鹿98年オフ
このオフのバックスはドラフト当日にやらかしてしまうんですが、それが大失敗とわかるのは少し先のお話。
チーム作りとしては前進します。
【ドラフト】
①1巡目第9位でダーク・ノヴィツキー、第19位でパット・ギャリティ、2巡目第39位でレイファー・アルストンを指名。
②ノヴィツキー&ギャリティをマブスに出して、6位指名のロバート・トレイラーを獲得。
トレイラーはミシガン大出身のC/F。
6フィート8インチ・284ポンドという体格が特徴で(ドラフト時は6フィート7インチ・288ポンドの表記)、愛称は ”トラクター” です。
以前は300ポンドを超えていたんですが、トライアウトの際にはシェイプされており(280ポンドくらいだったとか)、周囲に好印象を残しました。
元々は1巡目中位くらいの予想だったようなので、かなりよかったんですかね。
フィジカル面は強く、体の大きさを考慮するとかなり動ける選手。
ハンドリングは悪くなく、キャッチングもしっかりしており、パスやドリブルもまずまずです。
懸念はそれでもウェイトの問題と、ポジション。
カレッジ時代はCでしたがNBA基準では小柄。
PFとしては速くなく、シュートエリアも狭いので出来ることは限られます。
因みに、「エド・マーティンという後援者が違法賭博で得たお金をミシガン大の選手たちに渡しており、それがNCAAの規定違反となって処分を喰らう」というスキャンダルで、当事者となったひとり(クリッパーズ編97年オフ参照)。
トレイラーもまたマーティンからお金を受け取っており、更にマーティンの勧めでローンも組んでいました。
スキャンダル発覚のきっかけとなった交通事故では腕を骨折しており、同大在学中の記録はもちろん抹消…悪いことはできません。
アルストンは、ニューヨークのプレイグラウンドで名を馳せたうちのひとり。6フィート2インチのPGです。
ストリートでは12歳のときには既にその名を知られており、当初は「Shorty」と呼ばれていましたが、程なくして「Skip To My Lou」という有名なニックネームを付けられました。
アルストンがスキップしながらドリブルするのを観て、ラッカー・パークのアナウンサーがメガフォン越しにそう叫んだんだとか。
同じ時代にニューヨークのプレイグラウンドにいたステファン・マーベリー(歳が同じ)は「レイファー・アルストンと対戦するときは恥をかくことになる。そうなるのはわかっているはずなんだ」と、プロ入り後に振り返っています。
ロン・ナクレリオ(アルストンの地元では有名なコーチ)がHCを務める地元の高校へ進むんですが、このナクレリオが、アルストンがプレイする動画をAND1に送ったことで、より広い範囲で注目を得ることに。
AND1は、この動画を編集して流通させたんですね(日本語版wikiだと動画を送ったのは家族になっており、正確なところは不明)。
因みに、アルストンは10歳のとき、自らナクレリオに接触して「レイファー・アルストンに注目して欲しい」とアプローチしていたそう。
コミュニティ・カレッジ2つを経て、フレズノ州立大へ(AND1のテープが出回ったのはこの頃)。同大ではジェリー・ターカニアンの指導を受けました。
フレズノ州立大在籍時に『SLAM』誌の表紙を飾っており、そのときは「世界最高のPG(あなたが聞いたこともない)」という謳い文句がついています。
ストリート仕込みのスキルが武器で、クロスオーバーや魅せるアシストなどテクニックは豊富。
コートービジョンも広く、カレッジではPGとして一定の成績を残しています。
ただ、”(カレッジ時代)チームにフィットしていなかった” という評価もあり、プレイスタイルがNBAに適応できるかが懸案点。
”このドラフトで最高のPGになる可能性も、大失敗になる可能性もある” とする識者もいました。
このオフはバックスと契約を結べず、プロ1年目はCBAで過ごします。
【HC交代へ】
クリス・フォードHCが、3年契約を1年残して解任となりました。
ボブ・ウェインアワーは「我々はバスケットの試合に勝つことが仕事だ。それなりに成功はしたが、まだ充分ではない」とコメント。
フォードの反応については、「がっかりはしていたが理解もしていた」とのことです。
ディック・ヴァーセイスもここで解任され、マイク・ウッドソン&ジム・トッドは新HC次第というかたちに。
因みにロックアウト中だったため、選手たちはこの人事をフロントから聞かされることはありませんでした。
【3日後】
新HCはジョージ・カールに決定。
ここ6シーズン半、ソニックスのHCを務めており、シーズン途中に就任した91~92シーズンを含め、勝率は毎シーズン64%を超えます。
プレイオフで結果を残せないという評価もありますが、実績は確か。
フォードを解任したとき、ハーブ・コールは「うちが持っている才能を最大限に活かすには、次のレベルに確実に到達できるようなコーチを見つけることが最善だと考えている」としており、言葉通りの人選かと思います。
5月にソニックスを解任された後、ナゲッツ、クリッパーズの新HC候補としても名前が挙がっていましたが、この2チームよりはバックスの方が魅力的ですかね。
コールは、いいHCを雇うためにはお金のことは気にしないともコメントしており、4年契約となりました。
ACはウッドソンだけ残り、テリー・ストッツ、マイク・シーボルト、マイク・マクネイヴ、ロン・アダムスが加入。
ストッツ、シーボルト、マクネイヴはソニックス・コネクションです。
ストッツは94~95シーズンからACを、マクネイヴはビデオ・コーディネーター兼スカウトをそれぞれ務めていました。
シーボルトは80年代前半にレイカーズとブルズで6シーズンACを務め、その後はWBLとCBAへ。
昨シーズンひさしぶりにNBA復帰し、ソニックスでスカウトとして働いています。
アダムスは92~96年までスパーズとシクサーズでACを務めていましたが、ここ2シーズンはブレイザーズのスカウトでした。
【ベンチを補強】
①ドニー・マーシャル、デル・カリー、アドニス・ジョーダンと契約。
②アンドリュー・ラングをブルズに出して、01年のドラフト2巡目指名権を獲得。
③ヴィニー・デルネグロと契約。
マーシャルは6フィート7インチのSF。
95年のドラフト2巡目でキャブス入りして2シーズン過ごしましたが、ガーベッジタイム要員の域を出られず、解雇。
昨シーズンはNBAに残れませんでした。
カリーはキャリア12年/34歳のベテランSG。
ここ10シーズンはホーネッツ一筋で過ごしており、通算で平均14点・3P成功率40%と、リーグ有数の6マンでありシューターでした。
このオフ、ホーネッツにはベテランを引き留める意思がなく、逆にバックスはリッキー・ピアースに代わるバックアップSGが欲しかったのかなと。1年契約です。
ジョーダンはこれが93~94シーズン以来のNBAとなるPG。
ここ4シーズンはCBAや海外リーグを転々としており、ちょっと珍しいところでは香港でもプレイしています。
ラングはここ2年怪我があり、カールのスタイルにも合わなさそうで、チームはサラリーキャップの空きを作りたくて(契約はあと1年)…放出は既定路線ですかね。
デルネグロは32歳のコンボガード。
ここ6シーズンはスパーズで、主にスターティングSGを務めていました。
カリーとはタイプが違いますがこの人もシュートが上手です。