王84~85シーズン④

 

最後に余談をふたつ。

 

【カンザスシティ最後の試合】

 

この試合、アリーナにはこのシーズンのホーム戦では最多となる1万1371人のファンが集まりました(満席ではありません)。

 

試合開始前にはキングスの全選手が紹介され、ファンは選手ひとりひとりにスタンディングオベーション。

サクラメント移転後のキングスが、その冴えない戦績にもかかわらず熱狂的なファンを手に入れることは有名ですが、のちにトンプソンは「カンザスシティにも真のバスケットボールファンはいたよ」と語っています。

 

この日、ファンの怒りの矛先はアクセルソンへ。

アクセルソンはカンザスシティにキングスを招致した人物ですが、その後の働きは(チームを離れた時期もありましたが)ファンにとって不満の残るものだったようです。

 

「ファット・アックスを追い出せ!」というチャントが数分間続いたり、アリーナ内には『アクセルソンを殺せ』『サクラメントを爆破しろ』といった手作りのポスターが見えたり、何百人もの人々がアクセルソンの顔を模した不格好なマスクを被ったり…とだいぶ激しかったんですが、極めつけは4Q中盤の出来事。

 

2人のファンが、それらのポスターの近くで肥満体のダミー人形をアクセルソンに見立て、人形の首にロープを巻き付け、吊るしたんですね(!)

更にその二人は、下段の観客席に人形を降ろしながら、人形に偽札を浴びせます。

そして、その人形は他のファンの手によって殴られ蹴られ…バラバラに引き裂かれてしまいました。

 

トンプソン曰く、“キングスの移転にアクセルソンは大きく関わっていて、ファンもそれを知っていた。誰も彼を好きじゃなかったんだ” とのこと。

アクセルソンは身を守るためにキングスのベンチ近くには座らず、スウィートルームで観戦。
試合中に警備が必要だったという話もあります。

 

さて、試合の方は、キングスがフルメンバーだったのに対し、第1シードでプレイオフ進出が確定していたレイカーズは、カリーム・アブドゥル‐ジャバー、マジック・ジョンソン、ジェームス・ウォージーがお休みでした。

 

1Qはドリューが最初の7本のシュートを決めるなど好調で、キングスが43対28とリード。

前半終了時には66対63と迫られますが、4Qに再び勢いを増し、残り4分を切ったところでは115対106とリードを広げました。

 

しかし、ここから突然崩れてしまいます。

TOを繰り返し、オープンのシュートも決められず、ボブ・マッカドゥーを止められず(最後の数分間で18点中12点をマーク)、116対122で逆転負け。

なんと16対1というランを出されてしまいました。

 

ジョンソンはレイカーズについて、

彼らは相変わらずロールプレイヤーを起用して我々を負かしている

「あの年、我々がいかにひどかったかを物語っている」とのちに語っています。

 

【なぜカンザスシティで上手くいかなかったのか】

 

83年にルーケンビルらがオーナーとなってからも赤字経営は変わらず、昨シーズンは130万ドルの赤字を出し、このシーズンは180万ドルの損失が見込まれていました。

キングス買収時にはカンザスシティに残る意思を示していましたが、チームを買収して以来、やはり移転は検討していたようです。

「これほどの損失を出している状況では、これが論理的な選択だということは明らかだった」

 

集客がずっと冴えなかったのは過去の記事でも触れてきた通り。

78~79シーズンに一度だけ平均観客動員巣が1万人を超えましたが、それでもリーグ中位といったところ。

 

81~82シーズンは平均6000人台まで落ち込んだものの、ここ2シーズンは数字が上向いており、昨シーズン(83~84シーズン)は平均9031人となっていたんですが、このシーズンのシーズンチケットの販売枚数は3200枚ほどで、平均観客動員数は6410人。

これはリーグ最下位の数字でした。

 

アクセルソンは、「もちろん、彼らにはチケットを買わない権利がある。同様に、我々にも、彼らの関心の低さを、このプロバスケットボールチームがカンザスシティで損益分岐点に達することも、黒字化することもないという明白かつ非常に大きな兆候だと解釈する権利がある」とメディアに語っています。

 

ただ、このシーズンの集客の悪さに関しては、ジョンソン、トンプソン、ウッドソンは、開幕前に出たサクラメントでのアリーナ敷設の噂がカンザスシティのファンを動揺させた(集客に影響した)と指摘。

ジョンソンは、移転に向けてのチームの動きについて「彼(アクセルソン)はこっそりそれをやろうとしたんだ」

シーズン終盤になっても、チームの宣伝を一切しなかった。あの年は試合にほとんど現れなかった。まるで、移転の理由を固めるための言い訳を作ろうとしているようだった」

としています。

 

経営が上手くいかなかった/集客が伸びなかった原因として推察されるのは、チームの戦績、いい選手たちを手放してしまったこと、サッカー、アクセルソンといったところでしょうか。

 

82年からキングスのテレビとラジオのアナウンサーを務めていたケビン・ハーランは、市内でのキングスの評判を最も悪くしたのは、“カンザスシティ・コメッツほど多くの観客を集められなかったこと” としました。

 

ハーランは、コメッツのエンターテインメント性の高さをのちにこのように振り返っています。

「彼らはNBAが最終的に目指す姿そのものだった。明るい照明、大音量の音楽、そしてファンを巻き込む個性的な選手たち」

「コメッツはカンザスシティで非常に熱狂的な人気を誇っていたんだ」

 

コメッツの話題性はアクセルソンやコットン・フィッツシモンズ前HCらを苛立たせていたようです。

(この他、チケットの価格がキングスよりも手頃だったという話もあります)

 

そしてシーズン最終戦でファンから容赦なく叩かれたアクセルソンは、選手たちからの評判もよくありませんでした。

 

保守的な経営者として知られ、スター選手に高額のサラリーを支払うことよりもトレードに出すことを厭わない傾向があり、その手腕は、だいぶ前の記事で触れたようにオスカー・ロバートソンも酷評。

 

ジョンソンは、

「私の考えでは、彼は私が今までにいた中で最悪のGMだ」

まるで自分の金で運営しているかのようにチームを操るGMだった。しかも、態度が悪かった。私は彼に我慢できなかった」とばっさり。

また、82年まで、自分とチームメイトたちはオーナー・グループの誰とも話をしたことがなく、誰がオーナーなのかもわからないような状態だったとしています。

 

トンプソンは、皆がオーナーを知らなかった理由について、

「ずっと、チームはマフィアの所有物だと思っていた」

「ずっとそう感じていたんだ。オーナーたちは‐こんなことを言ったら問題になるかどうかわからないけれど‐弁護士だった。

本当のオーナーが誰であろうと、その代理人だと思っていた。周りには筋金入りのイタリア人みたいな奴らがいっぱいいたんだ。私が若くて愚かだっただけかもしれないが、オーナーに会ったことは一度もない。もしかしたら、ただのパラノイアだったのかもしれないけれども」と話しています。

 

アクセルソンは移転後もしばらくチームに残ります。