帆82年オフ①
ドナルド・スターリングは、ロサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナを本拠地とすることでロサンゼルス・メモリアル・コロシアム委員会と合意。
82年6月8日にNBAに正式に移転を申請しました。
スターリングは理由として、観客動員の悪さと、81~82シーズンに約300万ドルの損失を出したことを挙げています。
※ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム委員会
ロサンゼルスの市、群、カリフォルニア州の三者が共同で作った公的な運営組織。
ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムと、隣接するロサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナを管理していました。
三者と制度的な関りはもちろんありますが、単なる下部機関ではなく、独自の法人格や権限があり、自ら施設運営や契約などを行います。
アリーナを運営する上でプロのスポーツ・チームと契約を結んでいることは重要。
つまり、チームを誘致したい委員会とロサンゼルスに移転したいスターリングとの利害関係が一致したんですね。
(三者いずれかの意思が作用した可能性もありますが、それは確認できず)
【移転騒動①そもそも】
クリッパーズは79年にサンディエゴ・スポーツ・アリーナとその運営責任者であるピーター・グラハム(アリーナを管理する会社の社長)を訴えていました。
この訴訟でクリッパーズが問題にしたのは、アリーナが契約上の維持管理を満たしていないということでした。
・屋根からの雨漏り
・座席の老朽化
・ロッカールーム
・コートのフロアの不具合
・音響設備の不良
・全般的なメンテナンス不足
79年の時点ですべて問題だったのかはわかりませんが、アリーナの老朽化とそれに伴う維持管理の問題が山積していた様子(ちなみに、アリーナは66年11月にオープン)。
そして、これらに加えてケーブルテレビ収入をめぐる契約問題も争点となりました(同じ訴訟なのか、その後の訴訟手続きの中で加わったものなのかは不明)。
これは、クリッパーズとアリーナのリース契約に“テレビとラジオから得られる収入はクリッパーズが受け取る”という趣旨の条項があったことが発端。
ここで言う“テレビ”が、“ケーブルテレビも含むのか否か”という対立になったんですね。
この訴訟の第一審判決が出るのは84年。
スターリングがオーナーとして酷い運営を行ったというのはある程度有名かと思いますが、スターリングの就任以前からチームの環境は良くありませんでした。
【移転騒動②レイカーズ】
さて、時は戻って82年。
スターリングが移転申請をした直後、レイカーズのオーナーであるジェリー・バスがこの移転に反対するのでは?という話が出て来ます。
そして6月15日頃、バスの代理人(ボブ・スタイナー)が「バスは移転に反対した」と発言。
6月17日、コロシアム委員会はこれを受け、バスを相手取って5000万ドルの反トラスト訴訟を起こしました(8000万ドルという説もあり)。
ところが、その同じ日、バスは記者会見で態度を変えます。「競争は歓迎する」「ビジネスとして考えれば、友好的な競争にはならないのは明らかだ」
という趣旨を話したうえで、自分はスターリングの移転を拒否するつもりはないと明言しました。
レイカーズは元々ロサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナを本拠地としていましたが、60年代半ばに当時のオーナーであるジャック・ケント・クックと委員会が契約交渉を巡って対立。
クックはこれをきっかけにザ・フォーラムを建設し、レイカーズを移したんですね(ザ・フォーラムはロサンゼルス郡イングルウッド市にあります)。
スポーツ・アリーナは67年にレイカーズが去って以降、4大プロスポーツのチームと契約を結べない状況が続いていました。
【移転騒動③NBA】
コミッショナーのラリー・オブライエンは、6月22日のオーナー会議で移転問題を議題に載せると発表しますが、NBAは、その会議の前にコロシアム委員会を相手に1000万ドルの損害賠償を求める訴訟を提起。
“リーグの承認もなしにクリッパーズをロサンゼルスへ誘致しようとした”として訴えたんですね。
一方、それに対してコロシアム委員会も、6月24日、今度はNBAを相手に1億2000万ドルの反トラスト訴訟を起こします(クリッパーズも原告に加わります)。
コロシアム委員会の反トラスト訴訟の焦点は、NBAが定めている「75マイル・テリトリー・ルール」の合法性。
レイカーズが本拠地としているイングルウッドは、クリッパーズが移転した場合に本拠地として使用する予定のスポーツ・アリーナから10マイルほどの距離にあります。
バスが移転を拒否するとされたのも、このルールがあったのが理由かと思われます。
※75マイル・テリトリー・ルール
少なくとも60年代には存在したとされるルールですが、どの程度の拘束性があったのかなど、詳細は時期によって異なりそう。
80年代初頭のこの時期は、“あるチームのテリトリー内に他チームが移転を試みる場合、既存のチームは拒否権を発動できる。ただ、この規則の正当性を裁判所で争われた場合、その効力が認められるかは微妙”といった感じですかね。
オブライエンは今回の件について、次のようにコメント。
「我々は、ロサンゼルスが良い市場ではないなどとは、まったく言っていない」
「クリッパーズがロサンゼルスへ移転できないとも、まったく言っていない。我々は、ロサンゼルスにエクスパンション・チームを置く可能性がないとも、2つ目のチームを移転させる可能性がないとも言っていない。
我々が強く異議を唱えているのは、リーグの会議が開かれる僅か2週間前にに何かを仕掛けておいて、『もう契約書にサインする以外に選択肢はない』などと言っていることだ。
こういうことを仕掛けようとしている人たちは、相手を間違えている。それには私も含まれる。はっきり言っておくが、私はそんなことを受け入れるつもりはないしありませんし、オーナーたちも同じだ」
6月28日、連邦地裁はNBAの申し立てを認め、スターリングによる移転を一時的に阻止するTRO(temporary restraining order)を出しました。
これにより、先述のコロシアム委員会とクリッパーズが原告となる、NBAに対する反トラスト訴訟の進行はいったんストップ。
そして、NBAがコロシアム&クリッパーズに対して求める予備的差し止め命令(TROよりもより正式なもの。その後も差し止めを続けるか否かの判断)についての審理が7月6日に行われることになりました。
コロシアム委員会の弁護士は、メディアによる報道が過熱しているためにサンディエゴでは公正な裁判を受けられない可能性があると主張し、裁判をロサンゼルスに移すよう求めていたんですが、これも同じ日に審理されることになります。
ちなみに、地裁の判事は、仮に移送するならロサンゼルスではなく、サクラメントかフレズノになる可能性が高いとしています。