今日の将棋の局後のインタビューからの抜粋である。山崎が率直な所見を披露している。流石に対局者、見えて感じたことが余すことなく伝わる。

 

――本局に敗れて連敗になってしまいました。
山崎 模様を取ってはいるのですが、まとめきれないのは自分の実力でもあるし、しっかりとがめられています。藤井棋聖の強さを感じるところでもありますね。序盤、中盤の精度をもっと上げていかないと、チャンスのある局面をなかなか作り出せないなと感じています。

 

 完膚なきまでに押し潰されたが、山崎が弱いわけではない。彼の良さを全く発揮させない藤井の能力が図抜けているだけである。藤井に比べれば羽生はまだしも勝負をさせてくれた。

 

 戦型は後手山崎の向飛車。居飛車党の人の中にはこの戦型をやや苦にする人もいるようだが、藤井は早めに▲3七桂と跳ねだして後手の2筋攻撃を封じる。以下、穏便に美濃から銀冠への移行を見せたところで山崎が早速動いた。

 

 桂交換に応じられると4六に争点ができるし、応じられなくて3七で精算になっても先手の銀が動き始める。普通であれば飛車を引いておくとか金を5二か6二に動かして下段飛車になった時の利きを増やしておくとか防御本位の発想になるはずだ。普通に指していても勝ち目がないと読んだかと推察したのだが、この展開についても局後にこう発言している。 

 

 

『後手番なので序盤戦はじっとしておく想定だったのですが、昔は桂を跳ねたような気がして。思い出して桂を跳ねたのですが、関連性が……。玉を守る手を指しておけばよかったのですが、組み合わせが予定と違って。千日手狙いになってしまうので行きたくなってしまったのですが、玉が薄いまま攻めてしまったので、藤井棋聖にとがめられたかなと。攻めていく気なら△6二金や△8四歩などがもっと価値の高い手になるので、いい勝負になったかもしれませんが。』

 

 強敵相手にストレートに局面に向かいきれない心情が伝わる。なんか泣けるなぁ。

 

 2図の桂打ちもかなり不自然で角の利きを遮っているし、6五に利かせたいなら△7三桂と跳ねればいいはずだし、そもそも6一金を二段目に動かして飛車の可動域を広げるのが常道だろう?と突っ込みたいのだが、この段階で後手は主張点を失っているので、大同小異なのかもしれない。

 

 

 

 そして本局の白眉が3図の桂打ち。控室は▲6五桂を想定していたということで、△同桂▲同金△6四歩の局面が単純ではないと思うが(▲3七飛△3六銀成▲6四金△同銀▲6七飛△6三歩▲4五歩という進行を私は読んだのだが・・・先手の模様がよさそうだが、後手も金銀6枚を擁し、粘りようがあるかもしれな)、藤井は歩頭の桂打ち。
 

 

 うーん。。。。凄すぎる。△同歩▲同金に△5四歩だと先手の飛車が逃げ出すので、苦汁の△3八銀不成と飛車を外すも銀はド僻地に左遷。対してド急所の▲6四歩が刺さり、△5二銀右▲5四歩ともう一枚、ヘビー級のパンチが入っては勝負は決した。△5二銀右では△5四銀右の方が気骨はあったのだろうが、最早勝負を争える状況ではない。

 

 序盤を手堅く運び、中盤は手の損のない円滑な指し回し。開戦後は自玉の堅さを利して、駒損など関係ないと次々と駒をぶつけての前進制圧。まさに天下人の指しっぷりであった。

 

 4月に比べると相当に仕上がりがよく、木曜日の伊藤戦はどうだろうか。ご本人は相当に雲が晴れた思いではないか? 今年度最大の一戦の注目度は大で、自負のある将棋ファンは休暇、在宅勤務が所与である。。。と私は言い切ります。