10月16日、谷村新司さんの訃報を知る。

 

私は10年以上JR通勤しているので、利用するホームで到着メロディの「いい日旅立ち」をほぼ毎日耳にしている。

その日、電車の到着とともに このメロディが流れると、ホームにいた皆が動きを止めたように見えた。

無事天国に旅立たれたのだろうか?

気のせいだと思うが、その日の響き方はゆっくりと余韻を残した。

 

・・・私が「ザ・ベストテン」を見ていた頃、「アリス」は常連だった。

谷村さんが作った「チャンピオン」が百恵ちゃんの「いい日旅立ち」とトップ争いをしたりした。

ラジオも人気だったが、ラジオで披露されるキャラクターと作られた歌は全く異なっていた。流行や時代に左右されない名曲をたくさん生み出された。中でも、代表曲と言えば、やはり「昴」だと思う。中国でも大流行した。

 

「昴」は、井上靖原作の映画「天平の甍」の主題歌かPR用に作られた曲で、仏教布教のために来日した僧・鑑真とその一行のことが歌われている。

鑑真が来日を試みてから、5回の渡航に失敗し、6回目に目的を果たした時には失明していた、という話は有名である。

 

・・・「昴」は素晴らしい歌だと思うが 重すぎて、すこし苦手だった。

同じ時期にヒットした、堀内孝雄さんの「南回帰線」の方が好きだった。

(余談だが「昴」はニッカウヰスキー、「南回帰線」はサントリービールのCM曲だった)

 

私事であるが、10年ほど前に、私にある仕事が舞い込んだ。業績を認められて依頼された、やり甲斐のあるもので、とてもうれしかった。

自宅でPCに向かって準備をしていた時に、Kiina のアルバム「銀河」を聴いていて、最後に「昴」が流れた。

まっすぐな歌声・・・耳に入れながら、ふと涙が出てしまった。

「昴」の歌詞が身に沁みていく。

自分はがむしゃらに仕事をしてきたが、暗闇を進む中にも遠くに星が灯っていたのかもしれない、と思った。

PCのキーを叩く手を止めて、しばらく泣いたことを覚えている。

 

それまで、「昴」は、これから なにかを志す人が自分を奮い立たせながら聴くような気がしていたが、それだけではなく、長く続けてきたことにひとつの目途が立ち、達成感を覚えた時にやさしく響くことを知った。

 

ところで、2002年発売のアルバム「銀河」は正式には「銀河~星空の秋子~」というタイトルで、「星空の秋子」に因んで「星」や「星空」に関係する楽曲で構成されている。

 

「星空の秋子」

「ふるさと一番星」

「流れ星」

「北斗星」

「星空のロマンス」

「夢銀河」

「星影のワルツ」

「星のフラメンコ」

「見上げてごらん夜の星を」

「星屑の町」

「夜空の星」

そして最後が「昴」・・・いや一番最後はナレーションだった・・・

 

前半は演歌が連なるが、後半6曲はカバー曲で、ジャンルを問わなくなり、「昴」につながる・・・タイトル通りスケールの大きなアルバムである。

 

 今年は 谷村さん や もんたよしのり さんが逝去し、歌謡番組の随所で、追悼のために二人の作品が歌われると思うが、「昴」は・・・もし Kiina がいたら「昴」を歌うのは絶対 Kiinaだろうな、と思う。

 

 そして、大きな業績を残してきた Kiina にこそ、今、この「昴」を聴いて欲しいと思った。

 

・・・谷村さんのご冥福をお祈り申し上げます。