2019年9月8日、日曜日に、登録販売者試験を東京で受けてきた。

前日の土曜日の午前まで診療をしてから、急いで金浦空港に向かったのだが、何と台風による強風のため欠航。たいへんだ!

試験勉強にここ数ヶ月を費やし、各種教材、ネット講義などを駆使して頑張ってきたことを思うと、残念でならない。

あきらめて帰宅する気にもなれず、混雑を極めるカウンターで尋ねてみたところ、最終便に座席が有るという。スタッフの、「今日いっぱいは無理そうですよ(ほぼ前便欠航の意味)。」とのコメントを聞き流し、粘ってみる事にした。

幸なことに台風は速度を早めて北朝鮮方向に北上し、風は少しずつ凪いでくるようだった。

 

日曜日の朝9時を過ぎると、電車の到着ともに人々が群れとなって試験場に吸い込まれていった。受験者の性別、年齢、背景はばらばらだった。だいたいは医療関係の仕事に従事していたり、関心を持つ人たちだろうと考えた。自分もいつか日本で暮すことになったときに、少なくとも漢方薬局等でアドバイザーのような仕事に合法的なかたちで就けるようにと、準備を進めてきた受験だった。

 

私が試験を受けた教室の中には、かなりの年輩と見受けられる受験者も目についた。この方たちの人生にはどんな事情やストーリーがあるのだろう? 顔の中央に高い鼻が際立っている隣席の女性は、ずっと目を閉じて自身の脈を診ている。きっと漢方に造詣が深いか、関心が高い方なんだろうと想像できた。

試験監督官は、1秒のずれもなく決められた時間に沿って、決められた言葉を機械のように発した。これを見て私は日本の駅員のお決まりの所作、手合図を連想した。この場所が、システムがスイスの精密時計のように正確に作動する日本なのだという感慨があらためて呼び起こされた。

 

通常は国家試験というものは、正常に社会を維持させるために一定数以上の合格者を輩出するよう実施されることも多いのだが、この登録販売者試験に限っては、受験資格条件が無いからか、資格保有者を積極的に選分けて、簡単には通過させないようにする意図が見えかくれしている。適当に勉強したとこで、即不合格になるよう問題を作成した痕跡があちこちに残っている。合格率を調節するための出題者の苦悩が伝わってくる。逆にいうと、知識を十分に備えた者ならば決して落ちはしない構造にもなっているというのが、試験に対する私の総合意見である。

 

歳を取ってから試験を受けるのはたいへんではあったけれど、大きな達成感を得られた。漢方の専門医として、西洋薬の成分や作用、特徴に関して体系的な知識を持たねばという気持がもともとあって、一般用医薬品という限定付きであっても勉強を し直すことができた点で、試験が願ってもない契機になったと思う。

 

試験を終えてから新橋に向かうゆりかもめから見下ろすお台場の景色はことのほか美しく感じられた。