今日は韓国での東洋医学発展史について大きな流れだけでもご紹介できればと思い、次のようにまとめて見ました。
少し読み疲れる内容かも知れませんが、頑張って読んでみてください。
1> 黄帝内経 (中国)
医学の歴史は、悠久なる中国の歴史と共に歩んできた。
中国において医学を集大成した最初の書物が、『黄帝内経』だ。
この医書は漢方医学の古典であり、医学徒にとっては、クリスチャンにとっての聖書に匹敵する意味を持つ。
内容は「自然学に基礎を置く生理論」で、病理に関する記述は具体的でなく、根源を探求する姿勢が貫かれている。
「素問」に続く「靈樞」部門にて、鍼灸治療については比較的詳細まで記載されている。
その反面、疾病に関しては、「表症(表面に現れる症状)はさほど意味がなく、根本原因が重要」として、治療法は天地運気、摂生、修養などの方法を採った。
また薬物の取り扱いよりは、食事を通して体を正す方法を提示した。
五運六気・陰陽五行などで食べ物の気味を調整する方法だ。
2>傷寒論 (中国)
黄帝内経時代の治療の弱点は、危機管理能力の欠如である。
張仲景は、『傷寒論』にて、作用が強く激しい薬剤を利用する、積極的な薬物学を誕生させた。
現代の西洋医療の治療システムと同類である。
症状を分類し、それに対応する薬物を複合的に構成して、いわゆる'処方箋'を使った。
根本原理よりも、表に現れる症状に注目して解釈、処方箋を出す方法だ。
根本よりも表層を見るので、傷寒論処方は大概、長期服用ができない。
なにか症状が起こる度に、必要に応じた処方をその都度用いるのだ。
傷寒論に関する研究が盛んな日本の和漢で、"洋診漢治"の矛盾を内包して傷寒方を長期投薬するケースがあるが、再考が必要と考える。
3>金元四大家 (中国)
張仲景が急病治療策として、'古方'をつくった。
古方による症状改善効果が良好だということで、緩病にまで古方を使用したところ、副作用が表れた。
"膝痛で鎮痛剤を用いたら、胃痛が起こった"という類の副作用だ。
そこで、表面の症状だけを追うのではなく、根本原因など緒条件を満足させる薬物学が登場した。
これを「後世方」という。
時代は金・元時代で、四名の傑出した医家=金元四大家が活躍した。
【劉完素】
生命の根本的源泉は、空気・温度・栄養の三つとする。
空気─着慣れた服は、着ていることを忘れさせるように、空気は、普段は認識しない、だが重要な要素だ。
張仲景は、空気中の気運、つまり六気のうちで、苦痛と痛みを誘発する"寒"を第一に研究したのに対し、劉完素は六気すべての関係性を研究した。
これにより、身体の外部と内部の関連性をすべて把握することになった。
【李東垣】
外部:六気の研究がまとまったところで、人体内部の生命力に関心を注いだのが李東垣である。
李東垣は、地気と栄養の源泉である胃腸を研究対象とした。
後天の気である胃腸の気を守ることが治療の原点になるべきだとして、「脾胃論」が誕生した。
【朱丹渓】
人体内部の温度を研究した。
人体の温度を上昇させるのに一番容易な場所として、下腹部に注目した。
先天の気=腎臓の精血を補うことが何よりも重要とする補陰論を主張した。
この理論により、人体内部の理論がひとまず完成されたとされる。
(その後、明代の張景岳の補陽論にて、人体内部理論は絶頂を迎えることになる)
四大家の残りの一人は張子和であり、汗・吐・下の三方で病邪を退ける治療法を強調した。
歴史的な登場順としては劉完素と李東垣のあいだに位置づけられる。
金元四大家も、ときとして古方の治療法を用いた。
傷寒温病など、表症にて、症状を消滅させることが必要なときだ。
しかしもともと脾胃論、補陰論は裏症理論に属し、根本原因を求める原理論的接近が重要とする。
裏症あるいは慢性病治療では、病の根本原因を付きとめ、それに合う薬物投与をして、じっくりと原因を除去していく方法で治療を行った。
4>体質医学 (韓国)
医学の発展の歴史として、
①環境と人体の関係調和を重視
②人体内部の調和を重視
と発展してきた。
その次の段階として、
③病因と病症の関連が、人により異なることに注目。
同じ病因があっても、反応の仕方に個人差があるのは、先天的な条件の違いがあるためと考えた。
つまり慢性病とは、病因の持続的な刺激に対し、先天的に最も弱味を持つ部分からまず崩れ出し、全体的な調和が破棄されるという考え方だ。
病因よりも、個人の生まれながらに脆弱な部分が病に深く関連するとする。
李氏朝鮮の韓国の医学者・李濟馬は、『東医寿世保元』で、先天の性情(性格的傾向性)が人体に影響し、人体の脆弱部分が表れるとする「体質医学」を論じた。
1~4>を総合し、医学の発展段階を整理し、現代医学における意味について、意見を示すことにします。
外部環境の問題に関心を注ぐ張仲景・劉完素時代
現代において、栄養と衛生観念が発達し、外部条件への対策は良好だ。
したがって病因を外部環境中心に求める考え方は、重要度が減っている。
⇓
内部環境問題と人体の機能の均衡・調和に関心を注いだ、李東垣・朱丹渓時代
西洋医学が、病因を体外に求める既存の方法から、ここへ来て「自律神経の安定」に方向性を転換している。漢方ではそのはるか以前から、人体内の調和に目を向けてきた。
⇓
均衡と調和を破る原因について、個個人の先天的特徴に答えを見つける体質医学時代
現代における、心因性(ストレス性)疾患や、疲労性疾患など、慢性化した症状に現代韓方治療がアプローチするときに、しばしば選択する方法。
実際の臨床場面での、私個人の手法は、大まかに次のとおりです。
まず病の緩急を区別し、緩病の場合はさらに、虚実を分けます。その結果、
①急病と判断→虚実の別なく、張仲景の傷寒方を多く利用します。
②緩病と判断→Ⓐ実症;痰飲・瘀血・食積など東医宝鑑の理論と治方で接近します。
(最近の表現でいうなら、解毒の概念と通じる方法です。)
Ⓑ虚症;患者の体質を私なりの方法で分類し、体質医学の接近方で処方を構成します。
椿漢方はソウルにある韓方クリニックです。
漢方薬と鍼治療で健康と美容のお手伝いをさせていただいています。