傍からは分からない夫婦事情 | 韓国で医師やってます

韓国で医師やってます

日本生まれ、日本育ちの私が、韓国で医学部に入学&卒業!現在は韓国の大学病院で産婦人科助教授をしています^^
医大卒業後、非医療人の韓国人夫と結婚し、今では2児(息子•娘)の母です♡
ブログでは韓国での大学•病院生活、結婚•育児生活、趣味のアニメについて綴っています^^

注意チョット暗めの内容ですガーン

 

4回の流産を経験した自己免疫疾患(SLE+抗リン脂質抗体症候群)を持った20代後半の患者さん。

自己免疫疾患があると習慣流産を起こしやすく

習慣流産の原因を病院で調べた結果

自己免疫疾患を診断される事もよくあります。

 

その患者さんは4回目の稽留流産の時

「手術ではなく薬物で排出したいです。」と初めて私の外来に来院されました。

薬物排出から数ヶ月後すぐまた妊娠。

今回こそは流産しない様

リューマチ内科の外来を一緒に通いながら

妊娠初期から薬を使い

無事ターニングポイントの妊娠20週を迎え

一緒に大喜びしながらハイファイブをしました。

 

がそれから1週間も経たず、原因不明の激しい腹痛を訴え、救急に来院。

1週間前には診られなかった蛋白尿に高血圧

肝臓数値が500を超え、次の日には1000近くに。

「赤ちゃんを諦めるしかあなたが助かる方法が見つかりません…」

と涙ながらに伝えました。

原因はHELLP症候群という

妊娠を終わらせなければお母さんの命に関わる

妊娠関連の怖い疾患なんですが

それが20週というあり得ない位早い週数に訪れたのは

きっと自己免疫疾患が関連していて

今回その恐ろしさを身に染みて感じました。

 

お腹の中ではまだ生きているけど

外に出たら生きる事が出来ない赤ちゃんを誘導分娩する事に。

「手術するなり取り出すなりして早くこの痛みをどうにかして下さい!!」

と激痛で理性を失い泣き叫んでいたお母さんも

出産後、理性を取り戻し

「先生、저 이제 살만해졌나봐요...

痛みが我慢出来る位になったら

悲しみが押し寄せて涙が止まりません。

辛いです。」

と号泣する姿に、私も辛くて言葉が出ませんでした。

退院する日に

「私が妊娠する事はもう二度とないと思います。

今までお世話になりました。本当にありがとうございます。

これから改めて夫婦二人で仲良くやっていきます。」

とおっしゃり、心臓に矢が刺さる気持ちを経験しました。

 

自分が何かを間違えたから起こった出来事ではないと分かっていますが

せめて後もう1ヶ月もってくれてたら

赤ちゃんは生きられたかな…?と考えてしまったり

希望が見えた矢先にどん底に突き落としてしまった様な気がして

当分はトラウマで自己免疫疾患を抱えた妊婦さんは診れないな…と思いました。

 

話は全く変わりますが

この患者さんについて書いた背景には

自分の心の整理をすると共に

傍から見ただけでは分からない夫婦だけの事情や

悲しい過去があったりするんだという事を

伝えたかったという理由もあります。

死産を経験した夫婦

何らかの疾患で妊娠する事が難しい夫婦

子宮を摘出して妊娠が出来ない夫婦 など

案外身近に大変な過去を乗り越えて

今を生きている夫婦がいます。

ナイーブな話を気軽に話せる人もいれば

そうでない人もいます。

最近は結構タブーな言葉になってはきていますが

何気ない

「子供は絶対居た方がいいよー!」

「何で子供産まないの?」

という言葉は出来れば心の中にしまっておいて欲しいなと思います。

全く反対のケースも昔の投稿に書きましたが

結婚したけどずっとバージンで

体外授精で子供を授かり

帝王切開して親になった夫婦もいらっしゃいました。

本当に傍から見ただけでは他人の夫婦・家族事情は分からないものです。

 

今回の患者さん... 心も体も時間と共にゆっくり癒え

いつかまた彼女に笑顔が戻ります様にお願い