がする・・・
そういうわけで 怒りながら帰ってきた.
・・・すると、友人から写メが送られてきた.
友人は旅行中で、現地で知り合ったという 若いカップルの姿が写っている.
若い男性と はにかんだ笑顔をみせる若い女性・・・ほほえましい光景だ.
友人によると、前日 写真に写る20歳の男性が となりに座る18歳の女性に結婚を申し込んだのだという.
初々しく眩しいおふたり、どうぞお幸せに!・・・幸せな二人の世界を邪魔せぬよう いつもの私なら一瞬見て終わるところだが、まじまじと写真に見入っていた.
友人が連絡をよこしたのは数日ぶりだった.
この連絡をもって 彼女の無事が確認され、私はずいぶんほっとした.
「大袈裟な・・・旅行中の数日間の連絡がないことくらいで」と多くの方は思われるかもしれない.
だが、彼女が向かったのがウクライナのキーウであれば、私の心配をご理解いただけると思う.
昨年から 単身で何度もウクライナに入っている彼女は、今回もどういうルートを使ったのか、現地入りを果たしている.
帰国すると、ウクライナの現状について講演をしたり、写真を公開し、それで得たお金をもってまたウクライナに向かう.
そして今までの訪問で知己を得た、現地の方々にお金を渡し、ともに生活しながら 破壊された町の修復など、求められる仕事をしているようである.
現地の状況を住民の方々の言葉と写真で伝えてくれる.
ーーー以下私信でのやりとりであり、公的な確認ができている事象ではないことをご承諾の上、ご覧いただければ幸いですーーーーー
・・・最近はイスラエルの紛争についての報道が多くなっているが、ロシアのウクライナへの攻撃も変わっていない.
ドローン攻撃激化しており、まもなくライフライン攻撃もはじまるだろう、と、市民生活への不安が断たれることはないという.
そして目下、若い人たちが案じているのは「いつ徴兵されるか」ということであると.
・・・長期化する戦争に徴兵が進んでいる.
「いつ徴兵されるかわからない」ではなく、「もうすぐ徴兵されるだろう」という確信に変わっている.
写真に写る20歳の男性は「明日どうなるかわからない」から 18歳の女性にプロポーズをした.
幸福そうな二人の背後には いつ状況が変わってもおかしくない不穏な空気が漂っている.
ウクライナで戦争が始まったのはいつだったろうか?
昨年の4月にはもう大きな問題となっていたと思う.
思い出すのは、Kiina の豊中市立文化芸術センター(2022.4.24)でのコンサートのこと.
ステージの中央に黒いタキシード姿で佇み、冒頭アカペラで歌いあげた曲は「一本の鉛筆」だった.
声帯ポリープの治療のための休養明け 2回目のステージだったと思う.
歌って大丈夫なのか? という心配、そして 私にとっては休養宣言後初めてのステージだったので、いろいろな思いが渦巻いていたが、あの歌声は一気にそれらを打ち消した.
「一本の鉛筆」はご存知の通り、美空ひばりさんの曲で、1974年の第一回広島平和音楽祭にて初披露された.
その時のエピソードとして私は下記のように聞いている.
その日、公演までの時間を過ごす待合室の冷房が不調で、ひばりさんは暑い部屋で待つことになったらしい.
関係者が恐縮し、冷房の不具合を詫びると、ひばりさんは「あの日の広島のみなさんはもっと暑かったのですよ」と答え、周囲はその言葉に感銘を受けたという.
そういうひばりさんだから この歌を繰り返し歌い、私もその映像を何度か目にしている.
ひばりさんはこの歌を、より遠くまで、より多くの人に聴こえるように、と、高らかに歌う.
だから、冒頭の「あなたに聞いてもらいたい」の「あなた」は特定されない、多くの人に向けられ、そこに平和への思いをつないでほしいという願いが見える.
だが、あの日の Kiina の歌い方はすこし違った.
会場いっぱいに声は響いたが、ひとりひとりの心に向き合うように、語りかけるように歌った.
途端、ドラマが見えてくる.
戦争が終わっても、なおその傷を抱える人が、愛する人に巡りあって、でも、幸せにはなれない、と告白をしている、そのようなストーリーが黒いタキシード姿の Kiina の背後に見えてきた. ・・・哀しい思いをしたその人は しかしその身に起こった不幸を受け入れ、自分の愛を平和への願いに変えていく.
・・・心に直接飛び込んでくる歌声は「哀しさ」「辛さ」「悔しさ」「虚しさ」「愛おしさ」「優しさ」「逞しさ」「強さ」・・・それらすべてを伝え、感動で身動きができないほどだった.
この歌のジャンルを問われれば、「反戦歌」になると思う.
だが、あの時の Kiina はこれを「愛の歌」に変えた.
この会話を交わす、悲しい恋人同士の光景を映し出す歌声に 改めて「すごい歌手だなあ」と思った・・・素晴らしかった.
LINEで送られた、若い二人の写真に あの時の「一本の鉛筆」が蘇る.
このふたりが そういう会話を交わさない未来を迎えることを願う.
そして、現地に赴き、ウクライナを支援している友人の無事を願う.
私の髪型など どうでもいい.
お守りのように財布に入れている半券